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陰の者のたましいは八王子駅ビル一階の匂い

 補語です。普段は絵を描いています。
 さて、この度私は「推し香水」で有名なScentlyさんに依頼して自作キャラクターの香水を調香して頂きました。今回はその一部始終を書いていきたいと思います。

発注したキャラクター


雀児芳喜さん

 今回私が発注させて頂いたのは拙作漫画「わかってない!」の主人公、雀児芳喜(すずめご ほうき)さんです。8月15日生まれ、催眠能力者の17歳です。彼女がどのような人間かは以下の漫画を読むと手っ取り早いです。後半に集合体描写があるのでご注意下さい。

 さて、発注の際私が彼女をどのように形容したかと言いますと、以下の通りとなっています。

第一印象としては、端的に言えば「根暗」。無造作な容姿と不健康な雰囲気、目つきが悪く表情に乏しいため近寄り難い。
内面は非常に過敏な感性を持ち、さらに臆病かつ不器用。親しい人に対しても「どこまでの自己開示なら許されるのか」「何を言えばいいのか」などと延々と考え続け、ついには「私には過ぎた相手だ、私の事など忘れてほしい」と考え結果疎遠になってしまうタイプ。学校では孤立している。自己肯定感が低く「こんなに惨めな自分などいらない」と極端に自己否定的な考えに陥ることも少なくないが、臆病なために何一つ自分を変えるための策を講じる事ができず現状維持に甘んじている。

 一言で言えば「陰の者」です。「推し」というよりも好奇心から彼女を選びました。
 「普段使い優先」ではなく「概念優先」、セクシーさ(大人っぽさ)はゼロを選択しました。お金もない、胸もない、知識もなければ権利もない

実物が届く


イメージカラーは深緑とレモンイエロー

 頼んだのが3月18日、届いたのが4月1日です。所用期間は二週間程になりますね。送って頂いたレターが以下の通りになります。

 このメッセージは共有可能だそうですのでありがたく載せさせていただきました。私としては全体的に解釈一致という感じですね。調香師の方ならではの視点が興味深いです。過敏なのが魅力かどうかは議論の余地がありますが…
ちなみに書かれている香りの詳細をわかる範囲で調べてみた所、
トップ:グリーン(青葉の香り全般を意味する言葉らしい)
   ガルバナム(ミイラの防腐剤であったらしい)
   オー(これが一番わからない 水を意味する言葉ですが、控えめということ?)
ミドル:ピメントベリー(オールスパイスとも言うらしい 花言葉は「憐れみ」)
   ピオニー(芍薬 主な花言葉は「謙遜」ですが色によっては「怒り」を指すとも)
   バイオレット(すみれ 花言葉は「謙虚」)
ラスト:アンバー(お香などのような匂いを指すらしい)
   パチュリ(概ね解説の通り 花言葉は「隠蔽」)
   クリスタルムスク(??? 清潔感があるらしい)
だそうです。終生こちらに心を開く気のなさそうなデッキですね。解釈一致です。中間あたりにすみれ(彼女が歪んだ執着を向けている友人の名前でもある)が巣食っているのも高得点です。

嗅いでみる

ファーストインプレッション

 香水の事が何もわからないのでその辺にあった画用紙に振りかけて匂いを嗅いでみました。

えっ…

八王子駅ビル一階の匂い!?

 わかる人が限られたネタ失礼しました。ファーストインプレッションは「甘くて清潔感のある香り」です。化粧石鹸の匂いなどがそれに近いでしょうか?「概念優先」と書いた時点である程度すごいモノがくる可能性は覚悟していたのですが、予想に反して香水として無難な香りであると感じました。清潔感があるので色気ゼロの高校生の香りとしても納得がいく範囲です。バウムテストでありきたりな木を描きそう、もとい自己開示を避けて通り一遍の事しか言わない臆病な彼女の第一印象と考えれば…かなり…良いですね…
 しかし、嗅いでいるうちに喉が痛くなってくるような、少し引っかかりのある匂いがするのもまた事実でした。メッセージにあった「苦味のある香り」というのがそれに該当するのでしょうか?いくら取り繕っても隠せない陰の者のたましいを感じました。取り繕えば取り繕うほど「常人の下位互換」として却って異様さが際立つのが陰の者の常ですからね…

暫く置いてみた後

 香水の事が何もわからないのでこのような雑な扱いとなってしまいすみません。どう扱って良いのかわからず机に放置して小一時間程散歩に出掛けていました。
 
結果としては、甘さがなくなった、という感じでした。石鹸のような匂いなのですが、甘さがなくなった分攻撃性が増したような気がします。他人への卑屈な媚びへつらいがなくなったのでしょうか?ラストシーン付近のひがごとを喚く彼女のようではありますが、しかして香りとしては無難の域を出ないとも思いました。どんなに喚いてもその程度。彼女の卑小な人間性を感じさせますね。100点。
 ところで、他の方のレポートを見ていると使用感について「キャラクターに抱きしめられているよう」という形容が多く挙がっていますね。私としてもそれに近いものを感じました。ふとした瞬間にふわっと匂いを感じると言いますか…これは堪らない人には堪らないでしょうね。私の場合、発注したキャラクターの都合上、抱きしめられていると言うよりはこちらへ話しかけるタイミングを失った彼女がずっと私の周囲をうろうろしている に近い印象でしたが…

お互い「どうしよう…」と思っている

終わりに

 全体の感想としては、待つ時間も含めてとにかく楽しかったです。他サービスと比べてみても、この納期とこのお値段ででこの解像度は中々いいのではないでしょうか。自創作狂いオタク活動、かねてよりの夢であったのでインターネットのみの手続きで手軽にできるのは嬉しいですね。皆さんも、ご予算が合えば愛しのあの方への思いの丈を綴った怪文書を送ってみてはいかがでしょうか。私はこちら側で待っています。
最後までご覧頂きありがとうございました。



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