前朔

通り過ぎ、振り返った時のような 奥行きのあるもの。 不在の在の手触りをつくろうとしています。 #短歌 #詩 #読書 X→@maesaku0

前朔

通り過ぎ、振り返った時のような 奥行きのあるもの。 不在の在の手触りをつくろうとしています。 #短歌 #詩 #読書 X→@maesaku0

マガジン

  • 【短歌】たぶん短い歌の集まり

    今まで作った短歌はこちらから。 世界を余白で埋めてしまおう。

  • 【読書感想文】

    前朔の読書感想文です。

最近の記事

たぶん短い夜の歌 1

崖の端で、ひとりぼっちで立っている。 キャッチャー・イン・ザ・ライの特権 こんなにも北極星は輝いて家路を急ぐ人は前見て 手すりにつかまって黄色い線の内側に立ってさえいれば平気 踏切がずっとあかない 家々の黄色い灯りは「止まれ」の合図 青空に虹を架けたいけど僕じゃ色が足りない 雨は足りてる  僕じゃない誰かが君を救えばいい ストレイシープを数えて眠る  ポップコーン吐き出されたる固き豆ほんの少し火が足りぬばかりに  「もういいよ」もういいんだよ目をあけて 「まだだ

    • 【感想文】世界の隙間をうめる本 〜シーダーオルアン〜

      【ネタバレは含みません】 シーダーオルアンの「一粒のガラス」を読んだので、その読書感想文を書こうと思う。特に女性を描いた後期作品は素晴らしかった。(一部作者の思想が剥き出しになる作品のため、どうしても歯切れが悪くなるのはご理解いただきたい) さて、これは世界の隙間をうめる本だ。 令和の日本ではその斬新さをまるごと体感するのは難しかった。肌感覚で当時のタイの内情を理解できないからだ。タイ語もわからない私にとって、タイは遠い場所にある。 しかし、世界に取りこぼされ、人々に無視

      • たぶん短い夏の歌 2

        一粒のカートのライト 滑走路を動く点P 闇を裂いてけ  エンジン音 ダンスを競うコウモリは 三万フィートの空を知らない  滑走路  重たい機体持ち上げる夜風が 頬をやさしく撫でる  ぬばたまに誘導灯が描く地図 飛び上がらねば見えないんだ 金色の水面の霧は晴れ上がり 気が抜けたきみをぬるくゆるそう 空蝉に成れず路上にうずくまる 折りたたみ傘 宇宙(そら)に翔んでけ お囃子だ 百鬼夜行か葬列か いいえ、狐の嫁入りですよ ソプラノの雨はおしゃべり アスファルトに連弾し

        • たぶん短い夏の歌 1

          短冊の在庫ならまだ余ってます。 十日付けでも間に合いますか? ぬるい入道雲を両手でしぼる 雨だ オレンジジュースみたいな すきま風は爽やかな夏であってほしい 心に空いたあなたの形 蝉の初声は悲鳴と心得よ 翅をかんなに生命を削れ 汗だくで目を覚ますのは夏のせいか。 単位を落とす夢のせいか。 夕焼けのスクランブルを Nujabesのステップで行く午後のチャンプルー あなたって夏が来るたび川岸で 炎色反応の話ばっかり 都会だもん 黒い夜空にクレヨンで 満開の花ラクガキ

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        • 【短歌】たぶん短い歌の集まり
          5本
        • 【読書感想文】
          1本

        記事

          たぶん短い日々の歌 2

          夕飯にトマトを潰し 汁が飛ぶ  今日はほんの少しだけわるいひと 温もりを引き剥がすんだ 私から 朝のベッドで 一人また死ぬ ザー…窓向こうに通り雨 すっぽりとスノードームみたいだ世界 鈴なりにすずめのなる木つまみつつ  ヘッドライトのフラッシュが散る  コーヒーに夢の名残りが沈んでる  掬うと溶ける 永遠みたい  ランボーの詩の海は夜を迎えるけれど 朝のコーヒーには まだ夜の海のように 夢が溶け残っている。 薬指 火傷の跡をさすりつつ  とろ火で小さな罪を焼いてる

          たぶん短い日々の歌 2

          たぶん短い日々の歌 1

          速達で 「ありがとう」の思い届け 「ごめんなさい」は手渡しがいい  静寂に冷えたる闇 たまごの背を  指で撫でれば ざらざらと月 内蔵にタトゥーがあるね 致死性の  知らなかったけど たぶん知ってた  匂い立つ 煙草おみなえし線香に  なるほどこれは浮舟ですか 味噌汁の手のひらに乗る 蜆(しじみ)の背  縄文だった 年輪を思ふ 帰り道知ってるのかな この蝶は  雨に被弾し くるくる転ぶ 君の知る 朔日(ついたち)の前夜 出る月を 半分に割って きのことしたい 山

          たぶん短い日々の歌 1