老後ひとり暮らしの生活費とリスクを解説【具体的な3つの解決策】
今回はこのような疑問に答えていきたいと思います。
保険会社に勤めて10年を迎えました。
FPとしても活動し(FP2級保有)現在でも年間90~100世帯の新規の相談を受けております。
つい先日も60歳を迎えられた男性から老後ひとりで生きていくために、
どういった準備をしたら良いのかという質問を受けました。
僕なりの回答なども記載しますので参考になれば嬉しいです。
老後のひとり暮らしをしている割合は?
老後にひとり暮らしをしている人がどれくらいの割合でいるかご存知でしょうか?
2019年に厚生労働省から発表された「国民生活基礎調査の概要」のデータによると65歳以上の人がいる世帯が2558万4千世帯のうち、
となります。
「単独世帯」が既に約3割を占めており、年々増加しております。
さらに「夫婦のみの世帯」が32.3%おりますので、ここからいずれ「単独世帯」に移行してくることを考えると、老後のひとり暮らしは珍しいものではありません。
男女比で言うと、
となっております。
女性は男性に比べても平均寿命が長いため、老後ひとり暮らしをする可能性は高いことは皆さんもご理解されているかと思います。
現在結婚されていて、将来のために資産形成などされている方もたくさんいらっしゃると思いますが、ご夫婦のどちらかがひとり暮らし(単独世帯)になることを考えられた上でプランニングが必要になってきます。
老後ひとり暮らしの生活費はいくら?
老後の生活資金などは一度はお聞きになられたことがあるかもしれません。
(私がお話しているかも。。。)
しかしこの数字は夫婦での生活費になりますので、老後ひとり暮らしの場合は変わっていきます。
もちろんひとりになるので生活費は減っていくことになりますが、ちょうど半分になるわけではありません。実際どれくらいになるのか確認していきましょう。
老後ひとり暮らしの生活費
総務省の家計調査(2020年)によると、
「65歳以上の無職単身世帯」(年金収入のみ)の消費支出は133,146円
その内訳は、
個人的には節約されている印象を感じましたが理由も収入を見たら納得しました。収入に関しては次に解説します。
住居費が1.3万円と言うことは住宅ローンを完済されているか、ご実家に住まわれていると言うことになりますね。
単身世帯の収支の実態
どんな生活費(支出)がかかったとしても、収入を越さなければ何も問題はありませんし、老後の心配する必要もありません。
しかし、そうもいかないのが現実です。早速見てみましょう。
総務省の家計調査(2020年)によると、
「65歳以上の無職単身世帯」(年金収入のみ)の実収入は136,964円
そこから税金・社会保険料が引かれますので、手取りは121,942円となっていますので、手取り収入から消費支出をひき算すると、
毎月1万円以上が赤字となってしまいました。
「毎月1万円くらいの赤字なら貯金でなんとかなりそう!」
というよう反応もあると思います。
確かに30年間で約400万円の赤字になるのでそれまでに現金で貯めておけばなんとかなりそうな数字でもあります。
しかし先ほども書きましたが、住居費が1.3万円となっており、仮にご実家がなく賃貸に住まわれていたり、住宅ローンが70歳または75歳まで組まれていた場合、消費支出が5万円〜10万円ほど増えていきます。
さらに、2022年4月からさまざま値上げが発表となりました。
その逆に受け取る年金は値下げ。。。
少子高齢化により社会保険料や税金の負担も上がることはあっても下がることはないと考えた方が良いので、「なんとかなる」ではなく解決策を考えておくことは大事になりそうです。
プレジデント2022.3.18号には住居費・趣味娯楽費・被服費・通信費を節約して・・・と記載がありましたが、人によってはなかなか厳しいのかなと個人的には感じました。
特に住居費については都心から地方に引っ越しをすれば家賃1万円台のアパートがざらにあると書いてありましたが、老後のひとり暮らしで住み慣れた場所から知り合いもいない地方に引っ越しするというのもハードルが高そうな気がしてなりません。
生活費(消費支出)が増え、年金収入が減るということは現実的なので、
解決策として考えられることは、
とても単純なことですが、この2つに限るかなと思います。
「簡単に」「ラクに」「すぐに」解決できる魔法の様な方法はありません。
今からできることとしては、
どれか一つでも始めることで老後ひとり暮らしで赤字にならない生活を送ることができるのではないでしょうか。
老後ひとり暮らしのリスクとは?
