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どうしてそれではダメなのか。~日米中の映画と映画ビジネス分析で、見える世界が変わる

 ──どうしてそれではダメなのか。

 私は今の社会では情報格差が拡大しており、それを是正しないと大変なことになると考えている。

 そう考えると、「ダメ」なのは平気で人々を騙し、扇動し、分断しようとする人たちのことでもある。彼らに騙されることの無いよう、情報の受け手である私たちもレベルアップしなくてはならない。その一助になるとの高い志を持って本書(『どうしてそれではダメなのか。~日米中の映画と映画ビジネス分析で、見える世界が変わる』(玄光社))は生まれた。
https://www.amazon.co.jp/dp/4768314597

 ……と、抽象的な話ばかりでは退屈するだろうから、具体的にどんなことが書いてあるかを箇条書きにしてみよう。

・『鬼滅の刃』はなぜあんなに大ヒットし、ブームを巻き起こしたのか

・『ワンダーウーマン 1984』に異常なまでのトランプ批判が含まれているのはなぜか

・『TENET テネット』の監督が、ハリウッドでただ一人許されている特権的立場とはなにか

・政府批判は絶対NG!の中国で『薬の神じゃない!』が史上初の社会派エンタメになれた特殊な事情とは

・たった一本で『鬼滅の刃』の倍額を軽く稼ぎ出す中国市場の現状と、超特大ヒット作品の出来栄えについて

・中国の軍門に下ることを選んだアメコミ大作『アクアマン』の、前代未聞の公開戦略とは

・取材された保守派側が「騙された!」と怒り狂った慰安婦ドキュメンタリー『主戦場』、その責任はどちらにあるのか

・未来を予言したシーンがある『エンド・オブ・ステイツ』のプロデューサーが、その筋では有名人だった件

・『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』の木村花さんが亡くなった背景には、情報発信側と受け手の格差があったこと

・『空母いぶき』の大炎上が、『ミッドウェイ』に大きな影響を与えていた件

 日米中の映画を中心に分析することで、多くの謎解きを行い、意外な結論をいくつも見出すことができたのではないかと思う。

 そのうえで今後、私たちが生きる世界のメインプレイヤーとなるであろう日米中で、どのような動きが起こるかを考えてみたい。

 本書の前作にあたる『それが映画をダメにする』(玄光社)https://www.amazon.co.jp/dp/4768308295/
でも指摘したように、ハリウッドはある理由からトランプ氏と決定的に対立し、彼が大統領になってから全面的な情報戦争へと突入していた。彼を1期のみで引きずりおろしたことで自信をつけた彼らは、22年にかけて、徐々に復活ののろしを上げていくことになる。

 バイデン新大統領は、反トランプの世論を受けて当選したから、「反分断と多様性の尊重」という、まさにハリウッドが錦の御旗に掲げたスローガンをそのまま踏襲してゆく。

 閣僚をみても副大統領カマラ・ハリス、情報機関のトップにアブリル・ヘインズ、財務長官ジャネット・イエレンと、初の女性を任命した。さらに内務長官のデブ・ハーランドは初の先住民出身で、国防長官は黒人初のロイド・オースティン。極めつけは運輸長官のピート・ブティジェッジで、史上初のLGBTをカミングアウトした大臣となる。(良い悪いはともかく)ハリウッドも政治批判を控えそうな多様性ある布陣といえる。

 ここにつけこもうというのが中国で、これまで通り「反分断」テーマのハリウッド映画に投資し続け、表に出ずに自らに有利な世論を形成しようとするだろう。こうして時を稼ぐ間に、コロナ禍で唯一生き残った自国市場を育成し、覇権へ近づいてゆく戦略だ。

 こうした中、日本の映画界は中国市場とネットフリックスバブルを成長のよすがとして、生き残りをかけてゆく。日中合作や、動画配信を通じた役者たちの世界デビューが相次ぐが、存在感を高めていけるかは未知数だ。

 良くも悪くも激動の時代の始まりであり、新しいチャンスはそこら中に転がっている。たとえ今は苦しい状況だったとしても、それは決して永遠に続くものではない。つらいときは守りを固め、来るべき時が来たら思い切りジャンプして手を伸ばせば、必ずや道は開ける。この大変な時代に本書を手に取ってくれた皆さんにも、強力な上昇気流が訪れることを、私は心から祈っている。

『どうしてそれではダメなのか。~日米中の映画と映画ビジネス分析で、見える世界が変わる』(玄光社) あとがきより抜粋

※3月10日 本日発売です。
https://www.amazon.co.jp/dp/4768314597


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