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3ヘッドは最弱か?シャンテンピークに受けるべきか?

ダマテンおじさんに触発されて書きました。二番煎じですが、投稿する意味も少しはあるかと思っています。

麻雀の話です。

「3トイツ何切る」というものについて、この間、私が考えたことの記録です。

「3トイツ何切る」とは何か

この場合の「3トイツ何切る」というのは、特殊な形で、

手牌にトイツが3つあって、そのトイツにフォロー牌が2個または3個くっついていて、残りはシュンツ1つとターツ(あるいはリャンカン)1つで構成されている14枚形

を指します(原則として2シャンテンの手牌について考えます)。

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例えばこんな手です。mがマンズ、pがピンズ、sがソーズを指します。

2m、6m、7pがトイツ。

4m、7m、6pがフォロー牌です。

トイツが3つ、フォロー牌も3つなので「3トイツ3フォロー」の形です。

そこに234sのシュンツと34pのターツがくっついています。

今回の問題は

3トイツある手からメンツ手を目指すとき、3トイツをどうしたらよいのか?

というものです。

これに対して、

メンゼン手での3トイツは受け入れで不利だから切ったほうがいい

とか、

トイツが3つないと後々ロスが生じてしまう

とか、

とりあえず両面ターツは固定したほうがいい

という話を耳にしことがあるかもしれません。当記事で検討します。

諸注意

・224mのような形を「複合トイツ」とか、24m部分がカンチャンなので「カンチャントイツ」と呼びます。667mは「両面トイツ」です。

・3トイツ何切るには「メンゼン手」であることと「トイツ手ではない手」という前提があります。

副露手の場合、ポンは全員からできるためトイツ残しが強くなります。

また、上の「3トイツ何切る」の説明で「シュンツ1つ」としたのは「トイツ手ではない手」にするためです。

234sというシュンツが例えば222sとアンコの場合、4トイツ(2m6m7p2s)と解釈できるためです。アンコの場合、あまり悩まないでトイツ固定でOKだと思います。

・3トイツのフォロー牌を2個または3個という前提で書いていますが、0~6個まで考えられると思います。

・今回、様々な牌姿の期待値を確認するために「ツモアガリ確率計算機」というシミュレーターを使用しました。作者の方には感謝で一杯です。

http://critter.sakura.ne.jp/agari_keisan.html

数値の差はわずかです(和了率で0.5%、得点期待値で20点差とかその程度)。その中でも、シャンテンピークに取ると和了率は高くなり、両面固定をすると打点が高くなる傾向にありました。

また、探索範囲が増えるとこの通りの結果には収まらないことが多いことも付け加えておきます。

・なお、このくらいの何切るだと実戦的に大した差は出ないので、場の状況がはっきりしているなら状況に従うのが良いと思います。

あくまでもこれからの議論の目的は、手牌の骨組みを理解することです。

解答の手順

解答の手順は大きく2つ、形と打点です。

大枠としては、

①両面固定ができるかどうか

②「単独トイツ」があるかないか

③打点によるブロックの評価を修正

この3点をチェックします。①と②が形についてで、③が打点についてです。

とりあえずさーっと見て、そのあと一つひとつにルールを適用してみます。

①原則は両面固定

まず手牌を見て

両面固定ができるか

をチェックします。

両面固定ができる場合、

両面固定をしておけば大抵は正解

です。

例えばこんな手です(例題1『現代麻雀技術論』p84 牌3。初出はチルノートからっぽいので併記しておきます)。

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この手からだと打2sになります。

ただし例外が2つあるので、両面固定がOKの場合そちらをチェックします。

※ちなみに打5mや打5pが悪いわけではありません。あくまで微差です。

②両面固定できないなら「単独トイツ」を探す

次に両面固定ができない場合、

「単独トイツ」があるかないか

をチェックします。「単独トイツ」というのは「フォロー牌の付いていないトイツ」のことです。

・②-1 単独トイツありはターツ固定

単独トイツがある場合、

悪形トイツを悪形ターツに固定

します。なんで悪形なのかというと、両面固定ができない牌姿の話だからです。

例えばこんな手です(例題2『打姫オバカミーコ』11巻97話)。

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この手には単独トイツの北があるので、悪形トイツの446mを悪形ターツに固定します。そのため打4mとなります。

