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サイバー南無南無がニコニコ超会議で実施した演出と今後のビジョン

仏教美術とテクノロジー
サイバー南無南無がニコニコ超会議で実施した演出と今後のビジョン


2022年4月30日幕張メッセで行われた「ニコニコ超会議2022」の超テクノ法要×向源ブースにて、サイバー南無南無は映像演出「讃仏偈Remix」とVR体験ブース「お経VR・心拍NFT」の発表を行いました。
今回の発表の内容と今後のビジョンについてまとめました。

1,サイバー南無南無を始めたきっかけ
2,私があこがれる世界観と時代の流れ
3,現在の仏教界の問題と今後予想される新たな問題
4,今回の企画を思いついたきっかけ
5,今後のビジョン


1, サイバー南無南無を始めたきっかけ
私は2018年の夏に、朝倉行宣さんがYouTubeにアップされていたテクノ法要を偶然見つけて魅了されてしまいました。テクノ法要は、テクノとお経をミックスした音楽と、お寺の本堂で行われるプロジェクションマッピングにより、煌びやかで強い非日常体験を提供してくれます。その映像を何度も見ているうちに、私は気持ちが落ち着く様になりました。このような形で「生き辛さ」を払拭できた私は、次は自分自身が表現者となり、この体験を他者へ提供できるようになりたいと思うようになりました。こうして始めたのがクリエイターグループ サイバー南無南無です。これまで仏教美術をはじめとする日本伝統文化・芸術とテクノロジーアート・現代音楽を融合したライブイベントを行ってきており、より自由で文化的な空間芸術表現の方法を探究しているクリエイター団体です。 仏教美術を題材に扱っていますが、より自由で新しい表現方法を模索するため当団体は、無宗教の方や様々な宗教宗派の方を尊重し、どの宗教宗派からも支援・援助等を受けることなく、またどの宗教宗派を支援することもなく、独立した運営を行っています。

2019年 島根県 蓮教寺での自主開催イベントでの様子

2, 私があこがれる世界観と時代の流れ
私は、アニメ「攻殻機動隊」の世界観に強く憧れています。
どこまでが現実で、どこからが仮想世界なのか?見分けがつかなくなってしまう感覚。
仮想世界の出来事が現実に大きく影響を与え、またその逆も発生する。
令和が始まり数年たった今でも、設定やストーリーは私の中で全く色あせることなく、むしろ1995年に作られたアニメにようやく世界が追い付いてきたように感じています。
特に現実味を増したのが、2021年10月にマーク・ザッカーバーグCEOが社名「Meta」を発表したことではないかと思います。「メタバース」という言葉が市民権を得たと感じた時には、新しい物語が始まるのではと興奮したことを今でも覚えています。

VR空間でも、イベント開催してました。ポスターも無意識にサイバー感が、、

3,現在の仏教界の問題と今後予想される新たな問題
 少し話がそれるのですが、サイバー南無南無の制作活動中に、仏教界の問題を知りました。例えば仏教の事を知ろうと思いネット検索をすると、まず検索上位に来るのはお寺ではなく冠婚葬祭関係の企業が出すページです。企業は自社の利益を追求する必要があるため、金額的なものも含め本来お寺が行っている内容や考え方とは異なるものもあります。
しかし、日頃仏教に触れる事が少なく自分から情報を集めない人々にとっては、ネットで検索できる事が唯一の情報源であり、その情報を精査することも少ないでしょう。これは想像ではありますが、そういった企業利益によって作られた知識をベースにしている人達は結構な割合でいるのではないでしょうか?そして結果的に、お寺がさらに遠い存在となっているとも考えられます。 
この問題に関して、現代の僧侶の方の怠慢だとは一切考えておらず、web2.0の中では必然的に出てくる問題だと考えられます。検索した時ヒットしやすくするためには、多額の費用とマーケティング能力が問われるわけで、金銭的利益を上げる事に注力している企業に対して、仏教界が勝つのは難しい社会の仕組みだと思います。今後web2.0から3.0に変化する事でそういった問題は解決しやすくなると思いますが、web2.0に仕組みとルールがあったように、3.0にも仕組みとルールが存在し、戦略は必要不可欠なものです。
我々サイバー南無南無は、その問題を解決するノウハウは持ち合わせておりませんが、新たなテクノロジーを使ったアート活動を続ける中で、社会貢献できればと考えております。


4,今回の企画を思いついたきっかけ
サイバー南無南無は2020年5月からVRChat(メタバースSNS)を使いイベントを企画してきました。お寺の様なVR空間を作り、本当のお坊さんとコミュニケーションがとれるイベントです。イベントの中では「坊主Bar」という企画があり、参加者は完璧にプライバシーを保護された部屋の中で、1対1でお坊さんに相談できます。この企画はとても好評で、毎回満員御礼となっていました。お坊さんは坊主Barで聞いた内容は、誰にも話さないというルールがありますので、主催者はもちろん、お坊さん同士であっても相談された内容を聞くことはできないのですが、対面では話せない事もアバター同士であれば心を開いて相談できる事がたくさんあったそうです。


