ラノベ14話
前回のあらすじ:
最近始めたバイト(『東京都』と書かれたベストを着て、歌舞伎町で路上飲みして居るならず者に注意をして回る)が、言葉の響きとは違いめちゃくちゃ肉体労働で(3時間ただただ6キロくらい歩く)なーんも考える余裕無く帰ってきたら水より安いビールかっくらってすぐ寝る日々を送っていて、ラノベ書いている事などすっかり忘れていた。
【魔王様は倒されたい#14】
「あ、魔王カスタマイズの事です」
『はぁ〜〜。ったく、今日は疲れてるってのに、、、。』
と、小さい声で愚痴った後、
『かしこまりました!魔王カスタマイズですね。』
と、事務的に対応するツェシ。
昨日は最初、明るく話してくれていたのに、今日は不機嫌な様だ。
昨日は最期めちゃくちゃしょうもない事で1時間泣いたし、コイツの情緒どないなっとんねん。
目の前に、カスタマイズする項目のウィンドウが出る。
気づいたらツェシはもう部屋を出て行こうとしている。
「えーと、とりあえず2ポイントあるから、1ポイントで弱点を元の【鍋のフタ】に戻してと、、。あと1ポイントをどう使おうか??」
と独り言を言いながら、ステータスの項目をザッと見る。
「うーん。。HP(体力)を下げたら逆に防御力が上がったりするから、結果的に弱くならないんよねぇ。。
いったい何を変更したら勇者に殺されやすくなるんだ??」
とブツブツとエコーのかかった声で独り言を言いながら更に画面を下までスクロールする。
「ん??なんだ?これ??」
一つの項目が気になり、スクロールする指がピタッと止まる。
「《魔王軍四天王・配置変更》、、って、何これ??え??四天王??そんなん居るん??おーい!!ちょっと聞きたいんやけどー!!」
と、部屋から出たばかりのツェシを呼ぶ。
扉の向こうからでも聞こえる大きさの“チッ!”と言う舌打ちが聞こえて、ツェシが入ってきた。
「あ、ごめん、あのさ、コレ、四天王なんて居てるの??」
『います。』
「へぇー!居てるんや!!知らんかった!!」
『いますよ。』
「自分がプレイした時はそんなボスキャラと出会わんかったわぁ。」
『います。』
(、、、、何やコイツ!?必要最低限の“います”しか言わへんやん!おるわー。こーゆうコンビニ店員。
「ここって、バンドエイド置いてますか?」って聞いたら『置いてますよ』ってだけ返すヤツ。
『バンドエイドは○○にありますよ』的な答えを期待してるねん。
“置いてますか?”って聞いてるけど、ほぼ“何処にありますか?”て意味やねん!)
イライラを抑えつつ、そしてなんで、例えの中の自分はバンドエイド探してるんやろう?と思いながら質問する。
「四天王はNPC(ノンプレイヤーキャラ。AIのキャラ)??」
『ちがう。』
「あ、じゃあ私たちみたいに誰かが操作してるの?」
『そう。』
「あ!ツェシみたいに、バイトで雇われてるの?」
『社員。』
そう言うとまた部屋を出て行った。
(なんや?アイツ???海藤優と禁句(タブー)で勝負してる最中なん?ってくらい言葉数少ないな。。ま、ええわ。ちょっと自分で確認してみるか。)
と思いながら、《配置変更》の項目をタップすると、《現在位置表示》と出てきたので、同じくタップする。
3秒ほど読み込み、赤いピンが四つ地図上に落ちるていく。
なるほど。このピンの刺さったところに四天王がそれぞれ居るのか。分かりやすい。
しかし、ピンは全て、同じ場所に刺さった。
「ん??4人とも同じ場所に居るの??」
地図を拡大する。
「あ、ココやね。この魔王城に4人とも居るんや。え?知らんかった!なんで自分が攻略した時に出会わへんかったんやろ??フツー、各フロア毎に1人ずついて、倒さんかったら次のフロア行かれへんとかやのに。。」
更に地図を拡大する。
「ん??4人とも同じ部屋に居るぞ??
なんで??コレはどこの部屋??」
地図を拡大したり縮小して道を辿ったりして、部屋を割り出す。
「、、、。あ、ココやね。この部屋に4人とも居てはる事になってるわ。」
、、、、、、、。
一応、見渡してみる。
分かっている。
自分以外、この部屋には居ない。
「いやいや、ってか、このピンの刺さってる場所、今まさに自分が居る場所やん!!」
四天王の現在位置を確認する機能じゃ無く、魔王の位置確認する機能やったん??
それか四天王の位置検索をしたけど、システムエラーでココが表示されたんかな??
と思う事にした。
、、思う事にしたのに、どうして私は、気づいてしまったんだ?