もう少し具体的なリスクについて解説していきたいと思います。
これが全てではありませんが参考にしてみてください。
再雇用後の減給
一般的には60歳で定年を迎え、そこから5年間再雇用で勤めることができる様になっていますが、たいていの企業では年収がグッと下がります。
平均の減収率は44.3%となっており、リタイア直前の年収が600万円の方だと再雇用後の年収は334万円になるということになります。
かなり下がりますね。
確かに業務内容も特に変わらずに年収だけがグッと下がるというのは辛いのですが、65歳までの5年間収入が確保できるということは大きなメリットでもあります。
さらに働き方改革により定年を70歳まで引き上げることを推奨されております。収入を得られる期間が増えることになりますので年収は下がるかもしれませんが、前向きに捉えていいと思います。
もし再雇用で年収が下がることが嫌だというのであれば、これまでのスキルを活かし定年前に定年のない又は遅い企業に転職をすることも視野に入れると良いかもしれません。
実際に年収は20%の削減で定年のない企業に転職できた方や年収UPした方もいるとPRESIDENTには書いてあります。
「今さら転職??」
と思われる前にそういった選択肢もある時代だと思ってまずは調べてみることは大切かと思います。
生活水準
収入は下がっているにも関わらず、生活水準を変えられない方がたくさんいるということです。
これはなかなか変えるのが難しいんですよね。
気持ちはとてもわかります(笑)
当初は貯金もあるのですぐに生活費を下げたりすることもなく、
「落ち着いたら節約しよう」と思うのですが、人によってはあっという間に貯金がなくなっていくので、外食・車・保険・サブスクなどの見直しをしていくといいと思います。
病気のリスク
「治療費は高額療養費制度があるので少しの貯金があれば良い」と
楽観的に考えるのは間違いです。
病気のリスクは治療費だけではありません。
例えば、
さらに、現役時に三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)などの大病をされた場合、職場にも影響があり収入が下がることも考えられます。
収入が下がり、治療費や生活費は増え、貯金が減っていき、将来の退職金や厚生年金にも影響がかかる可能性もあります。
大手企業によっては健康保険組合からさらに治療費の補助が出ることがあったり、一定期間は給与を全額補償してくれる会社もありますので、全ての方が該当するわけではありません。
「高額療養費制度で9万円〜10万円を貯金で用意しておけばいい」と思っている方もたくさんいらっしゃいますが、それは一回の治療で済めば良いという話です。
一年に複数回、高額療養費制度を使う状態になったらどうでしょう?
例えば、がんの手術の前に抗がん剤を投与を数ヶ月にわたって行う。
がん細胞を小さくしてから手術する。そんなことよく聞きます。
抗がん剤にもよるかもしれませんが、全てに9万円がかかっていたら、
さらにその都度入院が必要になったらどうでしょうか。
私の知り合いはがんではありませんでしたが緊急入院をすることになり、誰もが知っている有名な病院に強制的に入院となりました。
実際私もお見舞いに行きましたが、その病院は個室しかなく一番安い部屋で、1泊2万円したそうです。
その私の知り合いは普通の中小企業で勤める会社員で年収もごくごく普通だと思います。手術と2週間の入院で25万円〜30万円は支払っています。
それでも貯金でなんとかなると思いますが、その貯金は医療費用として分けておいた貯金だったのでしょうか?
多くの方が将来のため、家族旅行のため、子供の教育資金のためのお金ではないでしょうか。
大切なお金ですので、安易に高額療養費制度があるからといってリスクヘッジをしないという選択は個人的にはおすすめしません。
親の介護
ご自身の介護のことも考えなければなりませんが、それよりも先に来るであろうご両親の介護の問題があります。
ご家庭の状況によって負担は変わってきますので、ここでは一般的な平均値などを見ていただけたらと思います。
ご兄妹がいらっしゃれば協力して行うことがベストですが、介護に関してはお金・時間・労力が大きく関わってくるのでスムーズに話が進まないことがあります。
ポイントは、親の介護が必要になった時のためにプロの介護サービスを利用できるようにお金の準備をしておくことが大切です。
プロの介護サービスを利用したり老人ホームなどに入居することができればお金・時間・労力の多くが解消されるからです。
厚生労働省の雇用動向調査によると介護を理由に仕事を辞めた方は1年で10万人にも及ぶということですが、完全に仕事を辞めれば収入が0になりますし、厚生年金額も減ります。
ご両親の年金や貯金額を確認しておき、介護にかかる一時金や月々の費用をどこまでカバーできるのか?
