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【第13回】 アメリカ、イギリスにおけるエリート教育の根源

~その現地訪問によるインタビューを通じて2007~

※私が2007年にアメリカ、イギリスの学校を訪問してまとめたものです。訪問から月日が過ぎてはしまいましたが、希学園の根幹に通ずるものがここにあるので、各種データは当時のまま、文章部分に修正を加えています。

イギリス編 Oxted School
回答者:Mrs.Margaret Hawley

前回に引き続きOxted Schoolを紹介します。今回はMrs.Margaret Hawley校長(当時校長)への質問とその回答という形で記します。

[質問1]
 Athleticなど体育や芸術などの面を大いに取り入れつつ、さらにはそのことで難関大学にたくさんの生徒を合格させることが何故できるのでしょうか。学力を効果的につけさせる為に、どのような方法が講ぜられているのでしょうか。

[回答1]
 学術面での発達だけではなく、多方面での発達に力を入れている理由をお話ししましょう。イギリスの教育システムの基本は、青年達の学術的な発達はもちろん、自分の生活している社会の存在を理解し感謝する事、健康的な生活を送れるようにする事に力点が置かれているからです。スポーツから得られる効果としては、①健康維持、②チームワークを高める(他人との協力)、③感情的な面での聡明さ(多くの成功者に共通する)などが挙げられます。また、演劇などの文化的な科目から得られる効果としては、①自己表現を豊かにする、②社交性を高める、③他人を理解し、お互いの違いを認める精神を培う、などの点があると思います。

[質問2]
 御校では悪いこと(校則違反)等を行った生徒を真のエリートとして成長させていくために単純に罰則を与えるだけでなく、彼らの心の中に入って心の底から「自分はこのままでは駄目だ。もっともっと自分の幼さや未熟な点を克服して頑張っていかなければならない」と思わせる教育指導を行っておられます。その教育指導のポイントを教えていただけますでしょうか。

[回答2]
 生徒達にはまず、悪い事をしたら何かが必ず起きる事を学ばせます。悪いことだと知った上で自ら選択した結果、何が起こったかを明確にするのです。罰は、①注意→②親への手紙→③居残り→④(短期間の)休学の順に与え、態度の良くない生徒に対しては、学校のカウンセラーが必要に応じて対応します。また、“目標ノート”を作らせ、今日の授業に対する目標を決めさせて、達成できた時は認めてあげるようにします。生徒を忍耐強く見守る事が大切だと考えていますが、もし、それでも改善が見られない場合には退学を強いることも稀にあります。

[質問3]
 私立学校と公立学校で、生徒への対応(罰則)などに関して何か違いはありますか。

[回答3]
 まず大きな違いとして、私立学校では良い生徒を選ぶことが出来ますが、公立校では生徒を選ぶことが出来ません。このため、これまで述べたような生徒の問題が多く見られます。問題のある生徒は家でのサポートがされていないなど家庭の問題も背景にあると思います。一旦家に帰れば学校からの監視がないため、家庭での問題を改善しにくい傾向もうかがわれます。
 一方、私立学校では、寮に住む事で生徒の日常生活を24時間ケアすることができます。

[質問4]
 入学して生徒は、いつの段階から自分が将来のリーダーであり、エリートになる資質を持っていると認識するのでしょうか。

[回答4]
 生徒の責任感や自分で考える力をつける事、これまでに述べたような教育目標を達成する上で大切であり、また生徒たちを成功に導く方法としても大変重要だと考えます。 そのために学校で様々な責任ある役割を生徒に課しています。例えば「Prefect」は、下級生たちに問題がないかケアする役で、6th formの生徒が担当します。また、「Head boy」「Head girl」「House captain」は、学校のイベントをまとめたり、チャリティーイベントのサポートを行い、生徒同士の集会では11歳~18歳の各学年代表と学校の問題について話し合います。また、6th formでは、必ず学校の内外を問わず地域奉仕を行わなければなりません。
 こうした様々な活動を通して、生徒達は社会に対する自己の責任、自分が社会のために何が出来るのかを学んでいくのです。

[質問5]
 イギリスの私立学校と公立学校の違いを、知っておられる範囲でお話いただけますか。

[回答5]
 生徒の精神的指導に関しての違いがあると思います。特に大きな違いとして、私立学校の生徒は自由が少なく、自由の感覚を味わう事が難しい点があるかもしれません。公立学校の生徒は、家に戻れば自分が責任を持って生活の中の役割を持つわけですが、それは人生にとって必要な要素の一つでもあるはずです。私立の生徒は、生活に密着した役割を持つ事が比較的難しいかもしれませんが、そうした事が必要と考えない両親にとっては私立校は良いと言えます。しかしながら、どちらの学校も生徒達に幸福・健康・成功を与えるために最高の教育を与えようと思っている事は間違いないと思います。

[質問6]
 House systemはBoarding systemより優れていると思いますか。

[回答6]
 全く別のシステムであるため、どちらが優れているとは言いにくいと思います。しかしHouse systemでは、コミュニティーの中で自己を確立する事や、同じコミュニティーの生徒と家族の様な関係を築く、という点ではBoarding systemに似ていると感じます。

Mrs.Margaret Hawley校長(当時校長)


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