アントラーズ2024前半戦レビュー

鹿島アントラーズ。俺たちの誇りである。新興集団ヴィッセル神戸に衝撃の敗戦から早一年と少し。前年度Jリーグ王者神戸へのリベンジと国立決戦にてACL準優勝、2年前のチャンピオン横浜F・マリノスに圧巻の逆転勝利。そして首位町田ゼルビアに勝ち点で並んだ。まだシーズンは長いが、ここ数年で最も強さを感じるチームになった。そんな鹿島アントラーズは何が変わったのか。主なポイントは3つ。柴崎岳キャプテン、選手の入れ替え、新しい風である。
柴崎岳キャプテンは大きな存在だ。シーズン前の怪我により戦線復帰はマリノス戦の3試合前。それでも随所に見せる縦パスや攻撃参加は我々の見たかった柴崎岳である。そして柴崎岳がキャプテンになったことにより鈴木優磨を解放できたのが大きかった。去年はキャプテン、エース、ひいては攻撃を1人で担っていた彼が今季はついに覚醒の時を迎えた名古ちゃんのサポート、タスク分担により、ますます攻撃に集中できるようになった。また東欧から来た怪物ストライカーアレクサンダルチャヴリッチの存在も鈴木優磨をフリーにさせる。そのため今季はゴール前に入ってもマークが彼につき切っていなく、楽々とゴールを決める姿が見られる。彼の本領発揮が鹿島にとっていちばんの補強である。
次に選手の入れ替えである。染野、荒木、林のレンタル移籍に納得はいかないものの、それ以外のoutは全て妥当。ここ数年ACLにギリギリ届かないシーズンだっため来季を見据え、ACLのための陣容にしていたが昨シーズンオフに大鉈を振るった。補強はCBを取れなかったのはとてもイライラするが、今のスタメンに割って入れる選手は市場に転がってもいなかったので、あまり気にしてはいない。

今季の好調を支える新しい風、それはアレクサンダルチャブリッチとポポヴィッチ監督、そしてコーチ陣である。彼らの存在は大きい。以上を踏まえて、鹿島の前半戦を振り返っていく。

水戸戦から町田戦くらい

至ってシンプル。後方から作りつつも、前線のチャブリッチにチャンスがあればロングボールを放る。注目したいのは今季ボランチ初挑戦の知念慶である。迎撃タイプの佐野とタスクを分け中盤の底でボールを引き出す動きを見せていた。前線には土居、昨季アシスト王樋口、魂の男仲間。チャブリッチをメインターゲットとしつつこの四人が流動的に動きチャンスを演出していた。開幕戦の名古屋戦はこのユニットが機能していたが、このチームには鈴木優磨がいる。いくらチームの状態が良くても彼を出さない選択肢を取れるはずがない。こうして2節途中にはトップ下鈴木優磨が爆誕し、チームの破壊力がアップと思いきや、このチームは今季もビルドアップの問題に直面する。そもそも練習、意識を変えても大筋のメンバーが変わっていないので苦手なことが爆発的に向上することは難しいのだ。ビルドアップのミス、連携不足をつつかれたり、それに固執した結果普段の強固さを忘れたりと、セレッソ戦でぎりぎり引き分け、町田戦でチームの弱点を徹底的に突かれまるで昔の鹿島のような勝ち方をされたチームは微調整を行った

川崎戦から鳥栖戦くらい

因縁の川崎戦でポポヴィッチ監督は名古をスタメン起用した。これまでの彼の評価はテクニックがあるがいまいちパッとしない。そんな彼が8年ぶりの川崎撃破の立役者になる。彼のプレス時の気の利いた動き、前線でのおとり、など随所に光るプレーを見せた彼のおかげで川崎の呪いをついに祓うことができた。彼のミラクルクロスは神様が見ていたということだろう。その後鈴木名古、サイドチャブリッチのユニットで相手を揺さぶり、空いたところにルーキー濃野が入ってくるという得点パターンも見られた。しかし、ここでも新たな問題が見つかる。相変わらずこだわるビルドアップと濃野の高すぎる攻撃意識、そしてチャブリッチが日本の暑さにやられどんどん運動量が落ちてきたという問題である。当然ながらSBが前線に上がると裏のスペースができる。それに加え、今季の鹿島はほぼ固定スタメンであり、日を追うごとにチームとしての運動量も落ちていく。ボールをつないで全身するという意識が強すぎるあまり大事なところでの空中戦であったり、裏のケアの意識が下がっていた。サブ主体で臨んだ八戸戦であわやジャイアントキリングを食らいかけスタメン組を起用した結果チームの体力がぎりぎりになった状態で挑んだサガン鳥栖戦で今季最多4失点を喫し、チームはスタイルの変更を余儀なくされる。

ガンバ戦以降

この辺りから新たなスタメンが生まれる。師岡である。昨シーズン最終節にて良いプレーを見せていた彼にこっそり期待をしていた私だが、ここから彼はスタメンとしての地位を確立していく。チームとしての変更点は主に二つで、①足元のビルドアップにこだわらなくなった。②名古ちゃんの依存度がすごーく上がった
この2点である。ビルドアップについては元々フィードが得意な二人のCBが、サイドの師岡と仲間をメインに狙っていくという場面が増えた。二人は小さいながらもボールを隠すのが上手なプレイヤーであり、そこにダブルボランチがカバーに行くことでマイボールにするという形のビルドアップがメインである。このビルドアップで大きな役割をしているのが安西である。彼はもともとボールを持って時間を作る、いわゆるグリーリッシュみたいなことを鹿島復帰後していて、そのプレーをしつつ中に切り込んでスペースを作ったりと大活躍。そして左で仲間、安西が時間を作り、中央の鈴木優磨、濃野で仕留めるという形が多かった。このプレーを可能にするのが、名古ちゃんがパスの出口になったり、相手のディフェンスラインと勝負して目線をずらしたり、ライン間で受けたりする動きなのである。また守備時も知念がインタビューでアンカー的役割をやめてカバーをメインに行っていたり、佐野も攻撃参加を抑えたりと、SB、前線で攻撃を作りつつ2ボランチと2CBを中心とした守備、それと名古を中心としたプレスで鹿島は非常にバランスの良いチームに変貌した。そしてこのチームの嫌なところは勝負どころで出てくるアレクサンダルチャブリッチである。実際5月は全試合途中出場で4得点。縦のスプリントは減ったが決定力とテクニックはやはり日本ではずば抜けている。


戦術というより2ボラのボール奪取能力、前線の質的優位、名古と樋口というスーパーキッカーと、正直質が高いことが前提で今の鹿島のサッカーは成立している部分があるため、主力のけが、累積が起きた場合が不安であるが、後半のキーマンは師岡の得点力、津久井などCBの奮起、そして垣田、舩橋のユース組の奮起が求められるだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?