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コーヒーと宿り木

職場までの道をホットコーヒー片手に歩く。
巷の記事は、芥川賞と直木賞の発表でもちきりだ。
その中で彼女のつぶやきは毎日更新される。
子育て、手作りの料理、やりがいのある仕事、優しい夫とのささやかな日常。
遠い昔、交遊関係の広さや手にいれた本や服を披露していたように。
知ってるよ。独りなんでしょう。虚しいから、見てもらえないから、ささやいているんでしょう。
かつての友人たちも、今や誰も足跡をつけていない。
頭の上には宿り木が。普段は隠れているが、落葉すると宿主の枝葉があらわになり、小鳥の運んだ種が発芽した若草色の葉が寒空に浮き出す。
いつか、ずっと隠していたものがむき出しになるんだ。
ざまあみろ、そう呟いて、闇のようなブラックコーヒーを一口飲んだ。

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