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『スジナシシアターvol.13 笑福亭鶴瓶×渡辺直美』【#まどか観劇記録2020 56/60】


筋書きなし、アドリブとアドリブがぶつかり合う舞台

笑福亭鶴瓶さんがゲストひとりを迎え、二人で作り上げるスジナシシアター
台本(スジ)もなければ、事前の打合せもないという即興芝居。
現時点でvol.13を数えるこちらの企画の渡辺直美さんがゲストの回を拝見しました。


本当にアドリブのみ

与えられるのは舞台セットと効果音のみ。
効果音については、10種類程度の効果音が用意され、それをキャスト二人とは別の人物(今回は4月期のTBSドラマプロデューサー新井順子さん)がその人のタイミングで鳴らします。

お互いから何がでてくるかもわからないし、どんな音がなるかもわからない緊張の中で生まれるお話は一体どんなものになるのでしょうか。

今回の舞台はさびれた遊園地でした。
旅行鞄を持って遊園地を訪れる渡辺直美さんと幽霊の扮装をした鶴瓶さん。
この時点で何が起きるのやらと観客側は楽しみで仕方がありません。

どのようなお話しになったかは、今からでも視聴できるParavi(お試し期間は無料。noteの最後にリンクを案内しています)でご覧いただきたいのですが、最後はお二人ともお化けでした。そのきっかけとなったシーンについては、よく思いついたな、というのと、よくその表情で受け止めたな、という思いで鳥肌が立ったのを覚えています。

お二人の表情を見ると、相手の反応を見ているときの真剣なこと。次は何が出てくるのかを確かめて、それにどう対応するのかということを瞬時に判断しなければいけないからでしょう。その張り詰めた緊張感が劇場に広がって、これは正真正銘アドリブだけなのだとピリピリした空気に身を置きながら関心するばかりでした。

そんな過酷(?)な状況にもかかわらず、鶴瓶さんも渡辺さんも見事なストーリーを紡いでおられ、プロの創造力と瞬発力、反射神経など、すべてに脱帽です。


検証タイム

この企画のもうひとつの目玉は、作り上げられた作品をその場で振り返る検証タイムがあることです。あの時こう思っていたとか、どういう意図で動いたかなどを映像を振り返りながらご本人の口から聞けるというわくわくタイムです。

今回の作品は、渡辺直美さんのある一言で物語が大きく動いたのですが、実はその直前の動作の時まで何を言うか決まっていなかったとか、その瞬間に鳴った効果音がドンピシャだった理由など、何かが少しでも違っていたら全く別の話になっていただろうことに驚き、観たばかりのお話を別の面からも楽しめるという面白さがありました。

そして、とっさに対応しなければいけないことが多いことから、作りこんだ役を演じるのはなかなか難しく、ご本人の普段の人柄や知識が表れるのだなと思いました。そんなアドリブの中に渡辺さんのネタをいれこむ鶴瓶さんの愛たるや。

それにしても、鶴瓶さんと渡辺さんのお二人も、効果音を担当された新井さんもセンスがすごい。ここで盛り上げるのだという空気を逃さない感覚の鋭さでこの作品が出来上がったのだなと感心します。


テレビ放送が決まっている企画として

現在はこのスジナシシアターの渡辺直美さんの回はParaviでしか観ることができないのですが、3月初旬にはテレビ放送もされています。

元々テレビの企画だったということもあるのですが、チケットの売れ行きすら苦戦している作品の多いエンタメ業界で、公演を無事に行うことができるばかりかテレビ放送までされるというのはとてもすごいことだと思います。しかもスジナシなので面白くなるかの保証もないのに!
それだけ鶴瓶さんが信頼されているという素晴らしさと同時に、テレビ放送まで決まっている企画をそれに見合う作品に作り上げなければいけないプレッシャーはいかばかりかと想像するだけで胃が痛くなります。芸歴50年を迎えられる鶴瓶さんのすごさを思い知った気分です。

余談ですが、このスジナシシアターvol.3は渡辺直美さんの他、山崎育三郎さんと中井貴一さんの回もあり、3日連続でそれぞれの即興芝居というスケジュールでした。三者に対応する鶴瓶さんも、3日連続でセットをがらりと組み替える製作陣もすごいですね。。。


***視聴情報***

そんな鶴瓶さんと渡辺直美さんのスジナシアターはこちらのサイトで見ることができます。↓

渡辺さんの回だけでなく、他のゲストの回もすべて観られるようになっているので、それぞれの方ともまた別のその時だけのお話しが作られていると思いますので合わせてごらんいただけたらと思います。ゲストみなさま錚々たる顔ぶれです。


おすすめの作品などを教えていただけるととてもうれしいです。