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21世紀のリアルな大人のたしなみこそingressなのだ。

 2014年の春先からingressなるイチゲー(位置情報ゲーム)をプレイしています。初めは私、出張リーマンで東北各地を飛び回るので、出張先に何か印をつけられたら面白いんじゃないかという超低レベル文系的考えで、「なんかスマホで面白そうなゲームがある」程度にインストールした記憶があります。しかし、何事も続かない私がこんなに長くハマるのには訳があります。
このゲーム、今ではいろんなサイトで紹介されていますが、この当時は非常にアンダーグラウンドなゲームで、どこにも遊び方が書いてありません。スマホにインストールして画面上の「青や緑にぼわっと光るポータル」を手当たり次第ハック(タップ)する。すると何かアイテムが手に入るよ。っていうあたりまでは手探りで判りましたが、そのほかには何をしたらいいのやら。数日は立ち上げてはハック→ヂッと画面を見つめる、おっ、何かアイテムが出たぞ。という作業の連続で。

 ある晴れた日の午後、いつものようにingressを見ていると、近くの(いや、そんなに近くもない)神社に味方の攻撃ログを発見。意味不明なこのアプリへのストレスが私を全開で神社に急行させ、そのログを出している見ず知らずのAG(エージェント)さんに恐る恐る声を掛け、「このゲームの遊び方を教えてください」なんて、凄い質問を投げかけたものでした。(ちなみに同性、ちょっとだけ上の年齢の方でした。)その時期は同じことが他でもあり、近所の公園で真夜中に、市内の大学生に自転車で追いかけ回された挙句、全く同じ質問をされてぎょっとしたこともありました。

 この辺からこのゲームにハマっていきます。結論から言うとこのゲーム、ヒトと繋がった分だけ面白くなるゲームだったのです。この頃は仙台にはまだまだポータル(ingressのチェックポイントのようなもの)が非常に少なく、市街地を除くと北部のベッドタウンは本当にポータルの取り合いが熾烈でした。1つのポータルが敵に攻撃され奪取されると、SNSで誰が取り返しに行くかを話し合って急行したくらいでした。重要なポータルに敵が来たらそりゃもう緊急事態で、みんながチャットルームとマップに釘付けでリチャージ(遠隔で攻撃にたいする防御をすること)したものでした。この頃すでに地元のエージェントのSNS・チャットには入っており、20~30人の本名を知らないいろんな世代・性別の違う同志が生まれていました。

 仙台のいい大人の集まりでしたが、そこは東北人。みんながよそよそしく、いい秩序が保たれている感覚でした。でも、リアルには集まらない。そんな関係。
 集まれなかったのかもしれませんが、各人ゲームをプレイするうちにリアルで遭遇したり、Comm(ゲーム画面でのチャット)でも徐々に分かり合えるようになってきます。いやもう、って感じで集まってる方が出始めたのがこのころでしょうかね。

 この頃仙台のAGもレベルが上がり出し、最大出力のL8バースター(攻撃用の弾)がおおよそみんな使えるレベル8に成長していきます。

そこで開催されたingressの世界戦ともいわれるアノマリーです。地元仙台に世界からなんと数千人のAGが集結し、みんなでingressをプレイするというお祭り。20~30人の仙台の名前も知らない同志が何度も集まって戦術について話し合ったのは今もいい思い出です。会社だったら取締役みたいなおじさんや、バリバリの営業マン、公務員、IT関係のスペシャリストやはたまた派遣社員かひきこもりみたいな得体のしれない若い奴とか子供そっちのけ主婦もいます。これがおもしろい。

 そのころ私は思った、「ingressこそ、20世紀にあって、もう絶滅してしまった、おとうさんの町内会朝起き野球サークル」なんだと。ありましたよね。親父が年に数回早朝起きて職場や町内の仲間と野球やソフトボールしに行くやつ。いま、全くないですよね。現代は多様化し過ぎてみんな休む時間がまちまちなので、仕事以外の自分の時間に何かを楽しむ=それこそがingressなんだと。終わったらわいわいネット上で成果を確認したり…

仙台のコミュニティは、リアルで会うと総じて付き合いやすい、良識のある方々が大半なのですが、やたらとSNS上でだけ攻撃的、でも会ってみると普通とか、戦術、レートや数字にこだわる理系思考な方、とにかく外見に全く拘りがなく、周りからどう見られていてもアニメやゲーム、車など自分のシュミに没頭な方とか。とりあえず酒呑んで楽しけりゃいいタイプの方や目立てばそれだけでいいって方も。昔よくかあちゃんが言ってた、「あの人あれじゃあ結婚できないわ」方面のクセが強い方もちらほら。「おひとり様」な方も結構いらっしゃいまして…

自分のレベルが上がると、やることが無くなってきます。同じことだけを繰り返してくるといずれ飽きが来ます。アノマリー時点で仙台のAGさんは8~12程度、このゲームのレベルギャップ(最高位)は16ですので一定のAP(経験値のようなもの)を稼ぐとレベルが上がらなくなります。そこで考えることとは?Level8までの育成期間が終わると一人前(今なら2週間くらいで終わる)で、そのあとは長い長いLevel16までの修行期間で、それからどうゲームを進めるかは自分次第で。

