最難関中合格の秘訣 親の役割・塾の役割
(第6回)
Ⅱ.最難関中突破のための学習法
合格を決める学習歴の高め方
[4] 大人扱いが子どもの自主性を高める
学習密度を高めるために集中力とともに重要な自主性の身に付け方も述べておきましょう。
自主性が身に付くことは精神年齢が高くなるということです。精神年齢が高い子どもは国語の成績が必ず上がります。何故なら国語は行間に隠された意味を読むことができれば点数が取れるからです。行間を読むための力は社会的な経験値、体験値がどれだけあるかにかかっています。現に最難関中に合格していく子どもは精神年齢の高い子どもが多い傾向にあります。俗に言う「ませた子」が多いのです。
わが子の精神年齢が果たして高いのかどうか、気になるところだと思います。それを簡単に見分ける方法があります。それは比喩や皮肉がわかるかどうかです。
例えば、「このお豆腐、淡雪のような口当たりね」といった比喩表現や、「○○くんが部屋を汚してくれるから母さん、たくさん仕事が増えて嬉しいわ」といった皮肉的な表現がピンとくるかどうかです。
こうした比喩、皮肉は精神年齢が高くなければ理解できません。だから、わが子が比喩や皮肉の意味するところをすぐにわかれば大人であり、ピンとこなければまだ子どもである証拠です。
最難関中に合格する子どもの一つの性質に精神年齢の高さがありますが、単に口先で「自主性を高めよう」と言っても何の効果もありません。家庭では子ども扱いしておいて、いざ受験において「大人になれ」と言っても無理な話です。
私も驚いたのですが、灘中では同級生同士で「○○さん」と呼び合うと以前に聞いたことがあります。私の世代では「○○さん」という呼称は中学高校の頃のクラブ活動などで先輩を呼ぶときに用いた呼称です。先輩を尊敬しての呼び方です。つまり、彼らはお互いがお互いを尊重し、大人としての付き合いをしているのです。ここに精神年齢の高さを見て取ることができます。だから家庭においても、叱るときは別として、親が子どもを「○○くん」「○○さん」と呼んで大人扱いすると自主性を伸ばす効果があります。
それから、バカ扱いすると子どもは成長しません。「なんでそんなこともわからないの。このバカ!」そんなふうにバカ扱いされた子どもに自主性、自立心が芽生えるはずがありません。そのとき反発する子であればもうすでに自立心が旺盛な子どもに精神的に成長できているのですが・・・。
親が否定的な言葉から入ると子どもの自主性の芽を潰してしまいます。子どもは失敗しながら経験値を増やしていくのです。そこには我慢も必要です。失敗を大目に見るような度量の大きな親でないと子どもに自主性を身に付けさせることができないとも言えます。自分の感情のまま動いたり、子どもが失敗する前に先に手を出したりしてはいけません。
よく子どもに対する親の厳しいしつけ(鍛錬・指導)の例として「獅子の子落とし」が用いられます。ライオンはわが子を鍛えるためにわざと谷に突き落とし、這い上がってこさせるという話です。動物学者に聞いてみると、確かにそれに似た行動をするそうです。もし親ライオンが子ライオンが谷を這い上がってくる途中でくわえてしまえば、それは何のトレーニングにもなりません。人間の親もライオンの親もわが子を大人にしようと思えば、子どもが自分の力で物事をやり遂げるのをじっと待つ我慢が必要なのです。
ただし、ライオンはいざというときは自分が助けに行ける程度の谷を使うそうです。ところが人間の親はいざというときに助けに行けない谷に子どもを落としてしまうことがあります。特に最近、それが顕著になってきたように感じます。
以前、こんなことがありました。希学園に通っているある子がその日、大幅に遅刻してきました。「どうして遅れたんや」と聞くと、「お母さんに高速道路の上で車から降ろされた」と答えたのです。私は「えっ!!」と絶句してしまいました。「あんたみたいな勉強せえへん(勉強しない)子はここから歩いて行きなさい」と怒られ、高速道路の料金所のところから逆方向に歩いてきたというのです。よく事故に遭わなかったなと冷や汗が出ました。お母さんにしてみれば、わが子を指導するつもりだったと思いますが、ひとつ間違ったらあの世行きです。トレーニングも命あってのものです。
わが子の自主性を高めるために敢えて厳しい状況を作ることは大切ですが、それもいざというときは親が手を差し伸べられる範囲内ですべきだと思います。
(第7回目へ続く)
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