嫌いなタイプの女性はいくつかあるのだけど、今回は水菜(仮名)について。

水菜と私は同期で配属部署も職種も同じだった。
彼女は仕事ができるし、癖の強い上司とのやり取りもそつなくこなせる人で、私は同期というより先輩に接する気持ちでいたの。
彼女も同期の中では自分が一番仕事ができるタイプだと自覚していたと思う。

私と彼女は仲が良くて、よく一緒にランチをしていたし飲みにも行ってた。
青森出身で大学まで東北だった水菜は東京に友達がいなかったので、土日も会いたがったり私の家に来たがっていたけど、それは面倒だったから遠回しに断ってた。
その遠回しの断りを察することができるぐらい、割と勘の良い人だったんだよね。
で、私達は3年ぐらい一瞬にいた。周りからも仲良しだと思われていたはず。

そんな水菜を私は好きだったし慕ってもいたんだけど、あることを境に嫌いになった。それもものすごくね(笑)。
たぶん水菜は未だにどうして私から嫌われたのかわかってないと思うけど。

そのきっかけは些細なことだった。
私達と同期の男子に但馬(仮名)ってのがいて、但馬と水菜、私は同期の中でも特に仲が良かったんだよね。
で、ある時、但馬と私の2人でランチをしたことがあったの。その日、水菜は出張で会社にいなかったのよ。
でね、エレベーターを待ってる時に但馬がこんなことを言ってきたわけ。


「美聡ちゃんってアイライン強めに引くのね」
「そうだねー。なんで?」
「いや、水菜がさ『美聡って甘めの顔立ちなのにメイクきつめだよね(笑)。アイラインとか真っ黒じゃん(笑)。アンバランス(笑)』って言ってて」。


女性ならまあまあわかってくれると思いますが、自分のメイクにはそれなりのこだわりってないですか?それに自分の顔立ちに多少なりともコンプレックスってない?
それをメイクで補っているというか。

私の素顔はタレ目のぱっちり二重な甘い顔立ちなんです。
それを良しとする人もいるけど、個人的な好みは北川景子や柴咲コウみたいなきつめの美人なので、やっぱりそこに近づきたかったわけ(笑)。骨格の問題なのでメイクでどうにかなるものじゃないんだけど、まあ憧れな訳ですよ。
対して、水菜は北川景子系の顔立ちで、それをさらに寄せるためのメイクが上手だったの。
私は私の顔立ちやメイクのことを影でそんな風にバカにされていたことがショックだったんだよね。
しかも、水菜は私のコンプレックスのことを知ってたからね。


「あー、裏ではそういうこと言ってたんだ…」


って傷ついた。
確かにね、思い返せばいくつかの違和感はあった。
なんていうか、軽めの嫉妬を含んだ感じの言動というか。だけど、私より仕事ができて上司の覚えがめでたい彼女が私をライバル視するわけないって思うじゃない?
まあ、もしかしたら根本的に私のことが気に食わなかったのかもしれないけれど。

それ以来、私は彼女の言葉を信用しなくなった。
行動も気をつけて注意深く見るようにそていたの。
なにより、彼女が私にマウントをとり続けていたことに気づいたよね。


その行為は残念でもあったし悲しかった。


他にも、私不在の飲み会では私のことを悪し様に悪口を言ってたなんて噂を小耳に挟むように。
その時、私が傷ついたかと言うと逆で、こう思ってた。


「水菜はまさかこの人たちが告げ口するとは考えてなかっただろうなー。水菜はいろんな人から裏切られてる。意外と人望ないのかも…」。


実際、その通りで、寿退社をした水菜にはその後、会社の誰からも連絡がいかなかった。

結婚を機に退職した彼女は暇をもて余していたのか、しょっちゅう私に連絡をしてきた。
もうそれがうざったくて仕方なかったんだけど(忙しい)、「やっと妊娠したの!」という連絡を貰った時はさすがに無視できず、お茶をすることに。
年齢的に若いのになかなか妊娠しないことに焦っていた水菜は結婚して1年ほどして待望の子どもを授かったの。
なかなか妊娠しないことを水菜が嘆いていることを私は知っていたので、「会いたくないけど、お茶ぐらいご馳走しないといけないのかなあ」って考えたわけですよ。
だから、水菜が指定した恵比寿駅東口方面にあるカフェで久しぶりに会ったの。
そこでの会話が苦痛で仕方なくて、彼女の一方的でつまんねえ話を聴きながら、


もう2度と会うことはないな。時間もったいねー。


って思ってた(笑)。
だって会話が妊娠したことばかりなんだもの。当時、彼女は妊娠4ヶ月。それまでのエコー写真を延々と見せられて、自分の話ばかりするわけよ。
1度も私の近況を尋ねなかったし、古巣のことも聞かれなかった。
はっきり言って他人の子どものエコー写真って違いがわからないんですよ。それを延々と見せられてた…。
ふつう、辞めた会社の人のことが気になったりしない?半年前まで働いてた会社のことなのに、「但馬は元気?」とか「菰野さん(上司)どうしてる?」とかなかったんだよね。


「あー、この人は妊娠の話をしたくてたまらないから私を呼んだんだな」って気づいた。
私に会いたいわけじゃないし、私の最近が気になるわけでもない。単純に妊婦になった幸せな話を誰彼構わずしたかっただけなんだろう。
恐ろしくつまんない不毛な時間を50分ぐらい過ごしたあたりから私の限界がきはじめて、どんな理由で会話を打ちきったか覚えてないけれど、やっと帰ることができた。
その時の彼女の「え?」って顔が忘れられない(笑)。「まだまだ話したいことがあるんだけど…」みたいな。


いやいや、もーお腹いっぱいですよ。
私、家に待ってる人がいるんでね。


と思いながら、金輪際、彼女に会わないことを誓ったし、そうすることのスッキリ感は気持ち良いことこの上なかった。

その後も「家を買った」「子どもが可愛い」など、私からすると「それがなに?」的な連絡は来ていたけれど全て無視していたら次第に連絡も来なくなった。
東日本大震災をきっかけにまた連絡が来るようになったけれど、面倒すぎて完全無視(笑)。あの未曾有の時でさえ、「美聡久しぶり!私はこれから娘と旦那の実家がある福岡へ避難する途中云々」と書かれていて。もう滑稽ですらある(笑)。


この人、まだ私と繋がってるつもりなんだ(笑)。


そう思うと哀れに思えたね。
もう彼女の知っている私ではないのに。

恵比寿でお茶して以来、彼女とは会ってない。
けれど今でも記憶は鮮明で、水菜の人を魅了する(主に男性)笑顔も、瞳の奥が笑ってない顔もよく覚えてる。

いやはや、この暖かさは師走感ないわー。

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