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『TENET テネット』世界興収200億円は決して喜べない数字

本日から日本でも公開される『TENET テネット』の世界興収が200億円を超えたとのニュースが流れました。

200億円というと巨額に感じますが、この映画の製作費は217億円とも言われ、現状ではかなり厳しい数字です。日本市場でこれから数十億円くらいは加わるので製作費以下にはなりませんが、現時点で200億円というのは悪い意味で衝撃的です。

その原因はもちろん北米市場の不振です。現在コロナ禍のため、ロサンゼルスとニューヨークでは映画館がいまだ再開できず、米国での公開週・週末のみの興収は、なんとたったの10億円程度と言われています。この規模の作品としては、信じられない数字です。

こうした絶望的な状況を見て、配給会社のワーナーは自社の勝負作品『ワンダーウーマン 1984』を、すでに10月から年末のクリスマスシーズンへと公開延期を決めています。

ちなみに最新の数字では、米国内の『TENET テネット』の興収はわずか2950万ドル(約31億円)です。これは全世界興収のせいぜい14%に過ぎません。

では、全世界200億円の興収とやらを支えているのはどこの国でしょうか。

いうまでもなく中国です。公開2週間で中国市場では5100万ドル(約54億円)をたたき出し、全世界興収の26%以上を占めました。2位のロシア市場との差は約10倍と圧倒的です。

こうした傾向は、日本や米国での劇場公開が見送られたディズニー実写版『ムーラン』でも同じです。

ディズニーは、コロナウィルスが収束しておらず劇場公開できなかった日本や米国においては、苦肉の策として、同社の動画配信サービスで約2000円の有料配信を行う形をとらざるを得ませんでした。

しかしいち早くコロナウィルス感染症を収束させた中国では劇場公開し、すでに2320万ドル(24億円)を稼ぎ出しました。これは全世界興収のおよそ61%に値します。

もちろん中国の映画館事情も、まだ完調には程遠い状況ですが、それでもほとんど世界で一国だけ立ち直りつつある状況です。

はっきり言って、現在のハリウッドメジャー作品は中国市場のおかげで生きながらえている状況です。

アメリカでのコロナウィルス感染拡大は明らかにトランプ政権のミスによるものですから、もともと反トランプだったハリウッドでは、この秋の大統領選にかけてその落選を期待する運動や動きが活発化することが予想されます。

筆者ウェブサイト 
https://movie.maeda-y.com/

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