・真面目ゲーム勢は各セクションの数字にひたすら拘り抜く勢。ひたすら多重CFを組む、完全多重、超巨大CFを組む、敵ポータルを壊しまくるなど。

・グッズを作ってみる。自分のゲーム用名刺のようなBioカードを作ってみる。もともとはゲームのキャラクターのトレカみたいなものをイベントで買うという風習があったのですが、それを自分に置き換えて作るというおもしろい文化が出来ました。これ、集めて並べると面白い。(グッズ勢、またはswag勢と呼ばれる。)
・ミッションをする。(ingressにはミッション、各地の決められたポータルをひたすらめぐってメダルを収集するミッション勢が存在する。いつもきれいなミッションを探して日夜巡り、休日は自主的に日本を旅する。)
・多人数作戦をする。20人~30人で手分けして作戦。計画を練って、実行する。これも面白い。長時間かけて車でわいわい。
・他県に遠征する。公式イベントも沢山あって、友達が増える。(イベント勢・時には海外へも渡る。格安交通・宿泊手段を知っている。)
・呑み会に参加する。(呑み会にだけ来るw呑み会勢)
・趣味とつなげる。海や山、島に行く、車中泊や、ロードバイク、クロスバイクで遠出。写真撮影で遠出。コミケで遠征しながら。なんてのも。SNSにひたすら飯テロを繰り広げる飯テロ勢もいる。

また本題から逸れましたが、こうして長くゲームをするうちに、遠征やら呑み会やら作戦をするうちに何かに気づきます。そう、あの「うつむき加減なおひとり様」達の様子が変わってきます。(この時点でコミュニティからフェードアウトする人は何も変わらなかったんでしょう)非常に物腰柔らかくなるのです。もともとそうで、分かり合えなかっただけかもしれませんが、考え方に加えて、持ち物や身なりまで何となく変わってきます。呑み会やイベントで回りを見ると、「自分が何か違っている」って考えるのは人として正しいと思います。元は非常に攻撃的な性格でも社会性を身に着けて丸くなるというのかもしれません。

ゲームからフェードアウトする人々も。まあ、自由参加のゲームアプリですし、若いころは試験、進学・就職とかで環境の変わりやすい10代、20代がこのゲームを長らく続けるのは非常に困難だと思います。ほかに面白いゲームがあればそっちをやりますしね。辞めちゃう原因の一つは誰ともつながらないことだとも思います。このゲーム、やり方が分からないと単純作業になっちゃいますから。ここがこのゲームの醍醐味。つながって深めるという、ここにたどり着かないと面白くない。

このゲームは正直自分の産まれた70年代のプレーヤーが非常に多いと思います。仕事もルーチン化して決まってきたし、環境はこれからほとんど変わらない。子供も何となく手が掛からないし、逆に使えるお金は限られている。家にはネット環境があるし、最近では携帯料金も格安に。ちょっと勉強すればコストは極力抑えられる。歩いたり走ったりすれば健康にもいいし。
アニメも最近のはちょっとなって方も微妙に馴染みやすい。

ってことで、自分もLevel16になってそのあとどうしたらいいんだロスが来て逃亡しそうになりましたが、Level1のアカウントをとり直して現在の15に至ります。今続けている仙台の仲間達はみんな全く嫌味が無くて、明日急に何か困って呼ばれても何とかしてあげたい人ばかりです。そんな人間味あふれるゲーム。廃棄予定の扇風機(まだ使える)貰ってくれたり、新築の引っ越し手伝ってくれたり、粗大ごみ出すのに手伝ってくれたり。そんなことも助けてくれる最高のチーム。

ダルサナプライムトーキョー2019で思った「イングレス婚」なる言葉。アノマリーが終わって夜のパーティへ。そこで4~5組の「イングレス婚」の方々に出会った。twitterにも多いし、噂には聞いていたけど、ゲームが縁で結婚する人今結構多いんだなと。30代後半~40代のおっさんでもイングレス婚。夫婦で陣営が違うっていうパターンも居た。いままで書いてきた、「ちょっと難ありの熱いエージェントさん」。古参で長らくこのゲームをやっている方。沿岸で一人いろんな作戦の守備についていたり、極寒の岬に一人で突撃したりと決まってそんな武勇伝を持つ面白い方々だった。地方でコミュニティやイベント仕切っていた方も。きっと数年前は出会いが無くって、常識とか社会性とかセンスがちょっと他の人と違ってっていう方なんじゃないかなと邪推。そういうセンスがこのゲーム上で、関わり合いの中で矯正されていって、いい縁に恵まれたのでしょうね。

~まとめに~
 仙台にもこういう独身の30~40代、男性・女性ちらほらいるんだよなあ。真面目で安定してる、いい職場に勤めてるのに独身って。
みんないい奴なんだよなあ。婚活なんてお金かけていろんな活動やらないで独身のみなさんはingressやるってのはいかがでしょう?積極的に地域のコミュニティに参加してチームに入ったり、FS(初心者向けレベル上げ講習イベント)やMissionDay(ミッションをみんなでやろうというイベント)に参加すれば、出会いってそこら中に転がってるとおもうんだよなあ。
と、最近思うことを私のingress史と重ね合わせてグダグダと書いてみたのでした。長文最後までお読み頂き誠にありがとうございました。
(私は既婚者で子供もおります。イングレス婚っていいなって思いながら。私は何勢でもなくダラダラやって全国に交友関係広めたい勢です。だって、みんないい人ばっかなんだもんね。あ、これを見てIngressやりたいって方は絶対に青のResistance陣営を選択せよ。お兄さんとの約束だぞ。)


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