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サボテンのこと

夏の終わりのことを書こうと思って、冬の始まりになってしまった。
15年近くいっしょにいるサボテンの花が咲いた。

一人暮らしの学生時代、新宿のミロードにあった花屋で買ったサボテン。
特に何をしたわけでもない。ヒョロヒョロの枯れかけになっちゃうこともあったけど、おとなになってサボテンの好む土を与えるようになってから
5年くらいでグングン成長した。

これまで、花は咲かなかった。けれど成長するにつれ子株がポコポコ増続け、子株たちもグングン成長し、どれが元のサボテンだったかわからないくらいに大きくなった。今年も子株が増え続けてちょっと困りかけているくらい。

花が咲かなくても、「子株を増やす」種類なんだと思い込んだままずっとなんとなく一緒にいた。水やりも適当で、家にねこがきてからはねこがいじり倒すので家の中に置いておけなくなったりして、サボテンとはちょっと距離ができた。
正直、放置気味だった。

ある朝、窓を開けたら見たことのない草がサボテンについていた。
雑草が伸びたのかと目をやると、大輪の花が咲いていた。

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おまえ、こんなキレイな花を咲かせるのか。
15年見せたことのない側面に言葉を失った。


植物に感情を考えるのは現実的ではないだろう。水分や肥料や日光量が、科学的な条件が揃ったからただ咲いたのかもしれない。でも、このタイミングで長年見せたことのない顔をぼくに見せるサボテンの意図を考えてしまう。

今まで調べたことのない花言葉を調べてみた。

「燃える心」「偉大」「暖かい心」「枯れない愛」…
どうしたサボテン。弱っている今のぼくに、そのメッセージたちはとてもまぶしいくらいに心強い。

遅咲きこそ大輪の花。このサボテンがいてよかった。一緒に生きれてよかった。

「サボテンの花」という単語は、むかしの歌の名前になっているが、歌詞を読んだらあれは冬の話じゃないか。冬にサボテンの花が咲くのかな?という野暮な疑問を持ちながら今年の夏は終わった。
とんでもない台風にも耐えながら、サボテンはまた生きている。

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