・②-2 単独トイツなしはトイツ固定

単独トイツがない場合は、

悪形トイツをトイツに固定

します。

例えばこんな手です(例題3『打姫オバカミーコ』11巻97話)。

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ここからはトイツ固定になります。ターツ固定はしません。フォロー牌の機能の比較が7m>8p>1mとなるので打1mです。

ただし、こちらも例外が1つあります。

これで大体、OKです。

例外について

さらに例外があります。

①(両面固定ができる場合)の例外は、

(1)「好形+好形+トイツ」(ここではこのセットを「充分形」と呼びます)に取れるとき

(2)「6枚愚形」があるとき

に両面固定をしないケースがあります。

・例外1 充分形に取れる場合

「5ブロックが良形で確定している形」をここでは充分形と呼ぶことにします。

例えばこんな形です(『現代麻雀技術論』p84 牌4)。

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この手は打5pで充分形(778m+223s+33p)です。残った形も好形なので充分形に取ります。

ただ打2sや打7mも全然悪くないです。

※23mが13mでも私の定義では「充分形」としています。わざわざ「充分形」という耳慣れない語を使ったのは、完全2シャンテンに、単独ターツが悪形の場合を含むのかどうか定義がよくわからなかったからです。

13mの形からでも打5pの方が良いと思いますが、ほとんど差はありません。また悪形が残っている場合、両面固定をした方がいいケースは多くなると思います。

追記 2022/2/20

なお複合ターツを含め、全てのターツが良形の場合、シミュレーターで見ると、2シャンテンまでは完全形に取らないで両面固定する方が強いように思います。

むしろシャンテン時が特殊(シャンテン時は両面固定よりも完全シャンテンに取る方が強いので)で、ここら辺は今後の課題だと思います。

これは2シャンテンまでは両面固定で来て、シャンテン時に完全シャンテンに取れるなら完全シャンテンには取るが、だからと言ってその逆が成り立つのか(例えば、45r5m23345667p223sから次に完全シャンテンに取れるように打3sとするのは正しいのか)という問題、言い換えれば「完全シャンテンは牌理上は正しいが、それを前提としたシャンテンピークも正しいのか」という問題だと思います。

・例外2 6枚愚形がある場合

「6枚愚形」というのは私が名付けた形ですが、133557のように、133と557の「3枚で構成される悪形が2つ複合した形」です。

例えばこんな手です。

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「6枚愚形」の場合、トイツ固定になるので打1mか打7mになります。

・例外3 エントツ形がある場合

②で単独トイツがない場合の例外ですが、手牌に

エントツ形があるとき

もトイツ固定になります。

例えばこんな手です(例題7 平澤さんの動画より)。

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78999mの部分をエントツ形と呼びます。ここが他のトイツと連動して変則的なシャンポン待ちになると待ちが広くなります。

ちなみに、この形は打2sと打3mの比較で打2sになります。

形に関しては以上です。

③打点によるブロックの評価

次に打点の面です。

打点については、ドラや手役が見える場合、

手牌のブロックが悪形であっても「強い形」(逆に好形であっても「弱い形」)と評価して、好形(あるいは悪形)と同じように扱います。

例えばこんな形です。

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この牌姿は、前述のルール通りだと両面固定が可能で、例外にも該当しないのでそのままだと打5pになるわけですが、123の三色で133mが123mとメンツになった時、7mが余剰牌になってしまいます。

そこで133mという悪形ブロックを「強い形」と評価し、充分形と同等に扱います。

そうすることで「強い形(≒好形)+好形+トイツ」の形に受ける打7mが浮上します。

ただ、こう書いておいてなんですが、実は打5pもそこまで悪くないです。

打7mは余剰の出ない順として書きました。

以上です。

まとめ

繰り返すと、

まず、①両面固定ができる → 両面固定

両面固定ができない場合、

②単独トイツがあるかないかで、

単独トイツがある → ターツ固定
単独トイツがない → トイツ固定

③打点によるブロックの評価を修正

あとは、3つの例外

・充分形
・6枚愚形
・エントツ形

に気を付ける

という感じです。

あてはめ

以下、上記のルールをこれまでの牌姿に適用します。

例題1 『現代麻雀技術論』p84 牌3

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→両面固定ができるか
→できる
→例外に該当するか
→(1)充分形に取れない
→(2)6枚愚形でない
→例外に該当しない
→打2s

