相馬絵梨子

作詞家です。有限会社匠に所属しています。 works☞日テレドラマ「イタイケに恋して…

相馬絵梨子

作詞家です。有限会社匠に所属しています。 works☞日テレドラマ「イタイケに恋して」OPタイトルバック曲/TVアニメ「ホリミヤ」キャラクターソング/K/B.O.L.T/廣瀬友祐/猫みたいなクッションMeowEverテーマソング and more...✰*

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落丁した私

私の蝶々結びはいつもすぐにほどける それでも何度も同じように結んで 同じような未来を縫い付けていた お茶の時間からこぼれ落ちた 見えない砂糖の粉さえ拾おうとするから 星占いにも閉め出されて 12年に1度の幸運もカップに溶けていく そんな落丁した私も こうしてここに座っている 気が遠くなる広さの宇宙に 座標をもらって生きている

    • ブルーのブラウス

      明日の私に 少しだけ優しく たとえばシワのない ブルーのブラウス 満腹を越えた 気遣いはオーバー すぐさま見抜かれる 愛のトレース ズレていく夕暮れ ズレていく街灯 ズレていく喧騒 ズレていく足取り 間違えていたら どうか教えて ひたすら繰り返す 日々はクローズ

      • ただ擬態してるだけ

        ほどほどで切り上げられる夜 誇らしいほどに一途な心 カサカサな肌を埋め尽くすクリーム 今日はもうおしまい、また明日 本当はこのまま扉を開けて 歩きにくいサンダルで夜に溶けたい 栄養バランスも明日のことも 月の砂みたいに砕きたい ただ擬態してるだけ 毎日をリズムよく乗り越えるサーファー ただ擬態してるだけ  迷惑を何よりも嫌う神様 ただ擬態してるだけ 均等に気分を切り分けられるパティシエ ただ擬態してるだけ ただ擬態してるだけ

        • スキップ

          メトロの車輪が滑る音 イントロに乱入してスキップ 気温に従いしなやかに 網棚にカーディガン 忘れないように 積ん読は分かれ道を孕んでるね 楽しくないなんて言わないで オンオフは意外と自由じゃないね 伸ばし切れなかった羽根を撫でる 人の波に隠れて 人の波に隠れて 星になったあとの予定決めよう 大通りは隠れ蓑だよ 誰も見てないスキップ

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        落丁した私

          朝には呼吸を切り替えて

          音楽を聞いてお酒を飲む 平凡な個性を抱きしめる 月が引っ張る綱の上 危なっかしく明日(あす)へ渡る すごくない自分 ありふれた自分 1秒おきにむせかえる どこにもないはずなのに どこを切り取っても他愛ない とめどもない日々なのに ここには私しか立てない 朝には呼吸を切り替えて 朝には呼吸を切り替えて 混ざらないようにするんだ

          朝には呼吸を切り替えて

          往復書簡

          降り注ぐ厄災のひとつを捕まえました 私の傍でヒタヒタと培養されています 自分のことは彗星だと思っているようです ────── たしかに昨夜、東の空に 見慣れない光が放物線を描いていましたね あなたの体は大丈夫ですか ────── 誰かのところに唐突に降るよりも この方が手懐けられますから 少し掌が傷むくらいですよ ────── どうぞお気をつけて 厄災が鳴いたら教えてください 今度は私も早めに空を見ますから

          はじまり

          息だけをして歩く道 特に愛もなく見送る街 一生見れない私の瞳 夕方が雲に隠れてる 胸の壁の端を掻く 悪気のない言葉たち 浅い眠りをしつこく区切る 選択制の幸せの形 息を早送りして走る道 特に変わりなく終わる一日 一生消えない私の命 今日をはじまりと勝手に決める

          擦り切れた言葉

          繰り返す 繰り返す ありふれた言葉を 繰り返す ありがとう も 愛してる も 口をつぐんだら終わりだ ここに置く ここで送る 擦り切れた言葉を 再生する 誰もバカなんかじゃないよ 誰も無知なんかじゃないよ 目の前に映る感情を 抱えきれないだけなんだ

          擦り切れた言葉

          100円のカーラーでまとまる前髪 安く解決する悩み 固くなった結び目を諦め 簡単にほどくあの子を羨む 風は吹き方を忘れたら 揺蕩うのかな 消えてしまうかな お金で買えないものは 結局わたしの中にあるのかな ハレの日から遠く離れた なんでもない日常の隅から 君の毎日を彩りたいと思ってる 笑われてもいいよ

          誰に恥ずかしい?

          輪に入れずに でも憎まれもせずに 少しだけ疎まれつつも 誰のことも特に嫌えずに そんな自分が恥ずかしかった 気がつくのもいつも遅く 靴紐を結んでいる間に みんな行ってしまった でも、誰に? 誰に恥ずかしい? もうみんな行ってしまったのなら あの苦々しさも 砂と一緒に舞い上がりきったはずだ 私は許されたくて いつも詩を書いている だから悲しみは紛らわさず 恐ろしさも笑い飛ばさずに 心を裸にして生きていく 言葉の端々に 居場所を灯しながら

          誰に恥ずかしい?

          存在

          もう戻ることはできない 月が何度も満ち欠けて 紅葉が何度も色を変えて 辿り着いた 過去とは似て非なる場所 まだいなかった頃 何かを失くす前 コップの中の水 点々と跡を残して 螺旋階段を駆け上がる ここから見る景色を 知らなかった頃の私に 手を振った

          走って

          言葉を紡ぎ出す時の 無数の目 目 それは誰でもない 私の意地悪な目 走って  走って 森を抜けた時に 目を閉じて見える言葉がある それを拾い集める あと何回も繰り返す まだ何回も繰り返す いくつもの森を駆ける 意地悪な私を許せるまで

          小指

          小指の第一関節を曲げる度 あなたを思い出すと自分に約束した あの日に旗を立てる ずっと愛してる たとえ嫌いになっても 明日も来年も 手のひらを抱きしめて呟く

          サク・ラ・ラン

          桜蘭 サク・ラ・ラン ふいに手折る共感 溢れるマイファースト人生 誰にもわからなかったとしても 私がいる 着飾らない空から 透明の手が触れる その瞬間まで創り続ける

          サク・ラ・ラン

          フィン

          浅瀬に揺蕩う不幸を掻き分けて 深海までフィンをつけて泳ぐ そこには誰にも触られないよう 貝の中に固く閉じこもった ピカピカの幸福があった

          鏡よ

          月日が空に散る 影が溶けるように重なって ただそれだけ 自動的に大人になるはずもなく ただの1日も 思うようには運べなかった 夜は朝という波に押し流されて 今朝もまた寝ていたところから始まる 生まれ直して 生まれ直して それでも鏡でしか見えない 自分の顔が張り付いている