見出し画像

早乙女太一『祈り人』【#まどか観劇記録2020 58/60】

30分なのに見ごたえたっぷりです。
早乙女太一さんが松田美由紀さんと共同で監督した映像作品で、世界で活躍する日本人アーティストと早乙女太一さんの共演です。

テーマは「祈り」
そして「日本」「自然」

短いのですがそれぞれの曲ごとの感想を書いていきたいと思います。


1曲目:with清水舞手

まずもって登場から美しいです。
年月を経た岩もしくは古木に一筋の光が射し、そこから新しい生命が生まれるような。神々しさすら感じます。

着物の早乙女太一さんとシフォンのような素材でできた衣装を着た清水舞手さん。

着物を着てもこれほどに自由に動けることを早乙女太一さんを見て初めて知りました。お二人の強く流れるような美しい舞。同じ動きを同じ速さで舞っていても、衣装の違いで描かれる軌跡や見えるものが全く違っており、その対比と調和まで美しいのです。裾さばきが流麗でした。

風が起こり桜が舞う。
激しいのに優美。

舞台ではなかなか見ることのできない黒目の演技までつぶさに見ることができるという映像ならではの表現美も加わり、早乙女太一さんのプロデュース力の高さを感じました。


2曲目:TRIQSTAR

(お顔が見えなかったので定かでないのですが)

フードを目深にかぶった3人のダンサーが水音と最低限の音色だけで舞う。
上から射しこみ、床に模様を描く光によってあたかも海底のような気がしてきます。

ダンスジャンルに詳しくないのですが、今まではなんとなくコンテンポラリー系のダンスは難しいなと思ってしまっていたのを、この作品はなんだか見入ってしまいました。派手な動きもわかりやすいストーリーもないのに、なぜかずっと見ていたくなる。海の波をずっと見ていられるような感覚でした。

3曲目:with SARO、木乃下真市

水盤の真ん中に立つ早乙女太一さん。
津軽三味線の音色に合わせて、水面を揺らします。
いつの間にかタップダンサーのSAROさんも加わり、二人で水しぶきをあげて舞うのですが、水面に描かれる波紋までも美しい。

人が何かを美しいと思うのは一体なにをもって判断しているのでしょうか。
そう考えてしまうほどすべてが美しく思えて、全てが心地よいのです。


4曲目:with ヒダノ修一

早乙女太一さんの殺陣まで堪能できる一曲。
これは映像の取り方がまた素晴らしくて、様々に置かれた太鼓をヒダノ修一さんがあちらをたたき、こちらをたたきするのですが、その途中で画角を変える瞬間に息をのみました。

大太鼓の面の丸が満月に見えました。
満月を背に刀を振り被った早乙女太一さんの美しさ。天才。


ラスト:全員

そして最も心に残ったのが女性邦楽器演奏家ユニットRin'も加わった全員での舞踏と演奏。

今まで私は祈りといえば厳粛で静謐な空間で身も心も研ぎ澄まして行われるイメージがありました。当然口は真一文字に引き結んだ真剣な顔で。
しかし、この最後の曲では全員が生き生きと笑顔でパフォーマンスをされていたことが印象的でした。心の底から楽しそうな笑顔に祈りの枠組みが外れた気持ちがしました。こんなにも心が晴れやかであること。喜びは広がっていくこと。

それぞれの方がご自身の最高の祈りを表現していらっしゃいました。一見好き勝手に表現しているように見えて秩序があり、爆発的な熱を持ちつつ、平らかである。文句なしに格好良いのです。(そして細かいですが早乙女太一さんが扇を動かす曲線が好き)

どの曲も、どこかに日本の自然を感じさせ、我々日本人の心の深いところにある何かと共鳴する作品でした。

場面場面で語られる早乙女太一さんの言葉も、画面に映し出される書の美しさも、全てが完璧でした。この3月は日本人でよかったと思わせてくれる作品に恵まれたと思います。

**視聴情報**

早乙女太一さんプロデュース『祈り人』。
3月31日までにチケットを購入すれば4月末まで見ることができます。何回でも、毎日でも観たい作品。本当に素晴らしかったです。

下記、文化芸術収益力強化事業xYAMAHAのサイトから早乙女太一さん『祈り人』のタブを見つけていただき、リンクに飛んでVimeoに登録すれば購入可能です。


おすすめの作品などを教えていただけるととてもうれしいです。