②レアルマドリードvsバレンシア

色々あった試合でした。

マドリーは4-3-1-2 バレンシアは4-4-2
 マドリーは復帰明けのベリンガムを軸としたいわゆるベリンガムシステムを採用。CBにはナチョではなくチュアメニを起用。他はお馴染みのメンツ。
 バレンシアもいつも通りの4-4-2を採用。怪我人ゼロの万全な状態でマドリーを迎え撃つ。


 マドリーもバレンシアも、バレンシアの得点の前後で形を変更しているので、まずは得点前の形から。

 ボール保持のマドリーとボール非保持のバレンシアという構図になった。バレンシアは4-4-2のブロックを形成。クロースが下りてくるとバレンシアの2トップは3枚を見なければならないので数的不利になる。しかし、バレンシアはこれを許容。2枚で3枚を見る形をとった。この時、バレンシアの2トップであるウーゴドゥーロとヤレムチュクはある工夫をしていた。それは、プレッシング強度の調整である。

 ウーゴドゥーロはリュディガーにそこまで厳しくプレスをかけなかったのに対し、ヤレムチュクはチュアメニに、また両選手はクロースに厳しくプレスをかけていた。これはおそらくリュディガーは他の2人と比べて配球能力が劣るので、厳しくいかなくても対処可能だという判断だと考えている。リュディガーの得意である対角へのロングパスもロドリゴがガヤに捕まっていて蹴れない。そんな理由からリュディガーにはあまり厳しく行かなかった。そうすることで体力を温存しながらも効果的なプレスをかけていった。

 そんな感じで上手く守られたマドリーだったが、強度を調整しているとはいえ2トップには負荷をかけることができているし、ハイプレスもキーパーを使いながらいなせているから特に問題ない。立ち上がりとしては悪くない出来だと個人的には思っている。気になるのはベリンガムのミスが目立つところと、メンディが効果的に上がれないところ、あとロドリゴがガヤに勝てないところくらい。ベリンガムが調子を取り戻していければいずれ状況はよくなるだろうと思っていた。

そんな中での2失点。非常に痛い失点だった。1失点目はバルベルデの甘いクリアからボールを拾われて右サイドをえぐられて失点。2失点目はカルバハルのパスミスをかっさらわれて失点。どちらも自分たちのミスからの失点なのが悔しい。

この点を契機にお互いが形を変える。


 バレンシアは押し込まれた時2トップを下げてブロックを形成。しかしただのドン引きサッカーではなくて、マドリーのビルドアップにはしっかりとプレスをかけつつ、押し込まれた時には2トップがブロック手前まで戻ってくるという形。目的はもちろん前半無失点。

 一方のマドリーはカマヴィンガとクロースのポジションチェンジを行った。意図としてはクロースにもっとボールを触らせるため。プレスをかけづらい位置にクロースを配置して、クロースからの打開を目指した。

 試合としては、若干マドリー優勢になったと思う。ブロックを形成したことでサイドにスペースができ、クロースからカルバハルへのサイドチェンジが通るようになった。また、先ほども言った通りバレンシアはハイプレスも行っていたので、プレスがいなされたときサイドのクロースへ2トップのプレスが間に合わなくなり、制限がかからない。そうなるとフランペレスが出ていきたいところだが、何故か左に流れてくるロドリゴが気になる。食いつけばロドリゴにパスが出されるので食いつけない。

そんな感じでクロースから打開できる雰囲気が出てき始める。

 そして49分、前半終了間際にヴィニシウスが得点し1点差に縮めることができた。得点シーンはカルバハルがポケットに侵入し折り返しにヴィニシウスという形だった。このシーンでカノスとガヤは両方ともカルバハルへスルーパスをだしたバルベルデにプレスをかけている。マドリーの度重なるサイドチェンジが連携ミスを誘発した。いわば狙い通りの連携ミスである。

 そして前半終了。結果意外は割と満足している。ただ、ベリンガムの調子がすこぶる悪いのが心配。後半は選手交代がカギを握りそう。


後半、バレンシアはそのままの4-4-2で変更はなし。前半に困っていたフランペレスの優先順位は中、次に外、最後にクロースぐらいの雰囲気だった。つまり、左に落ちるクロースにはあまり制限はかけないが、中央は通さないということである。