※私には悪形固定を先伸ばせるなら両面固定をしたいように見えますが、変化まで見るなら打5pや打5mも全然あるようです。

例題2 『打姫オバカミーコ』11巻97話

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→両面固定ができるか
→できない
→単独トイツはあるか
→ある(北が単独トイツ)
→単独トイツがあるため、打4mか打2pのトイツを外してターツ固定しても後々余剰が出ない形。
 なので打1sか打5sで3トイツ2フォローを維持するより、打4mか打2pでターツ固定で直接の受け入れを優先する。
→打4mと打2pの比較で、両面変化の多いのは打4m
→打4m

※ 変化を重視するなら3m引きと7m引きと2種類の両面ターツ変化が残るため打4mですが、変化を重視せず最終形の強さで受ける考え方もあると思います。いずれにしてもここで重要なことは、変化云々ではなくターツ固定をすること(トイツ固定にしないこと)だと思います。

ちなみに、

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麻雀アプリ「麻雀 一択何切る」より、これも打7mが期待値最大。例題2の亜種だと思います。

ピンズを22pと466pと見るか、224pと66pで見るかはさておき、いずれかにしないとダメなので、「単独トイツ」が1つあるとみなせます。

ちなみにピンズ部分が24466pだと打3mで3トイツ2フォローに構えるのが期待値最大。

こちらは4466pの部分で5p受けが生じるので、6pが「単独トイツ」ではありません。

例題3 『打姫オバカミーコ』11巻97話

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→両面固定ができるか
→できない
→単独トイツはあるか
→ない
→トイツ固定
→フォロー牌の比較 7m>8p>1m
→打1m

例題4 『現代麻雀技術論』p84 牌4

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→両面固定ができるか
→できる
→例外に該当するか
→(1)充分形に取れる
→充分形に取るか
→好形ターツのみで不満がないので充分形に取る
→打5p

※「充分形に取れる」というだけで、打2sや打7mなどで両面固定をしてもそれほど差が出ない形です。

例題5 例題1を変更

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→両面固定ができるか
→できる
→例外に該当するか
→(1)充分形に取れる
→充分形に取るか
→好形ターツのみで不満がないので充分形に取る
→最終形は端の方が強い
→打4p

※「充分形に取れる」というだけで、打7mや打2sなどで両面固定をしてもそれほど差が出ない形です。

上の解説の追記に書きましたが、

例題1での3つの複合ターツのうち、

・悪形+悪形+良形の場合は両面固定優位
・悪形+良形+良形の場合はイーブン
・良形+良形+良形の場合は両面固定の方が若干強い

という感じです。ここら辺はこれからわかることもあると思います。

例題6

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→両面固定ができるか
→できる
→例外に該当するか
→(2)マンズが6枚愚形
→トイツ固定
→打1mか打7m

参考
少し前に話題になった福地さんの記事の問題です。

実戦だと6枚愚形を見つけた瞬間、反射でトイツ固定なので、打9pか打3pの二択なって、789あるから打3pと答えられると思います。

例題7 平澤元気氏の動画より

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→両面固定ができるか
→できない
→例外に該当するか
→エントツ形
→トイツ固定
→打3mと打2sの比較
→打3mだとツモ3s、5s、6sで余剰が出る変化がある
→打2s

※また、23378999m45p2466sだと、両面固定をすべきなのかトイツ固定なのかという問題が出てきます。

調べた限りでは単独ターツが45pだとトイツ固定がよさそうです。

しかし、これが46pの悪形残りになると両面固定優位になるっぽいんですが、めちゃくちゃ微差です。また変化込みの場合でも結論がひっくり返ったりします。よくわかりません。

※2 さらに、23378999m466p246s

これだと、打3mのようです。

466pが566pだと打3mか打6pの両面固定優位になるようです(変化までみるとリャンカン払い)。

例題8 自作

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→両面固定ができるか
→できる
→例外に該当するか
→しない
→この手は123の三色が見える
→打点によるブロックの評価を修正

133mは現状「悪形」だが、「強い形」として、

強い形(133m)+好形(556p)+悪形(799m)

