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入門者に教えるときに心がけること

始める前に「ハードルが高い」と思われがちな将棋。
実際「自力で指せるようになるまでに覚える事」はやたら多い。

駒の名前
駒の動き
初期配置
成る
取る
打つ
詰ます
反則
対局マナー

ざっと考えただけでもこれだけある。
他にも千日手、入玉、振り駒などいろいろ。

フィジカルな盤駒でなく、デジタルなもので対局する場合は、「駒の動き」と「成る」「取る」「打つ」のルールがぼんやりとでもわかっていれば始めることができる。名前なんてわからなくても良くて、最初から配置されていて、駒を触れば動けるところが表示される。自分の番の時に可能な手を選ぶだけで、反則手は指せない(ようになっているソフトが多い)。マナーについてとやかく言われることもない。人間相手でなければ「まだルールもよくしらなくて…」と恐縮したり遠慮することもない。
それだけでずいぶんと気軽に始められるようになったはずだ。

近年はソフトやアプリで将棋をはじめた人はとても多いと思う。もしくはこどもの頃に駒に触ったことがあって、なんとなくルールは知っていたけれどもその後機会がなかった人。スマホで手軽に対局できるようになって再開した、急にハマった、もしくはプロの将棋を見るようになって自分でも指し始めた、など。

しかし基本的ルールがわかったとしても、対局するのは難しい。
次のハードルは何かというと

「何をしていいのかわからない」

これは大人ほど困る。
自分の駒が20枚もあって、いろいろできることはあるけれど、どこにどう動かしたらよいのかわからない。
「玉を捕まえる」という目的を理解していても、はじめたばかりのときは戦略的に考えるための材料がないからだ。

こどもは無邪気に動かす。右から順番に歩を全部ひとつずつ進めてみたり。飛車をウロウロしてみたり。気楽なものである。

しかし初心者同士で対局すると必ず次の難関にぶちあたる。

「いつになっても終わらない」

王手に気が付かずにウッカリ取られてしまった、以外の勝負の着き方がない場合、だいたい飽きて終わる。
結果「よくわからないゲーム」という評価になってしまいがちである。

実に、私自身がこどものときにそうだった。将棋は駒の動きが覚えにくくて、長くて、途中で飽きるゲームという印象だった。

…と前振りが長くなってしまった。

だから?

入門者に教えるときに必要なのは 
駒の動きが簡単にわかり、早く決着すること だと思う。

逆に言えば、教える側は覚えられないほど一度にたくさん駒の名前・動きを教えたり、飽きるほど長いゲームを避けなければならない。
勝ち負けの重さはかけた時間と労力と思いに比例する。じゃんけんで負けても悔しくないように、さっくりと短い勝負であれば勝っても負けても軽い。

それを解決したひとつの答えが「どうぶつしょうぎ」。
ライオン(王)を捕まえるという勝負の目的の理解、駒を取る、打つという基本動作について、短いゲームで繰り返し遊ぶうちに楽しく身につける事ができる。こどもたちが対戦すると5分もかからずに決着することが多い。そして口にするのは「もう一回!」である。ここがとても大事なポイント。
どうぶつしょうぎのルール部分である「3x4将棋」は、将棋を教えるための入門教材として作ったものなのだが、可愛いイラストと組み合わさった効果もあって、単独の新ゲームとして予想以上の反響があった。話は脱線するが、どうぶつしょうぎが売れたおかげで将棋普及の会社を設立することができたので、これは将棋の神様からのプレゼントだと思っている。

「どうぶつしょうぎ」から「ごろごろどうぶつしょうぎ」さらに「おおきな森のどうぶつしょうぎ」と進むステップアップもあるけれど、その話はまた別の機会に。

通常の将棋の盤と駒で、どれだけシンプルにできるか。
まずは「飛車角鬼ごっこ」という方法がある。もともとは棋友館の小田切先生が書いていらっしゃった指導法で、上手の「王」と下手の「飛・角」だけで対局する。(※鬼ごっこ、という呼び方は私が勝手につけたもの)

(ぴよ将棋のアプリを使って作図しています。このルールを「王vs飛角」という名前で対局可能にしてくださってます。可愛くて高機能!)

究極にシンプルな形!
これを見た時は目から鱗がボロボロと落ちた。以来、入門者の指導には必ずここからスタートしている。
飛と角を先ず成る。そして龍と馬で協力して玉を詰ます。

いつだったか、随分前に小田切先生のお話を伺いに棋友館に行った。
その時に教わったのがこの次のステップ。上手の王だけ5一の地点に置いて、下手が飛、角、金、銀の4枚を持って始める指導法。慣れてきたら枚数を減らしていき、最終的には飛と金だけにする。「打つ」ことをシンプルに教える方法だった。いろんな教え方があることを知り、自分でもどんどん工夫してみようと考えるきっかけとなった。

長くなったので続きはまた今度。

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