自分も負担をする必要があるのか?など確認して仕事を続けながら介護サービスを受けるのが親の介護が負担だと思う方にはベストだと思います。
実際アンケートで60代70代の親世代に「誰に自身の介護を担ってほしいか」を集計したところ約半数が「介護サービスの職員」と答えたそうです。
逆に「子供」と答えた方は25%以下だそうです。
一般的に介護にかかる費用を記載しておきますので参考にしてください。
生命保険文化センターが発表している平均値になりますが、毎月15万円以上かかったり、介護期間が10年以上で一時的な費用として200万円以上かかったという方も少なくありません。
私の親戚も要介護5と診断されたのちに14年間介護生活をしておりました。
介護保険も使っておりますが、障害者用の車を用意し自宅も建て替え家の中にエレベーターを付けておりました。
具体的にいくらかかったのかは聞いておりませんが、長い期間の介護生活だったのでかなりの費用負担はあったのかと思います。
介護に関するお金の準備はご両親はもちろん、ご自身にとっても重要なことになりますので、事前に話し合いができると良いかと思います。
今からできる準備と具体的な3つの対策方法
年金の繰下げ受給
2022年4月の改正で年金の受取額を増やす選択肢が拡大しました。
その中でも注目されているのが繰下げ受給の開始可能年齢が70歳から75歳まで引き上げられたことでしょう
以前までは年金受給を65歳から1ヶ月ごとに繰り下げると0.7%受給額が増え最大で70歳まで繰り下げることが可能でした。(最大42%増)
それが0.7%は変わらず75歳まで繰り下げることが可能となり最大で84%増となりました。
年金を繰り下げるメリットとしては受給金額が増えることです。
逆にデメリットは受給額が増えることで所得税・住民税・社会保険料が増えます。さらに繰り下げることで損益分岐点は後ろ倒しになりますので損得で考えると長生きしないと損失が出てしまいます。
70歳から年金を受給した方と75歳から年金を受給した方の損益分岐点は、
91歳11ヶ月になります。
いつから年金を受給するのが正解かは誰にもわかりません。
平均寿命が年々延びている日本でこのような制度改正があることはとても良いことです。
老後ひとり暮らしをされる方であれば極力70歳・75歳と長く勤め収入がある状態を維持しながら年金受給を1ヶ月でも伸ばすという考え方が良いのではないかと思います。
保険で病気や怪我のリスクヘッジ
病気のリスクは先ほど解説させていただいた通りですが、高額療養費制度があるから医療保険が不要というのはあまりにも雑な感じがします。
どちらかというと高額療養費制度を利用した後の費用とそれ以外にかかる費用負担を補うのが医療保険になるので逆に必要不可欠なのではないかと思います。
どうしても皆さん高額療養費制度で約9万円の負担をすればいいんでしょ!と思われていますが、一回きりならいいのですがその9万円が短期間に何度も使うことになった場合の医療費の負担は大きくなり、さらにそれ以外の差額ベット代などもどんどん増えていきます。
最近はコロナの影響で個室を希望される方もいるため、最低でも一泊1万円以上はかかります。
手術をして10日間入院したらそれだけで20万円以上は自己負担になります。
さらにこの自己負担は今後増えていく可能性もあります。
75歳からの医療費の負担も最近1割から2割に上がったり、いつの間にか改訂されましたよね。
高額療養費制度も定期的に改訂されていることはご存知でしょうか?
もちろん高齢化が進んでいるので費用負担は増えています。
これからもっと高齢化が進んでいきますので改訂があるかもしれません。
リタイア後はどうしても病気や怪我などで入院や手術といったことが発生します。
現役時から老後の医療費も考えて医療貯金をされている方でしたら不要かもしれませんが、そうでないのなら医療保険やがん保険は加入しておいても無駄なことはないと思います。
医療費は気になるけど医療保険・がん保険に加入することに抵抗があるのでれば、入院・手術・がんの保障をしつつ一定の年齢まで保険を使わなかった場合、それまで支払った保険料を全額還付金としてお支払いする保険がありますのでご検討ください。もちろん途中で保険を使った場合はその分は差し引いて一定の年齢の時に相殺分を還付金としてお支払いします。
※詳しくは個別にご相談ください
親の介護費用を捻出する方法
可能なのであればご両親に民間の介護保険に加入していただくことかと思います。
ご両親の年齢や健康状態によっては難しい方もいらっしゃると思いますが、
最近は80歳まで加入ができ、申込時の告知も3つだけだったりしますので比較的加入しやすい内容になっています。
年金から保険料を捻出するのは大変かもしれませんが、もし介護が必要になった場合、保険料は払い込み免除になり毎月10万・20万といった給付金が保険会社から振り込まれる(もしくは一時金)のでご両親の年金と合わせることでプロの介護サービスを使うことができると思います。
介護サービスや老人ホームへ入居できればお金・時間・労力は大幅に負担が減ります。
そうすることでご自身の将来の貯蓄を増やすことも可能ですね。
しかし年齢や健康状態や保険料のことで加入ができないとした場合は、援助が必要になるかと思います。
その場合はご両親には極力節約をしてもらい、投資信託などで運用して少しでも援助ができるよう準備をしておいた方が良いでしょう。
最後に
今回も少し長くなってしましましたね。
老後のひとり暮らしについては想定される問題もっとありますが、今回はここまでにしてまた改めて解説できたらと思っております。
今回はPRESIDENT2022.3.18を参考にしてみました。
お伝えできなかった部分もたくさんありますので興味のある方はご購入いただけたらと思います。
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