テニス

西岡良仁が全豪オープンのベスト16に入った。ものすごい快挙である。昨今のパワーテニスが支配するテニス界において、戦術的な西岡のテニスは異質と言えるだろう。西岡を見るのも楽しいが、錦織全盛期にテニスにハマった俺からするともう一度彼の勇姿を見たいと思ってしまう。それほどに彼はやばかった。西岡は今ノリに乗っているがマスターズ、グランドスラムベスト4を期待され続けることはないだろう。そのレベルに彼はいた。彼を本格的に見始めたのは2014か2015あたり。当時は尖った才能以外のテニスプレイヤーがトップに行くには粘り強いテニスをすることが前提条件だった。ダビドフェレールやウナイシモン。イージーミスをしないという武器を持つ彼らがビッグ4を倒さんと日々挑戦を続けている時、彼は現れた。マイケルチャンとの特訓によって、相手を待つテニスから、テンポが速いラリーとツアー最強クラスのリターンというスタイルで一気に世界のトップクラスに躍り出た。あの頃のテニス部はみんな錦織の真似をした。少し左足が浮くフォアに、自由自在のバックハンド。クセが強いサーブに、織り交ぜるドロップ。どんな強打のプレイヤー相手にも一歩も下がらず、カウンターを連発し、ダウンザラインでエースを取り続ける。まさに、日本の誇りだった。ただ彼はまだやり残していることがある。それはノバクジョコビッチへのリベンジとグランドスラム、マスターズの優勝である。あの伝説的なグランドスラム決勝進出から、錦織はジョコビッチに18連敗くらいしている。本当に勝ち目がないなという試合もあったが、2016の彼は最もジョコビッチに近づいた。フルセットが多かったし、何よりジョコビッチも錦織を認めているように思えた。だが、あそこで勝ち切らなかったことで、錦織の中に悪いイメージがついてしまったのではないかと思う。だが、ジョコビッチももう年だ。それでも今年も精密機械ばりの動きを見せているので関係はないが、本気の彼に勝ってこそスッキリするだろう。さて、グランドスラム。とても厳しい戦いになることは分かっている。平均3時間の試合を7試合。長い時は5時間半。全盛期も怪我がちだった錦織にはあまりにも酷である。しかも今はパワーテニス全盛の時代。ミスを恐れずに相手を吹っ飛ばすようなボールを撃ち続ける選手が上位にはゴロゴロいる。俗にいうバコラーである。錦織には相性がいいのだが、万一相手がゾーンに入るとバコラーは止まらない。これは錦織に限らない。2018のジャパンオープン。錦織の優勝は硬いと思われたが、決勝の相手はメドベデフ。ベースラインからプロには珍しいフラット系のボールを打ち続ける特殊なスタイルの彼に終始戸惑いボコボコにされた。そんな選手に5回くらい当たって勝たないとグランドスラム優勝はない。そして最後にジョコビッチ、ナダルが待ち構えている。かなり厳しいが我らが錦織ならやってくれる。そう信じたいのである。生きる伝説ロジャーフェデラーが引退し、ナダルの体も限界が近い今のテニス界、錦織が最後に大波乱を起こしてほしいと願うばかりである。

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