自分の今、座っている玉座。
その真下の床のタイルに空いた1センチ程の隙間をーーー。
「いやいや、まさか、まさかよ!!笑 だって、今まで気配すらなかったやんか!笑 考えすぎよな。」
と、独り言を言いながら、玉座をズラしてみる。
玉座をズラすと、床にあまり見たくないモノが付いていた。
取手だ。
「んー???笑」
無理矢理笑いながら、取手を上に持ち上げてみる。
すると、床下には、普通の家のトイレと同じ位の広さの何もない空間が広がっており、4人の魔物がただ突っ立ってこちらを見上げていた。
2秒程の沈黙の後、岩のバケモンみたいな魔物が口を開く。
『おお、これは魔王様、、』
いったん、閉めた。
“魔王様”の“魔”あたりで閉め始めて、“様”の“さ”あたりで完全に閉じた。
「、、、、、、、、、気味が悪い。
あいつら、4人とも上を見上げてたけど、アレはフタが開いたから上を見上げたんじゃない。
きっと、一日中、上を見上げ続けて暮しているんだ。。。
確証は無いけど、違いない。
きっと今までずっと、無言で、物音すら立てず、座りもせず、上をただ見て毎日を過ごして来た奴らなんや。
フタが開いたから見上げたんじゃ無い。
奴らが見上げてる所に、私がフタを開いてしまったんや。。
、、、、、、、、、、、気味が悪い。」
私は5分ほど唖然とし、その後、無言で玉座を元の位置に戻し座った。
そして、無理矢理、元気になるように独り言を言う。
「さぁーって、と!!あと1ポイント、何にしよかな〜〜♪っと、、、。」
、、、、、。
ダメだ。集中出来ない。
今も、自分が座っている真下で、上を見続けている4人組が居ると思うと気が気で無い。
上を「睨んでいる」やったら、まだ幾分かマシ。
睨みもせず、ただ「見ている」だけやから気味が悪い。
(え?今までも、知らんかっただけで、ずーっと自分の下に、上を見続けている4人組が居たの??)
気味が悪い。
「うーわ。。これ、マンションの自分の家でよく居る場所の真下で、下の階の家族が全員でずーっと見上げてたりしたらめちゃくちゃキモいなぁ。」
自分で言って、余計気味が悪くなった。
(え?前魔王は玉座の下に見上げてる4人組居るって知ってたの??)
《四天王・配置変更》の項目をもう一回見てみる。
最終変更履歴が1年前になってる。
(え??前魔王が、自ら“見上げ続け四天王”を自分の真下に移動させた???)
気味が悪い。
(そういや、あの岩のバケモンのヤツ、ずーっと閉じ込められてたのに、第一声がとても落ち着いた感じの『おお、これは魔王様』やったな。。)
気味が悪い。
(、、、。四天王って言う割に、岩のバケモンが1人、細身の銀髪の執事みたいなんが3人で、キャラ被りまくってたな。)
気味が悪い。
(、、、、、。
岩のバケモンのヤツ、鋭く光るトランプ持ってたな。
アイツ、トランプ武器にするタイプちゃうやろ。
横の銀髪の執事みたいなんが武器トランプやねん。。
ん????あれ??銀髪の執事みたいなんの1人が持ってた武器って、、あれは確か、、!!)
気づいたら、“二度と関わらないでおこう”“忘れよう”と誓ったのに再び玉座をズラして床を開いていた。
床のフタを開けると、変わらず見上げてる4人が居た。
岩のバケモンが口を開く。
『あと何時間で、何時になりますか?』
「いや、まず質問はオレからさせてくれ!!
そんで、お前の質問は何や?“何時間で、何時になりますか?”って、どうゆう意図の質問や?
3時間経てば6時になるよ!コレでええの?」
岩『、、、ほぅ。』
「ほぅ。って何や?
えぇと、四天王??なんですよね??」
岩『いかにも。私は魔王様直属の四天王・《えぐれ月天》、名をラ・トゥール=ぺシェと申し、、』
「あー!ちょっと待って!自己紹介は後で良い!なんかもう、自己紹介聞いたら、また気になる部分めちゃくちゃ出て来そうやから、もう既に何個か気になるコト出てるけど、いったん後で!な!
えーと、まず気になってんの、君!!」
と、3人居る内の1人の銀髪を指刺す
銀『はっ!オイラは魔王様直属の四天王・《めくれ月天》、名をヴァルグと申、、』
「だーから!気になる事また増えたから!自己紹介は後!!えーと、君が持ってるソレって、、?」
銀『は、、?この鉄瓜鎚(てつかつい)が何か?』
そう言いながら持っていた武器を上にいる魔王に手渡す。
「おー、やっぱコレ!!!!!!!
シャンプーが持ってたヤツやんけ!!」
「うーわ!ずーっと、“あの武器は一体、なんなんやろう?”て思いながら生きて来てん!!」
そう言いながら、オモチャ買ってもらった子供くらい喜びながら振り回す。
「あ、なるほど!こうやって振り回すんや!え?なんて名前って??」
銀『鉄瓜鎚(てつかつい)です。ウリの形を模した鉄の球体を棒の先に付けた武器です。』
「ウリの形なんやコレ!球体なんやから、別にウリ限定やなくてもええのにな!」
銀『ハンターのカイトが最後に出した武器も、ピエロの顔バージョンの鉄瓜鎚(てつかつい)なのでは?
