【読書記録】2022年1月

お久しぶりのnoteです。

読了するたびに記録をつけたいけれどなかなか時間がなく、今年からは1ヶ月ごとにまとめようと思います。


その中から数冊、特におすすめしたい作品をピックアップするのが今の私にはちょうどいいのかなと。

それでは2022年1月に読んだ作品をご紹介します✨


画像1

時間がない時間がないと言いながら、ちゃっかり12冊も読んでたんですね、、、

春、死なん/紗倉まな

【あらすじ】

70歳の富雄は息子夫婦と2世帯住宅で暮らしている。

妻は6年前に先立たれ、孤独を感じている彼は、1人慰めるしかなかった。

ある日、学生時代に1度だけ関係を持った女性と再会し、、、

【感想】

人はなぜか、歳をとると性欲がなくなると思いがち。

実際はそんなことないのに。

人間、何歳になっても恋をする。

性を生業とする紗倉まなさんだけが描ける本作は、

生々しい描写にも芸術を感じることができる。


家族じまい/桜木紫乃

【あらすじ】

美容師として働く智代(ともよ)は夫と2人で暮らしている。

ふとした時に自分の老いを感じるときが増えたこの頃、

妹から「お母さんが認知症になっちゃった」

という一本の電話。

父と合わず、実家を避けていた智代。しかし母のことが心配で実家に帰ることに。

【感想】

札幌を舞台とした、中年夫婦の老と向き合う本作。

まだ大学生の私は今ひとつ、「老い」がなんなのか、実態を掴めずにいる。

だけど、たまに、両親や祖父母の「老い」の瞬間を垣間見ることがある。

避けては通れない「老い」だけど、現実を見たくなくて目を逸らす。

自分のも、身内のも「老い」は見たくない。

いつかは見なければならない。

だから今から心構えをしておこうと予習を兼ねて、「老い」をテーマとした作品を読むのもいいのかな。


殺人依存症/櫛木理宇

【あらすじ】

捜査一課の杉浦は、6年前に息子を亡くし、未だ現実を受け入れられないでいる。

そんな中、連続殺人事件が勃発した。

捜査線上に浮かび上がった実行犯の男たち。

と、実行犯を操る1人の女の存在。

杉浦はこの女をどのように追い詰めるのか。

【感想】

最愛の息子を亡くしたことで、屍のように生きる杉浦と人を殺すことで生きる喜びを噛み締める女。

対照的だけど、少し似たような部分のある2人。

緊迫感と疾走感のある本作は一気読みがおすすめ。


エイジ/重松清

【あらすじ】

桜ヶ丘ニュータウンにある中学2年生のエイジ。

今年の夏、桜ヶ丘ニュータウンは全国的に名を轟かした。

連続通り魔事件が起こり、なんと犯人は中学生だったから。

ぼくもいつか「キレて」しまうんだろうか。。。?

【感想】

中学生、思春期特有の不安定さがありありと語られていた。

本作で何度も出てくる「キレる」という言葉。

子どもから大人への発達段階の途中である中学生は、

時と場合に合わせて「子ども」にも「大人」にもなる。


中学生の時、常に抱えていた複雑な感情を思い出した。


ドクター・デスの遺産/中山七里

【あらすじ】

「お父さんがお医者さんに殺された」

少年からの110番通報により明るみになる、安楽死という名の連続殺人事件。

20万円という格安で殺人依頼を受ける通称ドクター・デスとは何者か。


【感想】

人の命を奪う「殺人」と「安楽死」

殺人という言葉は非人道的に思われるのに、

安楽死というと非人道的とは思われない。

そこに奪われる側の意思があるかどうかの違いなのだろう。

しかし、

最善な治療法もなく、近く訪れる死からほんの少し手を加える延命治療。

本人の意思が取れなくても、どう足掻いても死から逃れられないのにもかかわらず、生きている人のエゴで治療を続けられることは、本人にとって生き殺しに近い状態なのではないだろうか。