と評価しなおす。


→以上より、充分形(好形(≒強い形)+好形+トイツ)と同様、悪形をトイツ固定する。
→打7m

※打3mや打5pもかなりのものです。そこまで差がないのかも。


演習問題

私の回答は一番最後に載せておきます。

問1 自作

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問2 自作

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問3 自作

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問4 自作

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問5『打姫オバカミーコ』11巻97話の牌姿を変更

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問6『打姫オバカミーコ』11巻97話の牌姿を変更

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問7 

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問8『ウザク式麻雀学習 牌効率』p68の牌姿を変更

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問9

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問10 自作

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・議論の経過

1.3ヘッド最弱理論

この3トイツの話を私が最初に目にしたのは、片山まさゆき氏の不朽の名著『オバカミーコ』11巻・97話「スリーヘッド最弱理論」(以下、3ヘッド理論)だったと思います。日付を見ると2008年頃のことのようです。

この時の氏の主張は、

メンゼン手であれば、3つ目以降のトイツは受け入れ面で不利になるので崩していくべき

というくらいのシンプルなものでした。

ちなみに私の手元にある、2004年刊の銀玉親方『棒テン即リー全ツッパ』p47には「3トイツは2トイツか4トイツに」という記述があります。

おそらくですが、それ以前にも知られていた戦術なのだと思います。

1.まとめ

片山まさゆき氏が「メンゼンの3ヘッドは弱いので崩すべき」と主張した。

2.「3トイツには2フォロー牌」

これに対して六分儀ゲンドウという天鳳プレーヤーが自己のブログで、

「確かに、(1)〔123788m355p12688sの形〕で打五筒なら打一索より2枚受入れが多い。しかし、ミーコは大事なことを見落としている。打五筒とすると、二索三索七索八索ツモのときに余剰牌が出てしまうのである。余剰牌が出ると、イーシャンテンの受け入れが4枚減る。2シャンテンの受け入れを2枚増やしてイーシャンテンの受け入れを4枚減らしているのだから、これは明らかに損である。」

と指摘し、

「2トイツにフォロー牌が2枚(一索二索二索六索八索八索のような形)だと、どっちかがメンツになったときもう一方のフォロー牌が余剰牌になる。2トイツには1フォロー牌。3トイツには2フォロー牌。」

とこれを定式化しました。(〔〕は著者が補いました)。

この、

2トイツには1フォロー牌。3トイツには2フォロー牌

という考え方が、「1シャンテンピーク理論」(以下、ピーク理論)と呼ばれているものです。

ピーク理論というのは

手牌の受け入れはシャンテン数が進むごとに狭くなっていくため、他家からロンアガリが可能なテンパイ時を除くと、もっとも受け入れが少なくなる1シャンテン時に、受け入れに余剰を出さないよう、受け入れ枚数のピークを持ってくる

という考え方のことです。

この応酬をかいつまんで言えば、3ヘッド理論からの

メンゼンであれば3つ目のトイツは崩すべき

という主張に対して、ピーク理論を根拠に

2フォローあるなら3トイツは確保しておかないと1シャンテンで余剰が出る。3トイツだからといってなんでもかんでも崩すべきではない

と反論したわけです。

2.まとめ

ゲンドウ氏が片山氏に「3トイツだからといってなんでもかんでも崩すべきではない」と反論した。

3.単独トイツはなぜ必要か

「3トイツ2フォロー」ということは、3トイツのうち「フォローされてないトイツ」、すなわち「単独トイツが1つある」ということです。

これを言い換えれば、片山氏の3ヘッド理論が使えるかどうかは、

単独トイツがあるならピーク理論に反しないから、トイツを崩してOK

単独トイツがないならピーク理論に反するからNG(トイツ固定する)

ということです。この点は先日、ダマテンおじさん氏が簡潔に指摘しました。

なぜ単独トイツが必要なのかというと、最終的にヘッドが一つ必要になるためです。単独トイツがないと、複合トイツがメンツ化した場合に余剰が出てしまうため、せっかくの複合トイツがただのトイツとしてしか機能しないのです。

3.まとめ

3トイツ2フォローとは、手牌に単独トイツ1つがあるということ

単独トイツがあるなら3ヘッド理論は使用可能

単独トイツがないならヘッド固定(単独トイツを作るためトイツ固定)

4.両面固定の検討

なるほど。「じゃあ、3トイツ2フォローまでならトイツは崩さない方がいいのか」と牌姿を集め、ツモアガリ確率計算機で期待値を確認していくと、今度はまた別の問題が持ち上がりました。