と、知り合いでスリやってるヤツが居てるんですけど、ソイツが言ってました』
「知り合いにスリやってるヤツ居てるんや!
さっきみたいに、あんま言う必要無い時は、“知り合いにスリやってるヤツ居てる”とか言わん方が良いで!!
うーわ!なるほど!コレはけっこう当たったら痛そうやわ!アニメでも人ん家の塀めちゃくちゃ壊してたもんな!!
でも、アレやね!シャンプーは両手で使ってたけど、君は一つなんやね!」
銀『え?あぁ!そういえば買った時、2個セットやったんですけど、1つは壊れた時の予備やと思って家に置いてます!』
「武器ってあんまり壊れた時用の予備とセットで売ってないよ!
おったわ!お前みたいなヤツ!麻雀牌の“白”を何も書いてないから、何か他の牌無くした時にマジックで書いて使う用の予備やと思ってたヤツ!」
銀『へぇ』
「へぇて何や!!引き出した方やろ!
ふー。飽きた、、。ありがとう。返すわ。
あのー、アレやわ。
武器借りといて、こんな事言うのも失礼やねんけど、なんか、その武器 君のキャラに、ギリッギリ合ってへんわ。」
銀『え?』
「いや、なんか、、、ギリギリあってないんよ。
だから、めちゃくちゃ合ってないより、かえってタチが悪いんよ。」
銀髪は、まっすぐ、無言で私を見ている。
気にせず続けた。
「お前みたいな、銀髪で執事みたいな格好したヤツに合う武器は、アンティークな二丁拳銃か、コインか見えへんワイヤーかトランプ。逆に大きな鎌、
一周回って肩にオウム乗せてて、倒した後に実はオウムが本体のパターン、これだけしか似合わんのよ。
もう、お前、横の岩のカタマリのヤツと武器と、あとついでに名前変えてもらえ。
なんや、君の名前。“ヴァルグ”って?自分で付けたん?」
銀髪が静かに、細かく2回頷く。
「岩のバケモンみたいな名前を何で名乗ってんねん?」
岩のバケモンも、まっすぐ見つめて来た。
「んで、岩のキミ!」
岩のバケモンがキョロキョロしている。
「岩なんはキミしかいないやろ?
“え?オレ??”やなくてさ。
もう、キミみたいのは鎖を体に巻いて素手で戦え。トランプ武器にすな。
で、名前が、、」
岩『ラ・トゥール=ぺシェです』
「いろいろ言う事はあるけど、、、。
岩石タイプのヤツは名前の途中に “=” は入らん!!
これ、自分で付けたん?
親につけてもらったってゆーんやったら、私は今、凄い失礼な事してるわ。
どっち?自分?親??」
岩『、、、自分。』
「よーし、じゃあ、2人名前と武器チェンジした方が良い。
今日から、銀髪のキミが、トランプが武器のラ・トゥール!岩のキミがシャンプーの武器貰ったけどそんなん使わずに鎖巻き付けて素手で戦うヴァルグ!オッケー??」
2人が無言で頷く。
「んで、もう一つ、ラ・トゥール!」
岩『はい』
「いや、君はヴァルグ。ふとした時に間違うのは仕方がないけど、変えて0ターンで間違うのはやめよ。銀髪がラ・トゥール!」
銀『なんでしょう?』
「あのー、君、自己紹介の時、自分の事、『オイラ』って言ってたけどさ、
そのキャラで一人称“オイラ”は散らかりすぎ。
“オイラ”はカマキリ平気で掴める子供か、矢口真里しか言ったらあかんねん。
これから、“わたくし”にしよう。」
銀『ェッ!サー!』
「うわ、ここも工事必要か。そのタイプのヤツは、返事にイエッサー!て敬礼せんよ。
イェッサー言い慣れ過ぎて、もはや“ェッ!サー”て発音してるやん。」
銀『理解した。』
「ターミネーター2か。
んもう、なんか疲れたから、休む!
“どうしてこんなトコに閉じ込められてるの?”みたいな1番気になる事とか、そのキャラ丸かぶりの残り2人とか、なんか途中でチラッと言ってた《めくれ月天》の件とか、岩のヤツの声が異様に澄み切っている件とか、部屋狭いのに自転車止めてるヤツがおる件とかバルサン炊いた形跡がある件とかは次回ね!!」
私はイライラしながらフタをバタンと閉めようとした。
しかし、一瞬、(何をそんなに苛立ってるんだ?)そんな言葉が脳裏によぎり、フタを閉め切る前に手を止めた。
(そもそも、初対面の人に名前が違う、キャラが違うとかアイデンティティに触れる様な事を言って、いくら四天王は魔王の部下だからって失礼すぎないか??)と思った。
蓋の隙間から、中を覗く。
ひどい事を急にツラツラ言われて、落ち込んでいないか??
岩のバケモンと目が合う。
岩『あと何時間で、何時になりますか?』
バタン!とフタを閉じた。
【続く】
あとがき:
さて、ここで、皆さんが思った事を当てましょう。
“長っ。”
“こいつ冨樫義博好きやな”
ですね。
当たりましたか?
これが、
だいたいのカン
です。
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