辰巳(2024.4.20.公開)
自主映画『ケンとカズ』で、多くの映画ファンの度肝を抜いた小路紘史(しょうじ・ひろし)監督が、8年の時を経て新たに生み出した待望の新作『辰巳』(たつみ)。
日本のリアルな裏社会を描きながら、小路監督曰く「日本的なものを極力排除した」無国籍ムードが全編に漂うフィルム・ノワール。(公式サイトより)
前作『ケンとカズ』ファンの方は、待ち侘びた新作だと思いますが、わたしは縁あっての逆、縁がなくて何度も鑑賞機会を逃していた作品。
8年前、映写機トラブルで泣く泣く映画館を後にしたあの日のことは今でも忘れません。
生きてるといいことがある。
先日、ユーロスペースで『辰巳』公開にあわせて『ケンとカズ』の上映があり、別の映画館の貸しをユーロスペースさんにキッチリ返してもらいました。
あまりある利子をつけて。
今作『辰巳』については、
昨年の東京国際映画祭で、一般公開では実現しないであろう丸の内ピカデリーのシアター2の大スクリーンで鑑賞しましたが、半年経っても色褪せていません。
それどころか、『ケンとカズ』を観たせいか、『辰巳』にも共通する修理工場やヤバい世界の空気感が鮮明に蘇ってきました。
鑑賞前は、小路監督の作品を初めて観られる興奮が大きかったのですが、鑑賞後は『ケンとカズ』が話題になった理由がよく分かったとともに、
辰巳役の遠藤雄弥という俳優の凄まじさ、
なぜこの人がもっと表舞台に立っていないのかという憤りも混じった興奮に変わっていました。
もちろん遠藤雄弥さんのことは知ってはいましたが、若い頃のイメージしかなく、『辰巳』が彼のこれからのキャリアを変えてゆく大きな契機になると信じています。
『ゴジラ-1.0』での短い出演時間でも、しっかり爪痕を残しているのも記憶に新しいです。
彼の生きてきた時間が滲み出た演技と顔を大スクリーンで観れたこと、ホントにありがたく思います。
『ケンとカズ』を観て確信しましたが、
小路監督作品のキモのひとつは「顔」ではないでしょうか。
映さないことで伝わることもありますが、映すことで伝わること。
辰巳だけでなく、各キャラクターの顔を観るだけでも楽しめる作品です。
上映劇場はこちら
作品とご本人の佇まいにギャップがある小路監督。なぜこのおとなしそうな方がこんなハードな物語を紡げるのか。
それも小路監督の魅力なのかもしれませんね。
次回作はラブコメを考えていると。
もう観たいに決まってるじゃん!
(まるゆ)
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