読了後、そんなことを考えさせられる一冊。

人魚の眠る家/東野圭吾

【あらすじ】

プールで溺れた娘・瑞穂。

医師から告げられたのは「脳死」だった。

母・薫子は瑞穂に起こった悲劇を受け入れられず、最新機器を用いて娘を可能な限り生かすことにした。

【感想】

日本の法律では心臓死(=心停止)を持って死としている。

しかし、心臓が動いていても死とするものがある。

脳死。

しかしここも曖昧なもので、脳死とした社会的死は、脳死判定を行わなければ「昏睡状態」として最低減の治療が施されるのである。

つまり脳死判定をしなければ、心停止を待ち続ける他ないのである。

脳死の場合、心臓が動いていても社会的死として扱われるが、それを受け入れることができる人は少ないのではないか。


ほぼ脳死状態の娘に刃物を突きつけた母の

「今ここで娘を刺したら、私は殺人罪に問われますか」

「答えてください。娘を殺したのは私でしょうか」

という言葉。


本作もまさに、突然娘の身に起こった悲劇を受け入れられずに葛藤する話であり、涙なしには読めない作品。

誕生日の知らない女の子/黒川祥子

【あらすじ】

虐待を受けた子どもたちは、救いの手を差し伸べられた後も恐怖と闘い続けなければならない。

「お化けの声が聞こえる」

「ベットの下に何かがいる」

そんな子どもたちにとって、安息のである夜は戦いの時間となる。

大人になって、自身も子どもを育てるようになるとある葛藤と戦う。

「愛されたことがないから、子どもの愛し方がわからない」

虐待を受け、大人によって助け出された子どものその後の話

【感想】

虐待に関する報道はどんどん増えている。

このnoteを書いている今この時も、虐待の報道がなされている。

ほとんどの報道は、虐待の果て、助け出されることなくなくなってしまったケースと、その責任の所在に関するものばかり。

実際にはなくなるケースよりも保護されるケースが多いというのに。

私たちは、虐待を受けた子どもたちがどのような後遺症を抱え、大人になるのかを知らない。

いや、知る機会がないと言い訳をして、知ろうとしなかったのだ。

最後の医者は桜を見上げて君を想う/二宮敦人

【あらすじ】

とある病院の3人の医者。

桐子、福原、音山は大学時代の同期。 

桐子は死神と呼ばれ、残りの日々を大切に生きる道もあると説く。

福原は患者とともに奇跡を信じ、最後まで生きることを諦めない。

音山は2人のような強い意志を持っておらず、患者とともに悩み続ける日々。

対立する桐子と福原は大切な人の「死」に直面した時、どんな判断を下すのか。


【感想】

最初に読んだのは高校1年生だった。

まだ浅はかな考えしかなかった当時、桐子の生死観は道徳性に欠け、こんな医者は嫌だ。とまで思った。

けれど大人になってから読み返すと、現実を受け入れ、それを肯定してくれる人が1人でもいるだけで、残された命を大切にしようと思えるようになるのではないかと思うようになった。

涙なしには読めない一冊。

最後の医者は雨上がりの空に君を願う(上・下)/二宮敦人

【あらすじ】

とある大切な人との別れの後、桐子は病院を去り、小さな診療所を開く。

訪れる患者は皆、何かしら後ろめたい事情を抱えている患者ばかり。

ある難病を抱えた男女のカップル。

女性は福原を訪れ、積極的に治療を行う。

対して男性は治療を拒み、診断書欲しさに桐子の前に姿を表す。

そして、この男女を前にした福原と桐子はとある過去を思い出す。

彼らの生死観に多大なる影響を与えた1人の女性のことを。


【感想】

前作『最後の医者は桜を見上げて君を想う』に続く、生死観の異なる医者2人の話。

今作は、彼らが唱える生死観を確立するきっかけが収録されている。

彼らの置かれた環境と、

彼らの考えに影響を与えた1人の女性の存在。

「自分がこの環境に置かれたらどのような生死観を持つだろう。」

桐子と福原、2人の心の動きがさらに細かく描かれている。

生きるとは何か、死とはどういうことか。

ライトに考えたい人におすすめな一冊。


木曜日の子ども/重松清

【あらすじ】

閑静な住宅街。

この街は7年前、中学校の給食に毒を混入死、9人を死亡させるという衝撃的な事件が起こった。

そんな街に引っ越してきた「私」

私の結婚相手には14歳、中学2年生の連れ子がいる。

連れ子の晴彦は、7年前に事件を起こした犯人「ウエダサマ」に似ているらしい。

この夏、ウエダサマは社会復帰し、世界の終わりを見せるために再びこの街に降臨したという噂が流れ始める。

その噂はやがてこの街の雲行きを怪しくし始め、とうとう不可解な事件まで勃発するように。

「ウエダサマと晴彦はどのような関係があるのだろう」

晴彦との距離を掴みかねている私は、噂を確かめたいが、真実を知るのが怖い。

【感想】

重松清さんの作品は片手で数えられる程しか読んだことがない。

その多くは、多感な年頃の子どもを勇気づける作品が多いように感じる。

実際、私が読んだ作品もそうだ。

『エイジ』に並び、思春期である中学2年生の男の子が主人公の本作。

晴彦はおそらく同年代の子どもよりも大人びている。

共感力も高く、感受性も高い。

だけど子どもの一面もまだ十分に持ち合わせている。

父親である「私」は、そんな晴彦とどう接していいかわからず、距離を感じている。


14歳という年齢は1番難しい。

生まれた時からそばで過ごしている人でも、距離感を掴むのは難しい。

ではなおさら、「私」はこの年頃の子どもが連れ子として一緒に暮らすのは複雑だろう。

本作の魅力はとても静かに物語が進むことである。

物語の核心である「ウエダサマ」

彼が近づいているのにも関わらず、日常が描かれている。

海の底から大きな何かがやってくるように、「ウエダサマ」が近づいてくる恐怖に耐えた時、

世界の終わりが見える


星の子/今村夏子

【あらすじ】

中学3年生のちひろは健康優良児。

風邪ひとつひかない。

父も、母も、そう。

それは「金星のめぐみ」という水を飲んでいるから。


【感想】

人はなにかを信じながら生きる。

その「なにか」はそれぞれ違う。

確固たる信念は時に判断力を低下させるが、当の本人はそれに気づいていない。

特定の宗教を信じる

日本に暮らす者にとって違和感となるこの言葉だが、その人にとっては心の拠り所となり、幸せに生きるための道標なのだろう。

ちひろの両親は、幼少期に病弱だったちひろが「金星のめぐみ」という水を使ったことで新興宗教にのめり込むようになった。

ちひろは物心つく前から身近にある宗教だが、成長するごとに周囲の環境と自分の置かれている環境に疑問を生じるようになる。

両親との関係、親戚との関係、友達との関係を客観的に見れるようになったちひろ。

次第に「信じる」とはなにか、言葉には出さないけれど、ちひろの言葉ひとつひとつに含まれたこの言葉は私たちにも問いかけているのであろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?