落語?マジックカットの袋
語り:あるところに、調味料袋である
マジックカットの袋が転がっていた。
袋 :僕は、マジック・カットの袋。
家を追い出されたばかりだ。
なんでだって?
どこからでも切れるはずが、
意外と切れなかった。
それで、ヒステリックになって、
捨てられたんだ。
ゴミ箱で一生を終わりたくないから、
東京に出て来た。
ぱらぱらぱら…(雨が降る音)
袋 :やばい!雨が降って来た。
コンビニの屋根の下に行こう。
ハクション!寒くなって来たな。
風邪をひいてしまう…。
語り:彼はどうして良いか判らず、
おろおろしてしまった。
すると、少女が声を掛けてきた。
少女:どうしたの?見ない顔ね。
雨でぬれてるよ?
袋 :どうもしないよ。急に何だよ。
知らない奴に声なんか掛けて
大丈夫かよ。
少女:段ボールに捨てられた子犬みたいな
顔してるのに怖いワケないよ。
袋 :失礼な言い方だな。
少女:ごめんなさい。おわびするから、
ちょっと待ってて。
語り:すると少女は、コンビニで、
風邪薬と傘を買って戻って来た。
少女:はい、どうぞ。どうせ、
家にいられなくなったんでしょ?
私もなんだ。あ、もう日が暮れちゃう。
そこにネカフェがあるから、
一緒に泊まろう。
語り:何日かは少女にくっついていたが、
「いずれデカい奴になって会いに行く」
と言い残して、少女に別れを告げた。
しかし、宛てはない。
資格のいらない職を探し、
必死に頼み込んでホストになった。
そして、なんやかんやで
歌舞伎町No.1になった。
初めのうちは周りに感謝していたが、
「シャンパン・タワー入れない奴は
お断りだ。」
と言うようになった。
ある日、街を歩いていると
一人の女が現れた。
女 :マジック・カットの袋…
袋 :誰だお前は?シャンパン・タワー、
入れてくれるのかい?
女 :待ってるわ…
語り:そう言うと、悲しい顔をして女は
去って行った
袋 :なんだったんだ?今のは。
語り:マジック・カットの袋には、
女に覚えがなかった。
数年が経った。
ホスト界には、
マジック・カットの袋より、
若い世代が現れて、
No.1をかっさらって行った。
天狗になっていた
マジック・カットの袋は、
あっという間に圏外へ。
コンビニの屋根の下で、荒れていた。
袋 :ははは、ゼロに戻っちまった。
女 :本当、何もないわね。
袋 :お前は!何の目的か判らねぇが、
笑いたければ笑うがいいさ。
語り:そんな事を言っているうち、
雨が降って来た。
女 :くしゅん!
袋 :大丈夫かよ。
風邪薬と傘ぐらいは買ってやるよ。
語り:その途端、マジック・カットの袋は
デジャブを感じた。
急いで買って戻ると、
袋 :デカくなれなかった。
しかも、覚えていなかった。
すまない…。
女 :何言ってるの。
思い出してくれただけで十分よ。
語り:マジック・カットの袋は大粒の涙が、
あふれた。
こんなになってしまっても、
自分を待っくれていた人が、いた事に。
長年、切れなかった
マジック・カットの袋は、
ついに切れた。
※マジックカットの袋が初恋の女性と
再会する話。
一応オチはあるので落語です。
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