アカデミックの成果と不甲斐ない自分の話

弘前市の街中にある複合施設ヒロロで行われた「令和4年度地域未来創生センターフォーラム」では、青森県の国立大学として弘前大学が地域と連携し調査・研究をおこなった成果が発表された。

2022年に同大学を卒業した自分は、学術の世界にある独特の”熱”と、先生方の”優しさ”と、「チ。-地球の運動について-」(魚豊)に感じたロマンに魅せられて、卒業後も大学とキッパリ分かれる事のないなぁなぁな状況にいた。

調べる、研究する、でどうするの?

シンポジウム自体は広く知られていない地域文化に関する調査や、除雪に関する研究など楽しく聞くことができた。

その中の一つの報告にて、とある文化資源において調査・研究によって文化財指定を得ることができたという旨の報告があった。(指定されたのは文化財であったかどうかは、記憶が定かでないが……)

なるほど、すごい。
と、純粋に思う一方、

「その文化資源に価値を感じる人はどこにいるのか?」
「そもそも、これは地域のためになっているのか?」
と邪な気持ちが入る。

登録されているが、活用されていない文化資源なんて大量にあるだろうと。
(大変失礼なことだが、批判は受けるつもりでその場で思ったことをそのまま書く)


いつまでも他人事な奴は批判されて然るべきだよねって。

象牙の塔という言葉がある。つまるところ「文化財指定を受けた。素晴らしいですね! で、活用って誰がやるんでしたっけ?」という話だ。

調べました! のあとって誰がやるのだろう。
それが決まっていないのに成果として語るのは時期尚早で、一般人のレベルでは何も変わってないのと同じではないか、自己満足ではないかと思ったのだ。

振り返るとお恥ずかしいばかりである。

その活用方法を考え抜くのが、民間であり、産学官連携の"産"の我々だということを棚にあげていたのだ。職務を全うしていないのは自分だった。


株式会社マジルミエ6巻で気づく

そんなもやもやを抱えてながら、ぼくはマンガを読んだ。
「株式会社マジルミエ」(岩田雪花/青木裕)の6巻を読んだ。

あらすじを説明する。

科学技術を用いて"怪異"を駆除する"魔法少女"が民間のサービスになった世界線の日本。愚直に、徹底的に準備し面接に臨むも連戦連敗中の就活生である主人公が、トラブルに巻き込まれたことをきっかけに、魔法少女ベンチャー企業に入社し、現場を重ねて成長していく物語。

「僕のヒーローアカデミア」(堀越耕平)のヒーローが魔法少女に置き換わったと言うと、言い過ぎだがそんな感覚だ。

さて、取り上げたいのは6巻の以下のシーンである。(ネタバレ含みます)

魔総研("怪異"を分析する研究施設)での実験中、従来の怪異が前例にない化け物へ変貌する。

対応を強いられる主人公たち魔法少女。
しかし、退治への活路を見出せない。

ラボの中で起きる異常事態に対して、研究所の所長一言が次のものだ。

萬田所長
 とにかくデータを取れ。俺たちは研究者だろう。
 研究者の仕事は正しいデータの採取とその共有だ
 無駄だと思っても良い、なんでも取れ

株式会社マジルミエ6巻/岩田・青木

研究者の仕事を「正しいデータの採取とその共有」と述べる。

萬田所長
 正しいデータを正しく使える会社は必ずある。
 退治をできる会社を見つけたら、それを全部送る

株式会社マジルミエ6巻/岩田・青木

ハッとさせられた。

データの採取とその共有をする研究機関と、そのデータを使う”会社”。
どれだけ、研究機関が優れていても、それを実装できなければ意味がなくなってしまう。民間が頑張ることは、お客様のためだけでなく、その技術やデータを作り出した研究機関もエンパワメントすることができる。

赤坂いろは
 御社と仕事ができたことを、改めて嬉しく存じますわ
 ー 研究と実績が繋がる仕事、本当に魅力的なお仕事

株式会社マジルミエ6巻/岩田・青木

同じ研究所に所属する魔法少女である、赤坂いろははこのように述べる。
なかなかんそんな仕事はない。しかし、自分の研究成果を、自分で実践し、それによって喜ぶひとを直接見ることができたら、さぞかし楽しいだろう。

研究員
 いやぁ終わったなぁ……
 ほら仕事戻るぞ〜
 さーてまた数値と睨めっこだ
 アハハ 頑張ろうぜ
 何かやる気出ちゃいました
 うん、ああいう魔法少女会社があるんだ。勇気もらえるよな

株式会社マジルミエ6巻/岩田・青木

前例にない化け物を退治し終わったヒトコマ。
「ああいう魔法少女会社があるんだ。勇気もらえるよな」
研究者は研究者の、魔法少女会社は魔法少女会社の主領域がある。
「あの製品に使われている、この技術は実はうちが作ったものなんだ」なんて言えたら、きっと誇らしいし、仕事を頑張ろうと思える。

こんな仕事ができるようになりたい。

自戒

少し大きい話をしたい、カッコつけだ。

このままの情勢が進むと日本はどうなってしまうのだろうと不安になることがある。自分だけではどうしようもできない、ほぼSF的恐怖である。

日本の明るい未来のために……なんて思って仕事をしている人は少ない。
自分は食っていくために仕事をしている部分が大きい。

しかし、自分が自社が頑張ることは、ほんの数センチでも希望のある社会に近づけていると思えると頑張れる。目の前の仕事をこなすだけでは、耐えられないこともある。それでも、頑張るかと思えるのはこの自意識過剰のせいである。

それぞれがそれぞれの領域で頑張っている。
解像度が低いが頑張っているのだ。

僕は僕の仕事をしよう。
そんな雑文。

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