意外にも両面固定が強い

のです。今まで全然、話に出てこなかった両面固定です。

というのも集めた牌姿(例題2や例題3)をいじくり、ブロックを悪形から好形に変えていくと、両面固定ができる牌姿のほとんどは両面固定優位の数値が出ます(変化込みだと難解)。

そもそもの話、モデルケースはどれも悪形の塊のようなものばかりでした。例題2や例題3には当然のように両面トイツがありません。

両面固定の手筋は昔から知られていましたし、何切るとしても簡単な形なので、漫画のネタにしずらかったのかもしれません。

たしかに、何切るとしてわかりやすいと言われればその通りなのかもしれませんが、果たしてそれで本当に分かっていると言えるのでしょうか。

そもそも私はこのような場面で両面固定が優位になることには大きな問題があると感じます。ピーク理論があるからです。

4.まとめ

従来のモデルケースの牌姿を少し変えて、両面トイツを混ぜてツモアガリ確率計算機にかけると、両面固定がピーク理論を無視する結果が得られる。

5.両面固定はピーク理論を無視する

両面固定というのは、両面トイツを両面ターツに固定する手筋です(例えば667mから打6m)。

つまり両面固定は、3ヘッド理論が問題になる場面では、3トイツを崩していくベクトルなのです。

3トイツ3フォローで「3トイツ2フォロー」を維持するなら、切るべきはフォロー牌であってトイツではありません。

ピーク理論に反するトイツ崩しは、手役やドラが絡む等よほどの例外でなければならないんだろうなというイメージを私は長らく持っていました。しかし事実は違いました。

両面固定はピーク理論を無視します。

これはどういうことなのか。

・なぜ、両面固定はピーク理論を無視して平気なのか。

・単独トイツのない形(3トイツ3フォロー)からでもトイツ崩し(両面固定)がOKなのであれば、3ヘッド理論とピーク理論とを分けるはずの「単独トイツの有無」という指標は誤りなのか。

・むしろ常に両面固定をすればよいのか。

・3ヘッド理論、ピーク理論、両面固定の三つは、3トイツ何切るを前にどのように住み分けられるべきなのか。

ピーク理論を中心にまとまりかけていた思考が突として色褪せ、次々と疑問が出てきました。

5.まとめ

両面固定は3トイツを崩していく手筋。なので、ピーク理論に反する(3トイツ3フォローからだと1シャンテンで余剰が出てしまう)。

それにもかかわらず期待値が一番高く出るのはなぜか。

6.余剰の発生とピーク理論の根拠

そもそも余剰はなぜ生じるのでしょうか。

3トイツ3フォローを例に取ると、トイツ側を崩して2トイツ2フォローにした後、2トイツ側で1メンツが出来たときに初めて、最終的にヘッドが1つ必要となるため、最後に残ったトイツをヘッドにしなければならなくなり、残ったフォロー牌が余剰となります。

図式的に書けば以下のようになります。

余剰発生手順

例:23577m335p223789s

3トイツ3フォロー
トイツ崩し(打2s、この瞬間は2枚のロス)
→2トイツ2フォロー(23577m335p23789s)
2トイツのうち1つがメンツ化(23567m335p23789s)
→1トイツ1フォロー(335p部分)
→残ったトイツ(33p)はヘッドに必要
→残ったトイツのフォロー牌(5p)が余剰化(縦受け4枚分が損)

です。

要は、麻雀は4メンツ1ヘッドをそろえるゲームなので、最終的にヘッドが一つ必要なため、最後の段階でヘッドになる複合トイツのフォロー牌が1つ不要になるからです。

裏を返せば、一番最初の段階でトイツを崩さず3トイツ2フォローにしておいたならば、複合トイツ2つのうちの1つがメンツ化しても、2トイツ1フォローとトイツが2つ残るため、1シャンテンで縦受け4枚が残り、余剰は発生しません。

ピーク理論に沿って余剰を出さない順

例:23577m335p223789s

3トイツ3フォロー
フォロー牌を削る(打5m、この瞬間は4枚のロス)
→3トイツ2フォロー(2377m335p223789s)
3トイツのうち1つがメンツ化(2377m345p223789s)
→2トイツ1フォロー(77m223s部分)
→縦受け4枚が残る