VR空間での集合写真

好評だった坊主Barなのですが、ある時、根本的な疑問を感じる事がありました。
それは「ここはお寺なのか?」という疑問です。坊主Barでは本物のお坊さんが親身になって相談にのってくれて、VRの本堂では井戸端会議のように、いろいろな方がコミュニケーションをとっています。楽しそうに談笑している方もいれば、真剣に相談している人もいる。そして、本堂の正面にはYouTubeでテクノ法要やサイバー南無南無のイメージビデオが流れる、とても心地よい空間なのですが、それはお寺ではなくお寺を模したVR空間です。

どうすればお寺になるのか?そんな疑問を抱えながら、運営の準備をしていたある日、本堂正面のYouTubeを流せる大きなディスプレイでお経の動画を再生しながら、仏像を拝んでいるアバターを見つけました。見つけた時はイベント準備中だったので、そのアバター以外はだれも居ませんでした。
アバターがVR空間の中で、ただひたすらお経と共に仏像を拝んでいるところを見た時に、北海道十勝清水町の寿光寺建立のお話を思い出しました。寿光寺ができたきっかけは、北海道を開拓していた人々が仏教を求め、その要望によって建立されたお寺です。
VRのお寺も、たんなる空間ではなく寿光寺のように参加者の方に求められて出来上がるのだと確信しました。

本堂の様子

 それから、「拝む」を記録し共通するデジタルアートを作れないかと考え、サイバー南無南無で新たな制作活動が始まりました。
 制作活動をしていく中でまず問題になったのが、何を記録しどう共有するのか?です。芳名帳を置いて記入してもらうことで、お参りされた方の記録は残るのですが、それではサイバー南無南無らしくありません。そこで、お参りされた方が、「生きていた証」を残せないかと考えバイタルデータを使う事にしました。バイタルデータとは心拍・脳波・血圧・体温など人間が生きていることを示す「バイタルサイン」をデータ化したものです。   
今回のイベントでは心拍データを扱う事にしました。心拍データは、心拍・脳波・血圧・体温の四つの中でも一番多くの人が目にし、感情をイメージできるデータだと思います。例えば病院のドラマで人が亡くなるシーンを思い浮かべたときに、心電図の音をイメージしませんか? その他にも映画の中で緊張するシーンに心拍数の高いBGMが使われたり、逆にお腹にいる赤ちゃんをイメージしたシーンではゆったりとした心拍の音が聞こえてきそうです。そういった様々な感情を彷彿させる心拍データを使いデジタルアートとして残すことで「拝む」を記録します。

心拍センサーCOOSPO


 記録の仕方はとてもシンプルで、参加者の方には讃仏偈をヒントに作った5分間のVR作品をヘッドマウントディスプレイで体験してもらいます。パッフェルベルのカノンに合わせた讃仏偈は宇宙空間を想像するような作品になっています。その体験中に腕時計型の心拍計測器を使って参加者の心拍を測定します。そして測定された心拍を画像データにレコードの様に記録し、背景と仏像、参加者名と参加日時が書きこまれます。背景と仏像はランダムに組み合わさるので、オリジナリティのある画像データとなります。

marimosphereさんの心拍から生成されたNFTアート(所有者marimosphereさん)

この画像データはNFTアート化されて、唯一無二のデジタルアートとして保管されます。NFTアート化する事で拝んだ記録はネット上でコピーや改ざんされることなく残り続けます。そして、参加者の心拍が刻み込まれたNFTアートによって作られたメタバースのお寺を作れないかと考えております。
 また、このデータはお寺を作るだけではなく、映像演出としても利用できるようになっています。ニコニコ超会議2022で披露した「讃仏偈 サイバー南無南無 Remix」はNFTアート化された心拍データを読み取り、その鼓動を基に映像生成しています。実際に映像を見ていただくと、心拍を感じられるシーンがいくつか出てくると思います。

ニコニコ超会議当時の映像

5,今後のビジョン
 今回初めての試みでしたので、心拍計測をした方のデータはまだ今回分のみですが、5年後10年後に多くのデータが集まった際には、過去の心拍データを使ってお経VR体験が可能になります。参加者の中には5年後、10年後に生活や境遇が大きく変わる方もいるかもしれませんが、過去の心拍データは時空を超えて自分や他者の気持ちに触れることができます。初心に帰ったり、癒されたり、気持ちを奮い立たせたり、刻まれた記録はいつでも自分に立ち返り、唯一無二の存在であることを思い起こさせてくれることでしょう。  
サイバー南無南無は今後更に研究開発を重ね、バイタルサインとweb3,0の技術を使った、だれもが簡単に心地よく楽しめる仏教美術を創造します。


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