上着の袖と僕らの距離



電柱のあかりをたよりに
気が向くまま、歩いていた
路地から飛び出した子供たち
僕らの横を、追い越してゆく
やっとのおもいで、星をみつけた
ビルの陰に、ひとつだけ
酒屋の前に山積みにされたビールケース
腰掛けがわりにして
膝の上のラーメンを食べる
これが、いいんだよねって、あなたは
割り箸を持ったまま、橋の上を指差す
花火大会が、始まったみたいだ
いつの間にか
浴衣姿の人達が、どっと出てきて
狭い通りを埋めつくして
僕らは、前が見えなくなる

あなたが、どんぶりを、片付けて
僕は、ビールケースをもとに戻す
はしゃいで、駆け回る子供たち
ワンカップ片手に、騒ぐ大人たち
下駄の音と交通整理の笛の音の中
かき分けるように、土手へ向かう
この人混みの
歩きずらさが、何故か、心地よくて
あなたの手を引きながら
少しばかり、幸せな気持ちになる
あれが、スターマインだよってあなたは
上着の袖を引っ張って
嬉しそうな顔をする
僕は軽くうなづいて、肩を抱きよせる

年齢差を恨んだ、最初で最後の夜

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