ピーク理論の根拠はこの1シャンテンでの縦受け4枚分です。

2シャンテンでの受け入れ2枚(4mのロス4枚分と7mの+2枚分)と、1シャンテンでの縦受け4枚とを取引するのです。

これは「テンパイに近い段階での受け入れ枚数を優先する」という牌効率の大原則から許容されるものです。

『現代麻雀技術論』の最初の方に書いてありますがとても大事な原則です。

6.まとめ

ピーク理論に基づく打牌が、直接の受け入れで劣るのに正着とされる理由は、次の段階での余剰を防ぐためであって「テンパイに近い段階での受け入れが優先される」という原則による。

7.両面固定がピーク理論に反していても良い理由

例えば、次の2つの牌姿です。

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ツモアガリ確率計算機の期待値は上が打1mで、下が打6mでした。

この理由として考えられるのは、先ほど出てきた

テンパイに近い段階での受け入れ枚数を優先する

という原則です。

繰り返しますが、直接の受け入れ枚数で劣る打1mが上の牌姿で正着となりうる理由は、シャンテンが進んだ段階で余剰が出ないので受け入れ枚数差が逆転するためです。

要は2シャンテンよりも1シャンテン、「テンパイに近い段階での受け入れ枚数を優先」しているから許されるのです。

この点、上の牌姿で打5mとしたあと、テンパイまでカン6mが残るとします(先に埋まってしまうと別の変化に合流してしまうため)。

すると待ち牌はカン6mなので4枚となり、上の牌姿で打1mとしたあと、テンパイまでシャンポン部分が残りシャンポンの4枚を待ちにした場合と枚数は変わりません。つまり、テンパイピークになりません。

では、下はどうでしょうか。

下の牌姿で打6mとして58mがテンパイまで引けなかったとすると、打1mの時とは4枚差が生じます。

つまり、打6mは、2シャンテンでの受け入れの6mの縦受けの2枚分を犠牲にして、テンパイでの8枚待ちと取引しているわけです。いわば「テンパイピーク」の打牌です(そして同時に2シャンテンピークの打牌でもあります)。

また、6mは最後まで残っても、ほとんどのケースで両面待ちに受けるため切られることになります。

1シャンテンピークとなる打1mと、テンパイピーク(かつ2シャンテンピーク)となる打6mとを比べれば、「テンパイに近い段階での受け入れ枚数を優先する」という原則から、テンパイ時の受け入れである打6mが優先されるわけです。

ただし固定部分が先に埋まらなければという前提と、テンパイは1シャンテンよりは遠いという違いはあります。

まとめると、この打6mのような両面固定は1シャンテンピークには沿ってはいないのですが、テンパイピークには沿っていて、かつ2シャンテンピークでもあり、さらに最後まで残っても最終的には出ていく可能性が高い牌なので、この段階で切っても許されるというのが私の理解です。

私はここの説明が全然浮かばなかったので、ツイッターで聞いたところ、またしてもダマテンおじさんが教えてくれました。彼はただものではないですね。


7.まとめ

両面固定がピーク理論を無視してOKな理由は、「テンパイに近い段階での受け入れ枚数を優先する」という原則により、テンパイピークに沿っているから

8.常に余剰が出るわけではない

ちなみに3トイツ3フォローは上記の余剰発生手順の通りに進まなければ、どこかで2トイツ1フォローへ戻るルートが残ります(太字部分が分岐点)。

トイツを崩すも余剰の発生しない順

例:23577m335p223789s

3トイツ3フォロー
トイツ崩し(打2s、この瞬間は2枚のロス)
→2トイツ2フォロー(23577m335p23789s)
単独ターツがメンツ化(2377m335p123789s)
→2トイツ1フォロー(77m335p部分)
→縦受け4枚が残る

