分析できるアンケートの作り方 ~そのアンケートでは何もわからない~
まさか、こんなアンケート、作ってませんよね?
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質問1:あなたの年齢を教えてください
10代 20代 30代 40代 50代 60代以上
質問2:あなたは、携帯電話/スマートフォンをお持ちですか?
はい いいえ
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もし、このアンケートの質問事項に、何も違和感を覚えないなら、あなたはこの先を読むことで、正しいアンケートを作れる知識を得るでしょう。
もし、違和感を感じたなら、あなたはアンケート作成のセンスをお持ちです。この先で説明する内容は、すでに理解しているでしょう。
<後半有料>
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<もくじ>
1章 はじめに
1.1 アンケートは簡単ではない
1.2 アンケート分析できるアンケート作成の流れ
2章 Plan(目的) 問題定義
2.1 理想 : 何をしたいのか?
2.2 現実 : 何を知りたいのか? ⇒ここから下は有料
2.3 ギャップ(-) : 出た結果をどう分析するか
・回帰分析(Excelでの分析の仕方紹介)
・クラスター分析(専用ツールDL可)
・コンジョイント分析(専用ツールDL可)
・テキストマイニング(無料のテキストマイニングURL紹介)
3章 Plan(計画) アンケート設計
3.1 誰に聞けばいいのか?
3.2 何人に聞けばいいのか?
3.3 どのように聞けばいいのか?
3.4 何を聞けばいいのか?
3.5 どの順番で聞けばいいのか?
3.6 どの環境で聞けばいいのか?
3.7 いつ(次期、タイミング)聞けばいいのか?
3.8 いくら費用をかけるのか?
4章 Do(実行) → Check(調べる) → Act(判断)
4.1 Do(実行) アンケート実施
4.2 Check(調べる) 分析
4.3 Act(判断) 分析結果をどう読み取ればいいか?
5章 まとめ
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<1章 はじめに>
1.1 アンケートは簡単ではない
周りの声:「アンケートで聞けばいいじゃん」
簡単に言ってくれますが、そんなに簡単な話ではない。
「アンケートを取ったはいいけど、これ、どうやってまとめればいいの?」
ということはないだろうか?
実は、アンケートを作るには、心理学、統計学、経済学、問題発見力などの知識や技量が必要である。具体的には次の項目があげられる。
・何をしたいのか? (問題発見力)
・何を知りたいか? (問題発見力)
・出た結果をどう分析すればいいのか? (統計学)
・誰に聞けばいいのか? (統計学)
・何人に聞けばいいのか? (統計学)
・どのように聞けばいいのか? (心理学)
・何を聞けばいいのか? (心理学)
・どの順番で聞けばいいのか? (心理学)
・どの環境で聞けばいいのか? (心理学)
・いつ聞けばいいのか? (心理学)
・いくら費用をかけるのか? (経済学)
・分析結果をどう読み取ればいいのか? (問題発見力)
多くの場合、これらを考慮せずにアンケートを実施してしまい、せっかく時間とコストをかけて取ったアンケートを十分に生かせないままで終わらせているものをよく見かける。
もっとも最悪なのは、アンケートを取ることが目的となり、分析もせずに生データを棒グラフで並べて終りというものである。
では、周りの誰かがアンケートの作り方、分析の仕方を教えてくれるのかというと、正直見当たらない。教えてくれないのだから、できなくて当然である。
ここでは、「アンケート分析をしたい。そのために、分析ができるアンケートを作成したい。」といった目的を持った人に特化して解説を加えていく。もちろん市販されている本も多数あるので、それで勉強してもらうのもいいと思う。
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1.2 アンケート分析できるアンケート作成の流れ
アンケートは、最初の計画でほぼ決まる。PDCAに当てはめるとわかるが、やることのほとんどがPlan(計画)であり、全体作業のほとんどを占めている。
Plan(計画)以降はおまけぐらいの感覚である。本テキストの解説でもPlan(計画)の部分が全体の9割以上を占めている。
おそらくアンケート作成をしたことがある人が違和感を覚えるのが、出た結果をどう分析するかをかなり早い段階で検討している事である。結果が出てから分析方法の検討を行う人が多いが、これは間違いである。結果が出る前に分析方法を決定し、理想と現実のギャップを実施するアンケートにて測れることを確かめておく必要がある。
◆Plan(計画)
★問題定義 「問題=理想ー現実」※
• 理想:何をしたいのか?
• 現実:何を知りたいのか?
• ギャップ(-):出た結果をどう分析するか
★アンケート設計
• 誰に聞けばいいのか?
• 何人に聞けばいいのか?
• どのように聞けばいいのか?
• 何を聞けばいいのか?
• どの順番で聞けばいいのか?
• どの環境で聞けばいいのか?
• いつ(次期、時間、タイミング)聞けばいいのか?
• いくら費用をかけるのか?
◆Do(実行):アンケート実施
◆Check(調べる):分析
◆Act(判断):分析結果をどう読み取ればいいか?
※ 問題=理想-現実
問題とは、理想と現実のギャップ(-)である。これらが明確になっていない場合、何が問題が不明である。これに関しては、YouTubeやnoteにて私が解説しているので、興味のある人はご覧ください。
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2章 Plan(目的):問題定義
2.1 理想:何をしたいのか?