 一方のマドリーは、ベリンガムを左SHにおいた4-4-2に変更した。そして前半のロドリゴの役割をベリンガムに引き継ぎ。理由としては左サイドの守備強化だと思う。

 両者このように入った後半だったが、立ち上がり10分はマドリー優勢だった。左に配置されたベリンガムの存在が大きかった。どの選手を引き付けると誰がフリーになれるか、そういったことを常に考えて有効なポジションに立てる。やはりベリンガムは天才である。基本的にはベリンガムに対してハビゲラ、メンディに対してフランペレスという役割であったが、フランペレスはベリンガムがゲートに立っているとどうしても気になるのでメンディへの対応が遅れる。マドリーはそこで優位性を生み出し押し込めるようになった。ベリンガムの決定機はまさにその形からである。

 マドリーに試合が傾いてきたところでバレンシアは動く。56分、頑張ってプレスしていたヤレムチュクに代えてディエゴロペス、カノスに代えてギジャモンを投入。ハビゲラを一列あげてベリンガム番をDFのギジャモンに変更。ディエゴロペスは左SHに入った。

 マドリーも動く。62分ロドリゴに代えてブラヒム、クロースに代えてモドリッチ。役割はそのまま引き継ぎ。

 フランペレスはギジャモンにベリンガムを任せてメンディへ強くプレスをかけるようになった。それによってメンディのところで優位性が出せなくなってきた。

 そして72分。両者同時交代。マドリーはメンディとカマヴィンガを下げてホセルとフランガルシアを投入。バレンシアはフランペレスとハビゲラを下げてピーテルとアマラー。

 そして85分、バルベルデに代えてナチョ。88分、負傷したディアカビに代わってエズカジャル。


 最終的にはこのような形になった。バレンシアは、選手は代えてもやることは代えない。押し込まれたら撤退、アタッキングサードではハイプレス。その姿勢を貫いた。

 一方のマドリーはホセルを中央に据えてクロス戦法。ヴィニシウスもサイドでなく中央におり、モスケラにちょっかいをだす担当。カルバハルはライン間に顔を出して大外のブラヒムと連携して崩す。ベリンガムもクロスのタイミングでは高い位置まで侵入。ワイドのフランガルシアとブラヒムでブロックを横に広げたい。こんな感じのごり押し戦法で挑む。

 実際に中央に人を集める戦術なので相手も中央に集まってくる。その注目を利用して中央への縦パスをホセルがワンタッチでサイドに展開。モドリッチからブラヒムへ流れ最後はヴィニシウスがヘディングでマドリーが追いつく。ヴィニシウスに対して上手く対応していたフルキエだったが、クロス対応は結構お粗末で選手を離してしまうところがある。バレンシアの2失点はどちらもクロスからのヴィニシウス。マドリーがフルキエの弱点を上手く突いた良い得点だと思う。

 このまま勢いづきたいマドリーだが、その後スコアは動かず試合終了。難所メスタージャは2-2のドローという結果で終わった。

 バレンシアは本当に手ごわかった。スタジアムの雰囲気もそうだが、チームの完成度が非常に高い。勢いづきたい時でも、逆に相手が勢いづいてきた時でも、雰囲気に流されずやることは変わらない(変わらなさ過ぎてレビューするところがないくらいに)。あくまでハイプレス・ローブロック。マドリー目線、ローブロック一辺倒だったらどんなに楽だったか。ルベンバラハは名将だと非常に感心した。

 一方のマドリーだが、選手が全体的に低調だったように感じる。クロースやバルベルデが珍しくパスミス、ベリンガムのところで収まらない、メスタージャの洗礼でヴィニシウスの萎縮など。勝ち点2を落とすのも無理はない。逆にこんなに選手のコンディションが悪くても的確な選手交代と戦術的修正で勝ち点1を拾えるアンチェロッティがすごい。そんな感想を持った試合だった。

 次はCLの2ndlegライプツィヒ戦。1stlegはアウェーで1-0で勝利しているがかなり苦しめられた。油断はできない強敵である。しかし、強豪レアルマドリードはこんなところで負けるわけにはいかないので、是非とも頑張ってほしい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?