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西九州新幹線一番列車に乗る

はじめに

 2022年9月23日、西九州新幹線が武雄温泉~長崎間で部分開業した。開業初日の一番列車に乗車したので、その模様をお伝えする。

1.自由席狙いで並ぶところから

 西九州新幹線の開業日から遡ること、1ヶ月前、西九州新幹線の特急券の発売日、ものの数分で指定席は完売となり、僕はそのきっぷを手に入れることに失敗した。その後、インターネットの予約サイトで一番列車となるかもめ2号の特急券を取ることはできたが、諫早から武雄温泉までの開業区間の一部だけであった。前日夜まで空席が発生するのを待ったが、結局空きが出なかったので長崎から諫早までの区間は自由席を利用することにしたのだった。新幹線はラッチ内乗り継ぎを利用すれば通しの料金が適用されるが、今回はマルスに返している間に他の客に押さえられてしまうリスクを考えて、別々に用意することにした。

 といういきさつもあって、あさ4時に長崎駅へと向かった。前夜、長崎駅向かいのホテルに泊まった。2階フロントからデッキに出られ、20メートルほど進めば西口(いなさ口)に出る。既に多くの人が集まっていた。JR九州の社員さんに聞けば、かもめ2号の自由席の待機列はかもめ口、則ち東口だという。改札口前のコンコースには既に多くの客らが並んでいた。彼らを横目に少し足早に列の最後尾へと急ぐ。列の最後尾は、かもめ口から駅の外に出て高架に沿って南側へといった先にあった。JR九州の社員さんが「最後尾」と書かれたプラカードを掲げていた。

その社員さんにかもめ2号に乗れそうかどうか聞いてみると、「微妙ですね。何とも言えません」とのこと。それからも、僕の後ろには次々と列が伸びていく。

▲ 待機列から改札内を眺める

 4時半になってJR九州の社員さんが回ってきて、かもめ2号の整理券を配った。長崎からの自由席特急券を確認した上での配布である。僕は、長崎から諫早までの自由席特急券と諫早から武雄温泉までのかもめ2号の特急券、乗車券を見せた。

▲ 入場整理券。180番であった

 かくして、西九州新幹線の一番列車に乗車できることとなった。

いよいよ改札を抜けて

  5時40分、列が動き出した。先頭から徐々に改札口へと向かう。改札口を通り、セレモニーをしているところを後ろから回り込むようにして、かもめ2号の待つ14番線ホームへと続くエスカレーターに乗る。エスカレーターを上がりきると、右側に真っ白な真新しい車体のかもめ2号が入線していた。まだ扉は閉められたままで、車内への誘導は始まっていないので、ホームは自由席の乗車を待つ客らで混雑ぎみである。車両を見ると、青地に「かもめ2」の表示が見える。

▲ 長崎駅の駅名標。新幹線用なので次駅が「諫早」である

 西九州新幹線かもめ号は、全列車がN700S系8000番台6両編成で、全車普通車のモノクラス編成である。モノクラス編成ではあるが、指定席と自由席では座席配置が異なる。長崎方の3両、1号車~3号車が指定席車両で、座席配置は通路を挟んで両側に2列ずつとなっているのに対して、武雄温泉方の3両、4号車~6号車は自由席車両で通路を挟んで3列席と2列席の配置となっている。東海道・山陽新幹線の普通車の座席配置となるのは4号車~6号車の自由席車両である。なお、下り・長崎行き基準では進行方向左の窓側がA席、右の窓側がE席(指定席車両ではD席)となる。したがって、海側はE席(D席)である。

 6時07分、乗車が始まった。僕は、可能であれば、E席に着きたかったが、乗車口からの列に並ぶ人の数を見ると、E席だけでなくA席も怪しい。かくして、4号車の後部乗降口から客室内へと入る。新車特有の匂いが感じられる。あっという間に窓側が埋まり、案の定、僕は通路側に収まるのであった。

かもめ2号長崎駅出発

6時17分、ホームでの出発セレモニーが終わり、長濱ねるさんの合図とともに警笛が鳴り、かもめ2号は静かに長崎駅を出発した。

▲ かもめ2号4号車車内

 夜が明けたばかりの長崎市内は山に挟まれている地形の関係でまだ薄明かるい。車内放送で車掌さんが開業の案内を放送する。初日、しかも一番列車ならではである。国道202号、宝町電停付近をオーバーパスするとすぐにトンネルへと入った。その後一旦、トンネルから出て国道34号を越えた後、トンネルを2つ抜ければ諫早である。所要時間は僅かに8分である。隣に座っていた諫早に住む家族連れの方と一緒に「早かった」と驚いた。在来線時代の特急かもめ号であれば19分であるから、10分以上の短縮である。諫早駅では、新大村駅を6時20分に出発したかもめ101号とすれ違った。

3号車の指定席車両へ移動

 諫早からは3号車の指定席車両へと移動する。前述の通り、自由席車両とは異なり、通路を挟んで両側に2列ずつの座席配置である。その上、シートの形状も背面に木をあしらい、座席のクッションも和モダンなデザインである。したがって自由席のシートとは異なり、ひとりが占有できるスペースにも余裕があり、非常にゆったりとしている。九州新幹線800系で採用された水戸岡鋭治氏のデザインしたシートと同様のものである。

▲ 新大村へと向かう

新大村、嬉野温泉と

 6時26分、諫早を出るとトンネルを出たり入ったりしながら、一際長めのトンネルを抜けると、大村の街中を窓外に見れた。6時32分、新大村駅に到着である。所要時間はさらに短く6分である。

僕が取れた指定はA席である。したがって、山側になるわけだが、トンネルの多さもあって駅の前後でしか車窓を楽しめない。ここ最近建設された整備新幹線に見られる傾向で、駅以外の区間はトンネルを掘ることでルートの短縮化、用地買収のコストの低廉化を図ることができるわけだ。
 
 1分停車し、6時33分に新大村駅を出発した。ホームには多くの見送り客が手を振って送り出す。大村の街を抜けてまたトンネルである。そのトンネルを抜ければ嬉野温泉駅である。温泉街の北東、少し離れた場所に位置するが、十分に徒歩圏内である。西九州新幹線ができるまでは、JR駅からバスでの移動だったわけだから、随分と便利になったといえるだろう。なお、嬉野温泉駅には6時41分に到着。新大村駅からは8分の所要時間である。

終点武雄温泉へ、そして在来線特急に乗り換えてみた

 6時42分に嬉野温泉を出ると、6分で武雄温泉である。武雄温泉は博多方面の在来線特急リレーかもめ号に同一ホームで乗り換えることが可能だ。これは、かつて九州新幹線が新八代~鹿児島中央間で部分開業したときの新八代駅での乗り換えと同様の形式である。JR九州では部分開業した新幹線と博多とをリレーする在来線特急列車とを運転形式上一体として扱うようで、このかもめ2号も実際の運転は武雄温泉までだが行き先は「博多」と表示されている。

▲ 武雄温泉に到着した

 6時48分、武雄温泉に到着。長崎から69.6km(営業キロベース、実距離は66km) 、所要時間31分の旅であった。ここで全員が下車をする。ホームにはメディアの人たちが大きなカメラで、降りてくる乗客を追っている。かもめ2号は、この後、折り返しかもめ1号となって長崎へと戻る。既に行き先を示す車両側面のLEDには赤地に「かもめ1」の表示が出ている。

 数分後、向かいのホームにオレンジ色した車両が入線した。佐世保からの特急みどり2号だが、同時にリレーかもめ2号の愛称も持つ。僕は、思うところがあって、それに乗り込んだ。

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