禍話　第一夜（１）何かを潰した

なんかほら、心霊写真ブームとかが昔あったんですよ。
みんなの頃はどうかな、みんなの頃は無いと思いますけど…

うちの頃は、なんか絶対学級文庫に心霊写真の本が入ってて、みんなが見せに来るんです。
見たくない奴とかいるのに、わざわざ鉛筆とかで丸とかされて。
「ここに霊が映ってる」とか言って。

でね、一回だけうちの学校で騒ぎがありましてね、昔私のいた小学校で。

それを見せるわけですよ、本を。「ここだここだ」っつって。
あるいは、著者が発見していない霊を見つけるっていうか(笑)
顔っぽかったら「ここにも写ってる！」なんつって。
そしたら怖がる奴は異常に怖がるんですよ、男の子でも。「うわー！怖いー！」「やめてー！」なんつって。

で、ある時に、
なんか、それこそそういう話で【背後の草むらの中に複数の霊体が…】みたいな。
で、言うに事欠いて、その著者も【霊感がある人にはもっと顔が見える】なんて書いてるんですよ。

そしたらなんか「ここに！ほらここにいるんだ！」なんつって、ちょっとこう…いじめっ子じゃないですけどプチいじめっ子みたいな奴が、
ちょっと気弱な奴に「オラオラ見ろよ！」ってやってたら。

あんまり怖かったんでしょうね。
そいつが
「やめろよ！」
って、そのいじめられっ子、普段ずっとされるがままなのに、ティッシュだかハンカチだかを、そのやばそうな部分に乗せたんですよ。見たくないから。

「なんだよお前、見ろよー！」って言ったら、

ブチュッ！！

って、なんか音がして。
え？！って思ったら、なんか虫が潰れた感触がしたらしいんですけど…
パッと見たら何もないんですって。

それで、プチいじめっ子はそういう遊びをやめたそうなんですよ。
で、そいつはいまだに言うんですよ。

「感触があった…」

って。

その心霊写真の自分が捏造した『ヤバい部分』を布越しに触ったら、
『ブチュッ』て、なんか蠅よりも大きい虫を潰したような感触がして、
いまだに残ってる。

って言うんですよ…。

だから皆さんも、そういうのやめた方がいいな。
捏造をするのはやめた方がいいな。
捏造するとろくなことがない。