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【19-20 UCL マッチレビュー】Man City vs Real Madrid ~敗北を知ったジダン~

 19-20シーズンのCLラウンド16の2nd legは、2-1でシティがリードの状態ではじまった。対するマドリーは最低でも2点は取らねばならず、試合前の予想では、マドリーが積極的にプレーし、ゴールを奪いに来るだろうと予想されていた。しかし結果は2-1でシティが勝利し、マドリーは大会を去った。ペップのチームはいかにしてゲームを攻略したのか、その様子を振り返ってみよう。

スタメン

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 マドリーは左WGにアザールを、右WGにロドリゴを起用した。アザールは怪我明けでコンディションが十分とされておらず、またロドリゴはシーズン前半にブレイクしたものの直近の活躍はそれほどでもなかった。それ以外のメンバーは予想を大きく外れることは無く、「いつも通り」の先発。ただしマドリーはセルヒオ・ラモスが出場停止、シティはアグエロが怪我、Bメンディが出場停止。

マドリーのビルドアップ

 試合が始まると、マドリーはクルトワとCBでボールを持ってビルドアップを試みた。ヴァランを中心に配球し、シティにボールを奪わせないぞ! という意図が見てとれた。

 これに対して、ボールポゼッションヤクザことシティは、ハイプレスでマドリーをはめて連携を切る。WGのジェズスとスターリングが相手SBを消しながら、ボール持っている相手CBに詰め寄る。さらに真ん中のフォーデンがカゼミロを消す。クロースとモドリッチにはそれぞれデブライネとギュンドアンが付いて、この二人にボールを渡さないように警備した。このハイプレスは、相手7人を5人で消すことができるから、ひじょうにお得だといえる。
 試合開始9分には、マドリーのCBとクルトワが横一列になったところをシティの3トップが狙ってプレスして、ヴァランのパスコースをふさいでゴールを得た。ヴァランはここから自信を失い、後のプレーでもミスをし始めた。ハイプレスは相手にトラウマを植え付けることができる。

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シティのビルドアップ

 シティが先制して余裕が生まれると、シティのボール保持の時間が増えだした。エデルソンがボールを持つと、ベンゼマとクロースがそれぞれフェルナンジーニョとラポルトに付いて、この2人を消す。この時点でアンカーのロドリはだいぶフリーであるうえ、デブライネもクロースの背後でフリーになる。カゼミロはこのフリーの選手を2人も観なければならず、どっちつかずのポジションを取っていた。
 エデルソンは当然ここを狙う。特にデブライネは最もスペースを与えてはいけない存在であり、フリーの彼は必ず相手の急所を突く。だから、このようなマドリーの牽制は悪手だったと言わざるを得ない。ボールを奪いに行くにしてはひじょうに中途半端だった。

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後半のマドリーの自爆

 苦しいながらもベンゼマのゴールで同点に追いつき、1-1で後半を迎えたマドリーは、前半に比べるとボールが持てるようになった。モドリッチがビルドアップをサポートし、彼のフェイントや走りに助けられながらボールを前進した。この現象は、シティがライン間を閉じて、アザールのスペースを消しにいったことでハイプレスが比較的弱まったのも影響している。
 しかし後半10分頃からギュンドアンがモドリッチの背後からプレスし始め、マドリーのボール前進にミスが出始めた。ここから再びシティが主導権を握るようになる。

 最低でも点を取る必要があるマドリーは、効果的な選手交代をするべきだった。しかし実際は、ジダンは61分にロドリゴをアセンシオに代えただけで、より芯を食った改善には及ばなかった。ジダンはただクルトワのパラドンを見つめ、チームを鼓舞する拍手を鳴らすだけ。68分にジェズスのゴールが決まってからも、一向に選手を代える気配がない。その様子を見つめるセルヒオ・ラモスの表情には焦りが見えた。
 特にアザールは、後半にライン間を消されてから試合の蚊帳の外で、左サイドでボールを持ってもウォーカーに仕掛ける勇気もなく、完全に行方不明であった。なぜジダンがスピードのあるビニシウスを投入しなかったのか、理解に苦しむ。とっくにアザールの魔法は消えていたはずだ。
 結局ジダンは83分に3バックにして賭けに出たが、いかんせん遅すぎた。シティはボールを保持して試合を殺し、そのまま試合は終了した。マドリーに残ったのは失望だった。スペイン王者マドリーが、負けるべくして負けたのだ。

マドリーの将来

 19-20シーズンは残念な敗北で終わったが、それでも時間は進む。マドリーは来シーズンに備えなければならない。
 19-20シーズンのマドリーの移籍市場は華やかだった。アザール、メンディ、ミリトン、久保を獲得し、シーズンの展望は晴れ渡っていた。しかしプレシーズンにはアトレティコに7失点を喫し、その守備の脆弱性が不安視された。だがジダンは堅固なチーム作りを進め、浮き沈みはあれど最後に無類の強さでリーガを制覇した。クリスティアーノ後の悪夢のような18-19シーズンの暗黒を払拭し、ストライカー依存型のチームからの脱却を果たした。このことはジダン監督の大きな成果であり、彼の名将たるゆえんだ。

 一方で、マドリーのようなチームは欧州カップ戦でも結果を出すことを期待される。このことを考慮すると今季のCLはあまりにお粗末な出来で、これはジダンの采配にも大きな責任がある。好調だったビニシウスよりもアザールを優先したのは、現状のメンバーを十分に信頼していないからなのだろうか? だとすれば、今夏の移籍市場では選手の断捨離が必要になってくる。

 まず優先の放出候補はベイル、ハメス、ブライム、イスコだろう。前3者は戦力としてほとんど機能していない。特にベイルは年俸がべらぼうに高いうえチームになじめておらず、メディアの批判の的となっている。彼の放出は最優先事項だが、この状況下で買い手が見つかるとは考えにくい。クリバリと交換でナポリに売りつけてしまうのはどうだろうか。
 イスコはユベントスのピルロ監督が欲しがっており、ユベントスは高値で買ってくれそうな気配がする。抜けたイスコの穴はウーデゴーアをレンタルバックして埋めよう。

 次に、獲得候補はどうだろう。純粋な点取り屋と右SBの控え、またセルヒオ・ラモスの後釜が欲しいところだ。ストライカーに関してはヨビッチとマリアーノの復活を願うとして、カルバハルのバックアッパーは急務だろう。オドリオソラは当てにならないし、ナチョは右SBが本業ではない。かといってバスケスのラテラルは悪夢だ。そこで個人的なおすすめはマジョルカのポソか、アーセナルのメイトランド=ナイルズだ。マジョルカは降格組なので選手を安く売ってくれるだろうし、ナイルズは対人能力が高くいろいろなポジションをこなせる割にアーセナルが売却リストに入れている。自分がマドリーのSDだったら、間違いなく彼を獲る。
 しかし、移籍市場は簡単ではない。現実的にはベイルはまだ居候を続けるだろうし、ハメスも不満分子のままだろう。来季のマドリーも、厳しいものになるだろう。

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