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娘17歳、はじめてのひとり旅。ハリウッドを目指す

娘の高校留学を機にメルボルンに移住して469日となりました。今日、娘はロスアンゼルスで1週間のサマーキャンプのために旅立ち、私はひとりメルボルンで過ごしています。


娘よ、ショートフィルムを1本撮ってくるのだ

メルボルンの学生は2週間の短いホリデーで、学校が先週からおやすみです。ホームステイをしている娘の友人の留学生のほとんどは、日本に一時帰国しています。

私たちは一時帰国せず、娘は今日からロスアンゼルスに1週間サマーキャンプに出かけました。キャンプの目的は、あるフィルム学校で映像クラスに入り、チームとなってショートムービーを1本撮ることです。メルボルンの学校でもメディアを勉強していまして、将来はそっちの方向を目指していることもあり、いい経験になるのでは……、と思って背中を押しました。

はじめての娘ひとり旅、私、ちょっとさみしい……

娘ははじめてのひとり旅です。メルボルンからロスアンゼルスまでは直行便で約14時間というロングフライト。私と同じく旅も飛行機も大好きな娘ですが、なかなかの長時間ということもあって、Netflixの映画やドラマを何本もダウンロードしていました。

さきほど、自宅の近所にあるリムジンのバス停まで見送りました。空港まで一緒に行こうかと一瞬思いましたがもう高校2年生ですし、現地に着いたら私は何もできないワケですから、空港まで行く必要はもうありません。

バスが来るまで数分ありました。何の会話でもありませんが、少しだけ、少しだけですよ、ちょっとさみしい気持ちになりました。たった1週間だけなのに、ダメですね……。娘はいつも通りのテンションで、“じゃあ、行ってくるねー”と笑顔でした。バスが出発するまで見送っていましたが、娘は後ろの座席にちょこんと座り、スマホをいじっていました。バスが発車すると、私の顔をちらっと見て、ニコッとまた笑ってくれました。その顔を見て、とても嬉しい気持ちになりました。

円安ドル高直撃。費用は欲しかった香水18本分

ご存知の通り、円安ドル高が続いていることから、今回のサマーキャンプにかかる費用はかなり高額です。数字を言うのはアレなんで、私が欲しくて欲しくてたまらない、フレデリック マルとAcne Studiosがコラボした限定フレグランスの50mlが18本ほど買える金額と言っておきますね。

1週間でこの金額をどう思うか?
もちろん高額ですし、この費用は私が負担したので、結構がんばりました(ちなみに夫は高校留学にかかる学費を全額負担しています、ありがとう!)。私としては、大好きな香水18本購入するよりも、断然価値のあることだと思っています。
若いうちに経験をすることは本当に大切ですから。何しろそれを私は身をもって体験しています。

20歳の女のコが体験した、夢のようなパリでの1週間

私の若いうちの体験が少々おもしろいのでお話させてください。本当におもしろいですよ。それは今から30年前、1992年のことです。当時、大学3年生でさほど勉強しておらず、バイトばかりしていました。

ある日、学校で大好きなファッション誌、『SPUR』(集英社)のページをめくっていると、“創刊3周年企画 読者と行くパリの旅”というプレゼント企画が目に止まりました。  

“えっ! 憧れのパリに行ける?”

応募資格を読むと、800文字の原稿(テーマはもう忘れてしまいました、たぶん雑誌に対するコメントだったと思います)のみでした。

今でこそ文筆業をしていますが、文学部でもないですし、本もろく読んでいませんでした。ただ雑誌が大好き、SPURが大好き、しかもパリが大好きだったので、その日のうちに原稿を書き、家の近所にあった証明写真の自販機で顔写真を撮り(時代ですね……)、履歴書を書いて送りました。

1カ月ほど経ったころでしょうか、自宅に集英社の広告部の方から電話がかかってきました(時代ですね、スマホなんてこの世に存在しません)。

「夏目円さんですか? 集英社の広告部をしております○○です。今回、SPURで応募されたパリの企画ですが、当選されました」

えーっっっっっ、そんなことってある????????

文章だってろくに書いたことがなかったですし、有名大学に通っているわけでもない、もちろん、フランス語も話せない、モードにも詳しくない私が何で当選したんだろ? かなり謎でしたが、強いて言えば、応募した誰よりもSPURを愛していたんでしょうね、ただそれだけです。

人生初のパリ。最高の体験をする

パリは12月22日から28日までの1週間滞在しました。パリの5つ星ホテル、リッツとパビヨン ドゥ ラレーヌに宿泊し、クリスマスはノートルダム寺院に行き、高級ヘアサロンで髪を切ってもらいました。SPURの編集者が同行してくださって街を案内してもらいました。とても20歳の女のコができるような体験ではありません。あれからパリは10回程度訪れていますが、いずれのホテルも前を通るだけで宿泊することなんて到底できません。

この場をお借りして、集英社のみなさま、ありがとうございました。

強烈な体験がきっかけで、目標が生まれる

この夢のような体験がきっかけとなり、私は出版社に入って編集者になる!という目標ができました。といっても、出版社に入るのはなかなかハードルが高く、有名大学出身でもない、特技も資格もない私は大苦戦しました。80社以上落ち、唯一採用されたのはファッション誌とは対極にあるガスの業界紙でした。そこからギャル誌の編集部員になり、フリーランスになり、美容ライター、エディターとして25年になります。

今こうして、好きな仕事をしているのは間違いなく、あの夢のような体験があったからです。パリで過ごしたキラキラの1週間、20歳の私にとって一緒に過ごした編集者の女性は、眩しくて、眩しくて、“憧れ”というより、雲の上にいるような存在でした。”こんな素敵すぎる職業ってないじゃん、アタシもなりたい!”って、20歳の私は確信したのです。

娘は当時の私よりももっと若い17歳です。1週間という短い期間ですが、ハリウッドのすぐ近くで映像に触れることができる。その体験は、きっとこれからの人生で何かしらの影響を与えることでしょう。

18本の香水よりも、はるかに価値のあることです。

娘よ、ハリウッドでたくさんの経験をして、目標を明確にするのだ!

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