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山わらう季節に

伊豆半島は山の半島だ。川や海に沿った平地と盆地に開けた町のまわりには、なだらかな山が連なり、家々のすぐ裏手に里山が続く景色が、あちこちにある。
「山が笑ってる」
今朝、伊東の市街地に向かって車を走らせながら、なんだか嬉しくなった。

2月も半ばを過ぎると、伊豆半島ではあちこちで早咲きの桜が咲き始める。
雑木林では、コナラやクヌギなど葉を落とした木々が春の支度を始める。
寒風に耐えて灰褐色に固まっていた木々の芽が、少しずつふくらみ、赤や薄緑の色を帯びてくる。
そうすると、まるでその木全体が目を覚ましたように、むくりとふくらみ、明るい色合いに変わってくるのだ。

落葉樹が目覚めると、起きたての人や動物が手足を伸ばすように、山全体がふくらむ。
ちいさな微笑みであっても、確かに山は笑い始める。
今にコブシや桜が咲けば、柔らかい緑に包まれて、山は大笑いするだろう。

淡い色から濃い緑まで、さまざまな緑にさざめく山の景色に心躍る日を思い描いて、私も微笑む。
伊豆の春は、もうすぐそこだ。

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