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ドラゴンクエストに出会った時のこと

発売日に買いました。僕の記憶が間違ってなければ、福岡市は西新にあった、今はなきトポスで。もう35年前かあ。

ドラゴンクエストが世の中に出たのは1986年5月27日。そういえば僕はゲームの発売日をどうやって知ったんだろうか。多分ジャンプか。多分、そう。とにかく、学校終わって自転車飛ばしておもちゃ売り場に向かったっけ。「売り切れてないといいなあ」とドキドキしながら自転車こいでた記憶があります。転売屋に怯えることのなかった時代の話。でも、半年前に発売され大ヒットしたスーパーマリオ買うために、欲しくもない別のゲームも一緒に買わなければならない抱き合わせ商法はありましたな。幸いなことに、ドラクエは売り切れてもなければ、抱き合わせもされておらず、無事購入することが出来ました。売り場のガラスケースに5本くらいあったと記憶しています。他に購入する人が現れるでもなく、普通に買えた。発売日にきちんと入荷するかどうかも分からない時代でしたし、「やったー!売ってたよ!」という安堵感もあったかな。と、無事ドラクエを手にして、僕は家路を急いだのでした。

コマンド選択式RPGとの、初めての出会いでした。そういうものがあることは知っていました。が、RPGが遊べるのはパソコン。パソコンといえば数十万もするもので、当時の僕には高嶺の花。とりあえずお金がなくても見ることが出来るアーケードゲームと違い、遊ぶことどころか見ることもままならない状況で、マイコン・ホビー雑誌の誌面に躍るブラックオニキスやザナドゥを前に「なんだかすごく面白そうなものがある」と恋焦がれたものです。ウルティマやウィザードリィの存在も誌面で少し知ってる程度。そんな中、ファミコンでロールプレイングゲームが出るという。そういう記事をジャンプの紙面で見つけて、ときめかないはずがありません。しかもですよ。Dr.スランプの鳥山明先生がモンスターのデザインをされていて、そのイラストがゲーム画面でしっかりと表現されている。それを見た日からドラクエ貯金が始まり、発売日に無事手に入れ、いよいよファミコンにカートリッジを差し込みます。

コマンド選択式のゲームは、「ポートピア殺人事件」を遊んでいたので初体験ではありませんが、ロールプレイングゲームはドラクエの少し前に、ハイドライドスペシャルでその入り口を体験してる程度で、まだまだ理解できてるとは言い難い状況でした。というか、あの頃は初体験の連続です。改めてファミコンの何が凄かったかというと、子どもでは到底手にすることが出来ないアーケードやパソコンのゲームを、ブラウン管の中に持ってきてくれたことでしょうか。移植度は様々ですが、とにかく、雑誌の中にあった憧れを、目の前に持ってきてくれただけで、本当に魔法の箱のようなものだったと思います。

さてさて、そんな感じでドラクエと出会い、その面白さに魅了され、それをクラスの片隅で話してたら、その輪は徐々に広がって、ドラクエはシリーズを重ねてⅢが出るころには社会現象へとなっていくわけですが、1を初めて遊んで、一番衝撃だったのはランダムエンカウントの戦闘でしょうか。

「スライムがあらわれた!」

もう「なにごと!?」ですよ。日常で何かがいきなり現れることはありません。気をつけていれば。ビデオゲームの世界でも、いきなり現れるものはそんなに多くない。この頃はそうだなあ、スーパーマリオのプクプクはいきなり現れる感じですが、あとは割と、くるぞくるぞという感じがあった気がします。ところがドラクエは、いつ敵が襲ってくるか分からず、エンカウントしたら不穏な音楽と共に画面が切り替わって「スライムがあらわれた!」と告げられ「どうする?」とコマンド選択を迫られます。35年が過ぎ、RPGを散々遊んできた今ならば、あれはテーブルトークRPGで展開される、さいころ振って結果を見るゲームマスターとのやり取りを、コンピュータが代わりにやってくれてるだけって思えますが、当時はほんとになんにも分かってませんから、スライムがいきなり現れてびっくりです。

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しかもです。目の前のスライム、強いか弱いかよく分からない。大体この頃の僕にとってスライムっていったら、小さなバケツに入った緑色のゲル状のものです。でも、ブラウン管の中のスライムは青色で、しかもにっこり微笑んでいる。とりあえず殴ってみようと戦うを選ぶと、反撃を受けます。今や5桁6桁も当たり前なほど与えるダメージがインフレしているRPGの戦闘ですが、この頃は1ポイント1ポイントが非常に重くてですね。しかもエンカウント率も高めで、開始当初はスライムが強敵。ルールを理解せずやみくもに動いてスライムベスやドラキーに出会おうもんなら絶望が待ってます。

しかしながらその辛さも、経験を積み重ねることで逆転します。ファンファーレと共にレベルを上がり、倒して得たお金で装備を整え、積み上がった1ポイント1ポイントが、さっきまで強敵だったスライムを雑魚にします。

あの体験は強烈でした。ビデオゲームから受けた、今でも忘れられない出来事の一つです。堀井雄二さんが、僕らでも手に届くファミコンというおもちゃに向けて(あえてこう書かせてくださいね)鳥山明先生とすぎやまこういち先生という超一流の才能を盛り込んでウルティマやウィザードリィを翻訳して届けて見せてくれたことで生まれた、出会うことができた体験でした。けっこう奇跡に近い、大変幸運な出来事だったかもしれません。

あれから35年かあ。もうRPGで感動することは少なくなった……。と思いきや、龍が如く7でコマンド選択式RPGの魅力再発見したり、1ポイントの重さをミートピアで思い出したりと、まだまだRPGに驚き感動しています。それもこれもドラゴンクエストがあってこそ。ありがとう、ドラゴンクエスト。おかげさまで、僕のビデオゲームライフは大変豊かなものになりました。願わくば、あのファミコン版のドラクエが、今の世代で手軽に遊べるようになるといいな。35年ぶりに、スイッチさんあたりでドットのスライムに会いたいと思った35周年の夜でした。

サポート頂いたものは概ねゲーム会社に回ると思います