さて、いきなりだが、目的をひっくり返す。
「アンケートをしないと、あなたが抱えている問題は解決しないのでしょうか?」
言い換えると、
「アンケート以外で、あなたが抱えている問題を解決する方法をあげてください。」
ということである。
アンケートはかなり不確実な手段である。対象者全員に聞いたとしても、明日になったら全員が違う事を言っているということがあっても不思議ではない。またアンケートは無料ではない。人数によっては比較的大きな金額が発生する。まとめるのにもあなたの時間がかかり、それも費用である。
「今までもアンケートで聞いてきたから。」
とか
「アンケートをしろと言われたから。」
という人は、ここで考え直してみるといい。目的を達成できる他の手段を挙げ、コストや時間、結果の期待を考慮したうえで、手段として最適なものがアンケートとなることを確認してほしい。
この時点で、意外と自分が目的を明確に理解していないことに気付くかと思う。
「あれ?なんでアンケートとるんだっけ?」
これに気がついたら、あなたが抱えていたと思われる問題の半分は解けたも同然である。これを機会にあなたが抱えている問題とは何かをじっくり考えもらいたい。
このアンケート分析の研修やセミナーを行うと、多くの方がこれまでやっていたアンケートが無意味であることに気づき、アンケート以外の方法で客観的なデータを集める方法を見つけ、アンケートを行わないという手段をとる。
ここから先は、アンケートが情報収集にて有利な手段と、関係者の全員が納得したとして、話を進める。
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2.2 現実:何を知りたいのか?
アンケートによる調査の型の種類は大きく分けて以下の2つに分かれる。1つのアンケートにて以下の2つを聞く場合もある。
1)事実発見型アンケート(問題未知)
「何か起きているかもしれない」ということを調べる。
特に何をしたわけでもないが、世の中の変化、動向、意識の移り変わりなどを定点観測的に調べたい時は事実発見型になる。1回聞いて終りではなく、間を開けて数回聞き、時間的な変化を追って前回の回答との差に注目する。また、自由記述などがある場合、アンケートを実施する側が気付いていない問題を指摘してもらえることがある。
問題と思われるものが事前に多く想定されるが、どの問題の重要度が高いか不明な場合などもある。問題と思われるものが少ない場合は「仮説検証型アンケート」で問題の掘り下げができるが、そうではない場合は「事実発見型アンケート」で問題の絞り込みを行う必要がある。
難点としては、何が起きるのかが不明な段階で聞く項目を作る必要があるため、世の中の変化の動向によっては聞きたい項目がアンケートに入ってない場合が発生する。そこで新しい項目を追加すると、アンケートの印象が変わってしまい、以前の結果と比較できなくなる場合がある。
また、状態や環境が変わらない状態で、複数回アンケートをしても、傾向が全く変わらないということもある。逆に、なにか大きなイベントが起きた後は、アンケートの傾向が変わりやすい。
例: ・意識調査(職場の雰囲気調査、お客様の意識調査)
・飲食店の満足度調査、研修受講者満足度など
2)仮説検証型アンケート(問題既知)
「条件を変えたので、変わったはずだ」ということを調べる。
見やすくなるように配置を変えた、取りやすくした、おいしくなるように味を変えた、価格を下げたなど、意志を持って変えたが、その結果を受容する側が本当にそのように感じているのかを調べる。
「きっとこうだろう」「改善をしたので、向上しているはずだ」などの予想があり、その予想が合っているかどうかを証明したい時は仮説検証型になる。これは1回限りで、同じ人に複数回聞くことはない。
アンケートの作り方によっては、自身の正当性を有利に証明するように誘導することが可能である。無意識にそのようにアンケートを作ってしまい、アンケート結果と実態が乖離してしまうことがあるのでそこは注意が必要である。
逆に、わざと自分に有利になるようにアンケートを作ることもある。お客様の声で、CMや広告に使うため良い反応を多く集めたい時などである。ここでは、正しく分析することを目的にしているので悪用厳禁!
例: ・新商品アンケート
・官能評価実験アンケートなど
◆気が付いていないことは答えられない
アンケートの回答者とアンケートの実施者の両方が気付いていないことを調べることはできない。アンケートは顕在ニーズ(既知の要求)だけを調べることができる。潜在ニーズ(未知の要求)はアンケートによる分析だけでは難しい。行動心理学やインタビュー、自由記述の共通性から仮定を立てて、仮説検証型アンケートにて証明するしかない。
特に大事なのが、アンケートが終わった後に語られる何気ない一言である。「そういえば、これって表示が見えにくくてどっちを押せばいいか迷いましたよ。」のような。ここに回答者の本音や潜在ニーズのヒントが隠されていることが多い。
◆アンケート結果の満足度が高い場合は改善ができない
アンケート結果が「とてもよかったです」「満足でした」では、何も変化をする必要性が無い、改善の必要性が無いということになる。つまり、アンケートを実施した結果、「問題無し」となれば、アンケートを実施しなくてもよかったということである。
よく考えてもらいたいのは、目的である。アンケートを実施して、その後何も行動をしないことが、本来やりたかったことなのだろうか?
おそらく違うはずである。何か行動を起こすために、何かを改善するための指針を得るためにアンケートを実施したのではないだろうか。結果として欲しいのは、「満足」ではなく「不満」や「不足」である。
なお、「不満点」を聞くのはいいが、「改善案」を聞いてはいけない。例えば、「どうすれば製品の騒音が気にならなくなりますか?」や「職場の雰囲気をどうすればよくなりますか」と聞かれても、回答者は知ったことではない。改善するのはあなたであり、回答者ではない。
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