実際に余剰が出てしまう確率は形によって差がありますが、固定したターツを含め単独ターツがメンツになれば元のルートに戻るので、大体4〜6割程度だと思います。

8.まとめ

3トイツ3フォローから一旦、ピーク理論の道を外れても、固定した部分を含め単独のターツがメンツになれば元の変化に合流するため、常に余剰が出るというわけではない。

9.道は一つではない

では、両面固定とピーク理論、どちらの原則が優先されるべきでしょうか。

この問題は、結局、3トイツ3フォローから2トイツ1フォローへの道が一つではないことを示しているように思われます。

一つはフォローを削り「3トイツ2フォローから2トイツ1フォローにする」ルート

もう一つはヘッドを壊し「2トイツ2フォローから1フォローにする」ルート

同じようではあるけど性格の異なる道が、この場合、二つあるのだと思います。

これが現時点での私の結論です。

最後に、4.で出てきた疑問に対する回答を付しておきます。

・なぜ、両面固定はピーク理論を無視して平気なのか。

→ 両面固定はテンパイピークには沿っているから、「テンパイに近い段階での受け入れ枚数を優先する」という原則で許容される。

・単独トイツのない形(3トイツ3フォロー)からでもトイツ崩し(両面固定)がOKなのであれば、3ヘッド理論とピーク理論とを分けるはずの「単独トイツの有無」という指標は誤りなのか。

→ 誤りというわけではないが、両面固定は従わない場合がある。

・むしろ常に両面固定をすればよいのか。

→ トイツ固定をするケースはある(すべて好形の場合など)

・3ヘッド理論、ピーク理論、両面固定の三つは、3トイツ何切るを前にどのように住み分けられるべきなのか。

→ 上記の解答の手順で示したつもりです。

9.まとめ

3トイツ3フォローから2トイツ1フォローに至る道は、1シャンテンピークに沿った道両面固定によりテンパイピークに沿った道と、性質は異なるけれど大して違わない2つの道がある

・完全イーシャンテンの呪縛

ゲンドウ氏が3ヘッド理論からピーク理論を峻別した2008年頃の雰囲気は、完全イーシャンテンこそが正義でした。

当時は悪形であろうと、とにかく先手を取るために手牌をパンパンに構え、あるいはガリガリ鳴く。相手から先制されても安牌など持たず、牌の安全度表をもとにベタオリで何とかする、それが「デジタル」でした。

それまでの考え方では、受け入れ枚数はシャンテン数が進むほど狭くなっていくため、一番時間がかかるのは「テンパイからアガリ」のステップで、先制することよりも良形に構えることが大事でした。

しかしその後、先制であれば悪形であっても優位であることがデータによって示されます。

また、役有りテンパイであれば他家からもロン和了ができるので、一番時間のかかるステップの認識が、ツモ専となる「メンゼン1シャンテンからテンパイ」へと改められました。

それらの結果を受け、相手よりも先にリーチを打つために、「どうすれば無駄のない1シャンテンに持っていけるのか」という問題意識からピーク理論は出てきたのだと思います。そんな時代に私は麻雀を教わりました。

最初は、最速なのにその瞬間の受け入れ枚数最大の牌ではなく、一旦緩めるようにして次の段階で利を取る、この最速降下曲線のような打ち方が理解できませんでした。

しかし一旦、理解したら理解したで、今度はゴリゴリの完全イーシャンテン主義者になりました。

佐々木寿人をモデルにした漫画『真剣』の最終ページあたりで、主人公が68m234778p3445s北北の形から「7pの受けなんてどうだっていい」と否定するのを見たときは酷くがっかりしたのを覚えています。

ところが、そこからの10年は完全イーシャンテンの価値に疑問が呈され続けた時代でした。その反面、メンゼン、好形、打点、読み、安牌を持って手を進めることなど、「デジタル」の名の下に切り捨てられてきた「昭和」と呼ばれ蔑まれてきた打ち方も再評価されました。今では「デジタル」とはかけ離れた最強AIまでが登場しています。

もっとも、この3トイツ問題の「統一的な打牌説明法」のようなものは、機械的な話なのですが、実際のAIや計算機はその場で期待値を計算してのけるので、実際の機械はこれらの方法を必要としていないように思われます。そういう意味で、麻雀戦術というのはとても人間的なものなのかもしれません。

それなりの時間を経て冷静になってみると、完全イーシャンテンに取らないからといってそこまで大変なことにもならないかなと思えるようになりました。

ピークに取らないことで手牌をパンパンにしないことのメリットさえあるくらいです。完全イーシャンテンに取らなかったことで命を落とした人など数えるほどしかいません。

一旦、この小暮社長への呪縛が解けると、なぜあれほどまで完全イーシャンテンにこだわっていたのか自分でもよくわからなくなりました。もしかしたら幼少期に銀玉親方に刷り込まれたせいかもしれません。

