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今や、廃天ぷら油は獲得合戦!?

天ぷらにフライ、揚げ物大好きの私ですが、最近掲題の廃天ぷら油が気になるんです。

一般家庭で、廃天ぷらオイルを捨てるのに、新聞紙に吸収させたり、あるいは下記のテンプルみたいなので固めて捨てたりすると思います。

本来は、オイルの利用はサラダに直接かけたり、ドレッシングにしたりなどの生食、天ぷらやフライなどの揚げ油、そして炒め油などの利用方法があるので、揚げ油として利用の後は炒め油に利用して消費していくのが理想です。ですが、揚げ物時に衣などが残ってしまったり濾した残渣も残ってしまうので、それは庭や植木の土に少し混ぜてやると良いのですが、これが飲食店ならそう言う訳にはいきません。

揚げ油は、酸化しすぎないように小まめに変えるお店なら尚更でしょう。

そう言うわけで、昔から油回収業者さんがいて、何かしらの利用をしてきたわけです。一般的には、畜産業向けの飼料用に利用されたり、我々が日常的に利用している石鹸の原料に利用されたりしてきたのです。

https://www.uedayushi.com/assets/service/img/oil_recycling-img1.jpg

(大阪の植田油脂株式会社さんホームページより)

そこにきて、『カーボンニュートラル』あるいは『バイオマス』と言う言葉が登場し様相が変わってきました。

2003年末に開始されたバイオマス・ニッポン総合戦略における一つの成果として、現在も流通している軽油代替燃料BDF(バイオディーゼルフューエル)は、廃天ぷら油回収・再利用の優秀事例として挙げられると思います。皆さんの地域のスーパーの一角に、500mlペットボトルに入れてお客さんが持ってきている風景をご覧になったことがあるでしょうか?これは、BDF製造事業者と地域行政、スーパーが連携して捨てるよりも、再利用しようと言う動き3Rのうちの『リサイクル』の取り組みとして進められてきました。

この動きは全国に広がり、ある程度廃天ぷら油のリサイクルは普及してきたのかと思っていましたが、ここにきてまた新たな事業が立ち上がってきたので驚いています。

その一つが、SAF。

SAFとは、「Sustainable Aviation Fuel」の略。持続可能な航空機燃料ということなのだが、次の日経新聞のニュースによるとアメリカのスタートアップ・ランザテックは、微生物による発酵作用で排ガスからエタノールを作り改質したSAFを来年2023年にもアメリカで生産を始めて、ANAやブリティッシュ・エアウェイズなどに供給する予定。IHIは、光合成で油をつくる特殊な藻類を使った製造法を開発しており抽出した油を精製してSAFを作る。改良を重ねて30年ごろの販売をめざすと書かれており、その他、ユーグレナやホンダも藻類によるSAF開発に取り組んでいるとある。

国の目標では、2030年には全航空機燃料の10%をSAFにとの目標もあるが、ユーグレナなんて藻類・・・ミドリムシ由来のオイルなんて僅かで、彼らがSAFとして提供した燃料の原料は廃天ぷら油。

自動車用燃料として確立されたBDFとは競合する形となり、なんだか疑問を持ってしまう。

次のNHK「飛行機の燃料に“揚げ油” 争奪戦が世界で激化」でも詳しく解説されている。

SAFの原料とするために、飲食店から無料で引き取っているという。
それにもまして、年間40万トンも発生していて、さらに1/3が海外に輸出されていると!

なんということでしょう?
BDFの流通でおおよそ国内の廃天ぷら油は利用されていると見た私が甘かったようだ。それなら、高くなるかもしれないけれど、SAFに使ってもらった方がいいのか??

「ACT FOR SKY」メンバー3社(コスモ石油と日揮ともう1社はどこ?)による国産SAFの最初の製造プラントは、大阪・堺市のコスモ石油・堺製油所内に建設予定で2024年度から製造開始予定。製造目標は、3年後におよそ3万トンとしているので、国内廃天ぷら油の7.5%を利用するということのようです。その他には、ENEOSはフランス企業と組んで廃天ぷら油原料に製造するみたいです。(下記ニュースも参照)

出光さんは輸入バイオエタノールの改質でSAFを製造するみたいですね。

もう一つは、廃天ぷら油発電

直接燃料にして発電するというのは、廃食用油対応発電所「兵庫グリーンバイオマスファーム」を11/30に開業したベナート株式会社。

年間2,500トンの廃天ぷらオイルを利用するというのだから、コスモ石油と日揮のSAF事業と比較すると1/10程度の規模となる。

ただ、この廃天ぷら油発電って結構匂いがきつそうですね。
BDFで走るバスの排気ガスは、どこか天ぷらの匂いがすると聞いたことがあるので、悪くはないんでしょうけれど、地域の固定された1箇所で昼夜問わず天ぷら油が燃やされ・・・といってもディーゼル発電だから違うかもしれないけれど・・・匂いが結構しそう。


私は思うんだが、国や自治体がもっと連携して「せ〜の!」って旗振り出来ないんですかね?年間発生する廃天ぷら油40万トンの大半は事業系ですよね?今のまま、脆弱な回収網で小規模企業にそれぞれ回らせていて、それぞれに企業が利用企業をいちいち当たらなければ事業が成り立たない状況ではなく、各地域でBDFにSAFに発電所にと最終利用形態を設けて、そこに全回収油を集結させよう!ってことにならないんですかね?

