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週末、あのきっぷで京都に行った?

えーっと、ちょっと待って、ちょっと待って。うわー……。ふう、いったん落ち着いて。もう一回、よく探してみよう……。あー、やっぱり、ない。

一瞬のうちに、頭の中をこんな言葉がぐるぐると駆けめぐっていた。それもそのはずで、わたしはさっき買ったばっかりの新幹線の乗車券・特急券をなくしてしまったからだった。

先週の金曜日、二時間くらい仕事を早く上がらせてもらって、わたしは大阪の実家へ向かうことになっていた。

13日の土曜日に、父の相続に関する手続きの相談を、行政書士の方をまじえて行うことになっていた。相続税を払わなくてもいいくらいの金額しか、父の遺産はない。土地や家屋の名義変更とか、ちょっとややこしそうな問題がいくつかあったので、一度相談してみようと家族で決めていた。

新幹線に乗るときは、よほどのことがない限り、当日にきっぷを購入している。

直前まで何があるか分からないし、もしかしたら、その日にのれない事情ができることも考えられる。そのため、新幹線に乗る当日、横浜駅の券売機で新幹線の切符を購入する。横浜から新横浜まではたいした時間はかからないけれど、それでも遅延やらなんやらに巻き込まれるといけないので、自由席のきっぷ。12420円也。

横浜から新横浜まで、新幹線の乗車券で行ける。(どういうこと? と思う方は以下の記事を参考にしてみてください。ちょっとだけ、乗車料金を節約できます)

改札に、きっぷを投入して、横浜駅構内に入る。きっぷは右手でつかんで、コートの右ポケットに滑り込ませた。

それがダメだった。

電車がホームにきそうだと、慌ててきっぷをポケットに滑り込ませた。普段ならば、なくさないように、がま口の名刺入れに入れるのに。

右手をコートのポケットにいれると、きっぷの角が指先にあたる。痛くはないけれど、きっぷの存在を感じていた。

カバンのポケットに入れていたスマホを取り出して、少しいじったあとに、無意識にコートの右ポケットに入れていた。そしておそらく、次にスマホを取り出した時に、きっぷはポケットからするりとこぼれ落ちてしまったのだろう。JR横浜駅から、新横浜の駅に着く、どの地点で落としてしまったのかも分からなかった。

新横浜の駅に着いたとき、きっぷを取り出そうしてコートの右ポケットに手を入れてみる。さっき感じた、きっぷの角の存在感はない。ポケットは空だった。

あれ? 左ポケットに入れたっけ? はたまた、ズボンのポケットに入れたんだったかな。(ときどき、後ろポケットにスマホなどを入れるクセがある)カバンのミニポケットに入れてないよね?

新横浜で電車を降りて、新幹線の乗り場へと移動しながら、身体のあちこちや、カバンの中をごそごそと探りながら、歩いていく。

やっぱり、きっぷはどこにもなかった。

落としてしまったんだと認めたくないけれど、認めざるを得ない。新幹線のきっぷを使って、改札に入ってるので、どうしていいか分からずみどりの窓口にいる駅員さんに正直に話した。

すると、駅員さんは「もう一度きっぷは買ってもらわなくっちゃいけません。ただ、まったく同じ内容で再購入した場合、この後に紛失したと思っていたきっぷがでてきたら、手数料だけ払っていただきますが、換金できます。あきらめずに探してみてください。後からひょっこり出てくる可能性も結構あるので」と言ってくれた。

きっぷ自体は再購入が必要だけれど、もしも見つかったなら、12000円は戻ってくる可能性があるということだ。そうかー。初めて知った。

再購入したきっぷには、スタンプが押されていた。「改札を機械で通らないで、駅員に見せてください。京都で降りるときも、駅員に見せてください」と注意してくれた。「そのきっぷが、必要になります。払い戻し期限は一年間です」駅員さんにそう言われ、わたしは、新幹線の乗り場に向かった。

実家での用事をすませ、横浜の警察署に遺失物の届け出をした。担当してくれた警察官は「ああ、そのミスは痛いですね」と、わたしを慰めてくれたものの「チケットなんかは、換金できるから、拾った人によっては、うーん」と語尾を濁していたけれど、戻ってこない可能性が高そうだと思案していた。

「改札は通ったので、穴が開いているか、何かしら処理されてるから、未使用じゃないし、売れないと思うんです」わたしがそういうと「ああ、そうか、じゃあ、京都に旅行にいくしか、使い道がないのかなあ?」警官はそういって思案していた。

もしも、きっぷを拾った人が「そうだ、京都いこう」と、その切符を活用したのなら、わたしはだれかに京都旅行をプレゼントしたのだ。

名前を書いているものでもないし、戻ってくる気配もないきっぷ。財布やスマホをなくしたわけじゃないから、良かったと、思いたい。




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