今回、結論を無理にでもピーク理論の枠に押し込めようとは思わなかったのも、そういった時代の影響があるようにも思います。

長くなりましたが、私の回答は以上です。

10.まとめ

完全イーシャンテンに取らない選択が成り立つ場合もある

未解決部分

ここでは上記のルールでうまく処理できない問題を参考のために載せておきます。

Q1

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このピンズの形は「6枚愚形」の半分が好形となった形で、結論は打6mらしいのですがうまく説明できません。

実戦だと「ピンズは強いから触らない」「とりあえずマンズを固定」くらいで6mを切れるとは思いますが。

Q2

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同様にこの形もよくわかりません。結論は打4mらしいです。変化込みだと打2s。

悪形ターツ奇数枚構成が利かない形に見えます。この手筋が私にはよくわかっていません。ちなみに私はこれを渋川さんの『魔神の読み』で知りました(p58)。

6枚形は、「6枚愚形」の場合はトイツ固定で良さそうですが、Q1,2のように「半分良形」になると、6枚形には触れないで他の単純な形(566mや466mのような)を固定するのかもしれません。

これが「6枚良形(223556pのような形)」になると今度は良形と言いつつも二度受けなので、充分形には取らず、6枚良形の部分を両面固定して崩していく感じなのかなと現時点では思っています。

まとめると、6枚形が

悪形+悪形 → トイツ固定
悪形+好形 → 6枚形には触れない。
好形+好形 → 6枚形部分を両面固定

という感じなのかもしれません。いずれにしてもまだよく理解できていません。

Q3

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志倉うに丸さんの動画で知った牌姿です。今から2年ほど前にTwitterのタイムラインで話題に上がっていたようです。

この牌姿は複雑な形をしていますが、

→両面固定できる
→例外1に該当する(充分形に取れる打6p)
→充分形に取るか・・・?
→打3mか4sの両面固定か打6pで充分形に取る

となります。

3トイツ3フォローに取れば充分形に取れるため打6p(例題4参照)
3mを単独トイツとみなし、3トイツ2フォローに取れば打4s(例題2参照)となります。

機械にかけると実際に現時点では打4sが一番期待値が高く出る(4s>6p>3s>3m)ので、数秒で4sが切れるならそれに越したことはないんですが、3mも選択肢にあるため、どう考えたらよいのかよくわかってません。

「両面固定ができるか」と問えば、打3mは選択肢に入りますが、「3トイツ2フォローに取れるか」と問うても、取れないので、この部分で打3mを選択肢から消せる方法があるのかもしれません。形によって優劣をつけることができるのかという点が課題です。

※pystyleさんという方の別のシミュレーターを使ってみたら、期待値の結果が3m>4s>6p>8m>3sとなったので、これはこのままでもよいのかも知れません。

https://pystyle.info/apps/mahjong-nanikiru-simulator/

・3トイツ3フォローと2フォローの両方の形に取れる場合、どちらに取ればいいのか。
・判断が分かれた場合の決め手は何か。
・打点をどう評価すべきなのか。


など、まだよく理解できていません。

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冒頭の問題

実は冒頭に貼った問題は、上記の「解答の手順」をもとに私が作りました。再掲します。

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この問題、何を切ったらいいのか今でもよくわかっていません。ただ、私がどこを難しいと考えているのかが少しでも伝わったなら、著者としてこれ以上のことはありません。

参考

・文中に取り上げた六分儀ゲンドウ氏のブログです。

・牌姿をお借りしたチルノートさんです。

・書き終えてようやく「現麻」の記述を多少理解できたような気がします。大変参考になりました。特に参考にした個所を引用しておきます。

ちなみに書籍版は主にp84~85ページを参考にしました。

・例題7で牌姿を提供していただいた平澤さんの動画です。私とは結論が異なります。

・未解決部分の牌姿を教えてもらった志倉うに丸さんの動画です。


演習問題の解答

問1 打8p
問2 打8pか打8s
問3 打8pか打8s 充分形に取る。両面固定もある。
問4 打5mか打7pか打8s 充分形に取る。両面固定もある。
問5 打6m
問6 打2p
問7 打9p(打7m) 両面固定不可、単独トイツなし→トイツ固定。
問8 打8m 充分形に取る。打2pもあると思います。
問9 打8p ピンズ6枚愚形→トイツ固定
問10 打5s エントツ形→トイツ固定


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