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個人的Pepper アトリエ秋葉原 with SoftBankの思い出

数え切れない思い出があるアトリエ秋葉原が2020年7月31日に閉鎖した。

通称、アトリエ秋葉原。「Pepper アトリエ秋葉原 with SoftBank」はSoftBankが発表したロボット「Pepper」をいち早く、無料で開発体験ができるスペースとして2014年にオープンした。

アトリエ秋葉原に関する思い出は無数にあるが、ここでは自分の中の変化のみ書こうと思う。

「前田くんロボットの仕事、興味ない?」

 学生時代から知り合いだった横田さんに声をかけられたのは、ベンチャー企業で3年目、26歳の春だった。その時の自分は、自分が会社にとって決定的に価値のある人物だと思えず、どこか空虚な思いを抱えていた。そんなときに声をかけられたロボットの仕事は全く馴染みはなく、面白さより、理解出来なさが勝っていたと思う。

初めて見学したイベントは勉強会だったが、理解ができないので面白くはなかった。ただ、話している人も、参加者もギャラは発生していない。「これで仕事になるのか」と驚いた。それまで、ひたすら断られながら何百件もテレアポして、決済権のある社長と話す場にこぎつけて、売ることが成果として評価されない会社にいたので、無償で教え合う空間が、なぜ成立しているのかわからなかった。

それでも転職を決めたのは、横田さんの「テクノロジーの進歩に貢献している実感が得られる。社会的に絶対にいいことをしている感覚があって楽しいよ」という言葉に不思議と確信を得られたからだ。

働き始めてから「前田さんって一番普通ですね」「前田さんが普通で話しやすい」働き始めて会社外から評価をもらうことがあった。会社には変わった人しかいないので、そりゃそうだろう、と思った。同時に、普通であることにも価値があるのかもしれない。と考えた。

仕事になれるのには時間がかかった、目まぐるしく変わる環境についていくのでやっとだった。お客さんと話すときも、自分の知っていることだけ一方的に話していた。初めてロボットに触れる人には十分だったかもしれないが、お客さんと心を通わすことはできなかった。

自分の言葉で話して、自分の責任で企画をするには1年以上の時間がかかった。自分で手を動かして、エラーが起きて、エラーを解消したものだけをお客さんに自信を持って話すことができた。1年も経つと、お客さんの疑問に対して以前こんな事がありましたよ、と伝えるだけでも満足してくれることがわかった。


とにかく場数を踏むことだけが自信になった。

自身を持つと、お客さんから頼りにされる、雑談をする。それが楽しかった。


お客さんの「こんなことをしたいんだよね」という話を聞くのが好きだった。それならこういうやり方があるんじゃないか、あーだこーだ未来について話すのが楽しかった。

一日中話していたら仕事が終わったり、営業時間が終わっても話し続ける日が増えてきた。

数値上ではお客さんのアンケートの評価は不思議といつも高かった。「数百万するロボットを無料で使えるのだからそれは当然だろう」と思っていた。アトリエはよく運営している、とクライアントや外部から評価されることが増えた。なぜだかわからなかった。横田さんからは「前田さんの仕事は誰にでもできることではない」と言われた。あまりピンとこなかった。ある程度ちゃんとした人なら誰でもできるだろう、と思っていた。


ところが、任天堂の岩田さんの本を読んで、もしかしてそうなのかな?と思うことがあった。

仕事をするとき、同じくらいのエネルギーを注いでいるはずなのに、妙によろこんでもらえるときと、あんまりよろこんでもらえないときがあるんですよ。自分たちとしては、かけている手間も苦労も同じくらいなのに。同じ100の苦労をしたときでも、なぜかこっちの仕事のお客さんは100よろこんで、こっちの仕事のお客さんは500よろこんだ、みたいなことが起こるんです。
自分たちがすごく苦労したと思ってないのに、妙に評価してもらえるときというのは、放っておいても、どんどんいい結果が出て、いい循環になって、どんどん力が出ていく状態。それが自分たちに向いている得意なこと。

https://www.1101.com/books/iwatasan/free/free.html

自分自身で思っているより、妙に評価されていることは喜んで良いのではと思った。自分を肯定してみようと思った。仕事としてクライアントから評価されるのだからこれは「自分の得意なこと」と思ってみることにした。


それは、家で友だちと話している感覚で、お客さんと話すことだった。

数え切れない思い出がある。それは数百回のワークショップを行い、数千人のデベロッパーと出会い、たくさんのイベントを企画したことだけではない。徹夜でモーションを作ったり、仕事終わりに秋葉原のメイド喫茶に行ったり、楽しかった。一緒に徹夜したり、もくもくと作業している時間もしんどかったけど楽しかった。一緒にコミケに行ったり、コミケのコスプレを手伝ったりもした。結婚式にも呼ばれた。

仕事ではあるけど、友達と呼べる人が何人もできた。

ありがとうございました。

これからもよろしくお願いします。

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