1980年半ばに発生したバブル期に官民癒着が問題になり、まだ日本はその影響に引きづられているようだ。世界に向けて2050カーボンニュートラルを宣言した日本なのだから、日本全国官民あげて取り組むべきななのに行政機関は民間事業者を支援すると政策を作るだけで、ワッショ!ワッショ!とはやらない。

今の動きを見ている限り、2003年のバイオマス・ニッポン総合戦略で目標とされた自動車用燃料10%をバイオエタノールに置き換えるとしたことは石油連盟の抵抗にもあって、消え失せた状況と似ている。SAFだって、100円/Lのところ現在はその10倍でも実証利用しようとしているが、もっと全体最適化していかねば価格低減は進まない。すなわち、実事業として実現しないと言える。

だって、ユーグレナさんなんて、こんな感じですよ!

SAFもやればディーゼル燃料もやれば、全方位で話題を振り撒いているユーグレナさんだけど、それぞれ大きな市場だから、どっちもなんてやれない。どっちかしかやれないということなら、どっちかか、どっちもがなくなる訳だ。

本当の?廃天ぷら油の利用法・・・

廃天ぷら油の利用法は、本当ならSAFでもBDFでも、発電でもないはずだ。最初に紹介した畜産業向けの飼料用や石鹸などの化成品原料として利用するのが相応しい。すぐ燃やしてしまうのは、宜しくないという訳だ。

まずは、食べられるものは食べましょう。

廃天ぷら油を飼料原料とすることで、諸外国からの穀物輸入が低減するならダブルの効果である。ここのところの円安で、畜産業も飼料の高騰に苦しんでいるところ。より積極的に飼料原料に活用できる方策を国も地域行政も考えてほしい。

(量的に、質的に)食べられないなら、仕方がないので何かの原料に出来ませんか?

それが石鹸原料であり、脂肪酸用油脂はグリセリンなど幅広い用途に使われる。これが、化石資源から作られるのではなく、天然の食用オイルから作られるのだから、使用するユーザも安心です。

それでも余るなら、燃料化もいいですね。

まずは、年間40万トン発生しているとされる廃天ぷら油が、どこに点在しているかをまとめること。地域ごとに、どこに集約化したら得策か、既存回収事業者、再利用する飼料製造事業者、脂肪酸用油脂等化成品事業者をマッピングし、それをマッチングするのが国であり地方行政の仕事。場合によっては、それぞれの事業者により近い地域に事業集約をし産業再構築することだってできる。

日本の高度経済成長期は、凄かった!

日本の高度経済成長期は、港湾部の埋立が広がり産業誘致もされ国も地方行政も民間も一体となって経済成長を目指していった。国や地方行政は、民間企業を一本釣りし、ここにこの企業と連携して進出しないか?そのための支援は国に要請して獲得してくるので、納税で地域活性に寄与し貢献してほしい!一緒にやろうじゃないか!

そんなふうに日本の高度経済成長は、ワッショ!ワッショ!とやってきた。しかし、それが行きすぎたのがバブル時代で、日本全体の底上げと地域活性、そしてもちろん企業の事業拡大を目指してワッショ!ワッショ!やってきたのが、いつの間にかそれを個人の懐に、あるいは自社だけの事業拡大を期待して癒着してしまったのが、1980年台のバブルであった。

その後、行政も企業もお互いの接点を遠慮して社会全体が萎縮してしまった。

でも、そろそろ今一度ワッショ!ワッショ!とやるべき時期ではないか?

民間事業者に任せるだけでは、それぞれの事業者の今持つ余力でしか拡大はしていかない。難しい案件より、より簡便で効果の高い案件が先行するだろう。地域で一体となり産業再構築するような、時間も労力もかかることは誰もが出来ることではない。BDF、SAF、発電と色々試行錯誤はするけれど、産業化され地域に根ざしていかねばいっときの取り組みだけに終わってしまうかもしれない。ましてや、ここに中小零細企業は置いてけぼりをくらうばかり。

ここまで見てきたように廃天ぷら油は、なんだか引く手数多になってきている。以前は、飲食店は引取り料を払っていたのに、無料でも取りにきてくれるという状況。飲食店側は嬉しい現象だろうけれど、これまでの流通基盤はこれでは壊れてしまうだろう。

単に民間活力に任せて動かしていいもの、そうでないものがある。

今は、無料で引き取ってくれるけど、SAFブームが終わったらどうするんだろう?また有料になりますけど、飲食業界は困るだろう。

だからこそ、国も地域行政も一体となってしっかり設計しなきゃいけない。
その設計段階に民間活力を活用するのもアリ。

僅か年間40万トンの廃天ぷら油だけ取ってもこんな状況だ。
2050カーボンニュートラルを目指すには、掛け声だけではダメだ。
もっと、しっかりした設計図が必要だ。

そのためには、国で絵を描くだけじゃなく地域の実態を反映したそれぞれの産業再構築までを含めた絵を描き切らねばならないよなぁと思いつつ、この廃天ぷら油獲得合戦の様相を垣間見ました。飲食店含めて大変なことにならないことを祈ります。

今日はここまで。



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