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「のぼる小寺さん」を観に、映画館へ

久々に、半年ぶりぐらいに映画館へ。ボルダリングと原作とルパンイエローが好きな父さんが、伊藤健太郎くんが目当ての次女連れて、ニューライフ仕様の映画館へ。前の人の頭が邪魔にならない配置はいいなと思うも、次女が隣にいないのはちと寂しい。そんなこと思いながら席に着きます。

予告!予告!CM!CM!上映マナー!CM!CM!予告!予告!本編!

かつてはそんな形だったように思う。けど、今日は予告少なめ。途中劇場ロゴの時間があり「広告は空き枠かな」と思ったりして、ニューライフの大変さを思い知る。

上映前に、舞台挨拶行けない代わりにと工藤遥さんと古厩監督からのメッセージが。

元気いっぱいな工藤さんからの質問を受けつつ映画の魅力を伝える監督が、映画の風景を今体験することは難しいという事実に触れ少し言葉に詰まるところで次女の顔を眺める。次女が高校に行く頃までには戻ればいいなと思いつつ本編を待つ。

『のぼる小寺さん』
講談社のgood!アフタヌーンで2015年から約2年間連載された漫画が原作で、単行本は全4巻。クライマーゆるゆるコメディって裏表紙には書いてありますね。実際はっていうと、そうだなあ。“登る”ことにひたすら一生懸命な小寺さんに触れ、変わってく少年少女の群像劇って感じでしょうか。思春期ならでは感情が見え隠れする作品で、それがなんというか、うまくまとめきれずにゆるさに繋がってる。おじさんはそんな印象を受けます。ちなみに原作では大変可愛い小寺さんよりぐんぐん伸びてく四条くんが好きで、一番好きなエピソードは2巻の、四条くんがワンダと巨像で巨像登るようなイメージで壁に挑んでると言った時に、小寺さんが「私はICO派」と告げ、上田文人作品のファンとして四条くんと小寺さんが握手交わす話です。(ゲーマーなもので)

今回実写映像化に当たって脚本を担当するのは吉田玲子さん。アニメファンにはお馴染み。数々の京都アニメーション作品、ガールズ&パンツァー、弱虫ペダルシリーズ辺りでご存知の方も多いのでは。僕の中ではぶっちぎりでマジェプリ(銀河機攻隊マジェスティックプリンス)の吉田玲子さんです。あと劇場版の若おかみ。あんまり実写映画手掛けてるイメージないですけど初めてではないんですね。実写映画は白魔女学園以来5年ぶりのようです。僕はもう完全にアニメの脚本家さんのイメージなので、さてさて漫画原作からの実写手掛けるとどんな感じになるのかなとその辺りも興味津々で観てました。

上映終了。吉田玲子さんキレッキレでした。「あの原作ここまで組み直すかあ」とびっくりする。劇場版若おかみは小学生でもかなりの切れ味でおじさんまさかの劇場で大号泣でしたが、こちらはそうだなあ……

原作は少年少女のゆるゆるクライムコメディ。色々ありすぎて、クライミングジムの壁のように、ホールドがぎっしり詰まってる状態です。吉田玲子さんはその全4巻分のホールドを、丁寧に取り外して、100分の劇場作品に収まるよう、作品の核心を外さないようにしつつ、大胆に、本当に大胆に組み替えて、1本の課題を組んでしまいました。大体小寺さん金髪じゃないじゃん!田崎さんもメガネのカメラ女子ではなかったよね?本当に大胆すぎる。

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ほんとにびっくりなアレンジなのですが、核心は外してない。むしろ原作では表しきれなかった輝きが増してる気すらします。原作者の珈琲さんには大変申し訳ないのですが、原作では三級ぐらいだったグレードが、映画で初段ぐらいに上がってる感じです。

演者さんは、原作からさらに上がったグレードの課題を、懸命に登っていきます。古厩監督は、頑張る演者さんを、丁寧に丁寧に、余計な脚色はせず、音楽も足さず、静かに記録します。その結果、かつて自分が学生の頃に見ていた風景が蘇るような、とても自然な青春映画が出来上がってしまいました。小寺さんを見上げるうちに今を頑張ろうと走り出す伊藤健太郎くん扮する近藤くんを見て、英語の授業でネイティブな発音で話す女の子を、クラスの同調圧力に負けてちょっと馬鹿にした目で見た後で、それでも負けない女の子を眩しく思い恥ずかしくなるという思いを何十年ぶりぐらいに思い出す。勘弁してほしい。恥ずかしい。

原作では初段登っちゃう小寺さんですが、さすがに実写となるとそうはいきません。工藤遥さんの限界が映画の小寺さんの限界。でも今クリアできるか出来ないかという課題に懸命に挑む姿はとても眩しいです。劇中、失敗を気にする四条くんに「本気でやってんのを笑う奴なんてここにはいねーよ」と先輩の津田くんが言い放つ。原作にもあるシーンがあるんですがほんとそうですね。クライミングジムに行ったことがある人は分かると思うんですが、あそこにいる人達は七級ぐらいで四苦八苦するおじさんにも、生意気ヅラで三級二級に挑む小学生にも、頑張る人には声援が飛ぶ場所です。そのクライミングの世界が持つ素敵さはとてもよく出てたと思います。世の中こんな感じで初めての人は特にジムとか行き辛いと思うけど、いちどやってみて、工藤遥さん達がどんだけ頑張ってたのか知ってほしいなあ。ついでにボルダリング の面白さに気付いてもらえればなおよし。

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吉田玲子さんの大胆アレンジと、そこに挑む若い役者さんたちの頑張りと、それを丁寧に記録する古厩智之監督の実直さが上手く合わさってとても素敵な青春映画が生まれたのではと思います。派手さはないので退屈に思う人もいるかもですけど、僕はとても好きです。

最後に一言。四条くんの彼女役で出てくる中村里帆さんがめちゃくちゃ可愛くてよかったです。羨ましすぎるぞ四条くん。

以上、のぼる小寺さん観た感想文でした。
ではでは( ・ω・)/


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