-5-■サイボーグロボがもたらしたもの

 不思議なもので、「サイボーグロボ」が好調になると今度はその素体に着せられるアウトフィットの要望が高まってくる。そこで1977年の春に急遽「変身セット」の再版と新製品がリリースされることとなった。「グレートマジンガー」「ゲッターロボ」「ゲッターロボG」の再版に加え、「ゲッターポセイドン」「ゲッターライガー」「アステカイザー」「バトルホーク」「怪傑ズバット」の5種の「変身セット」が新たに発売されたのだ。

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 特撮系の作品であるアステカイザー、バトルホーク、ズバットに関しては、それほど期待はされておらず、特にアステカイザー、バトルホークは放送終了直後であったが「ゲッターロボG」の実績から再放送を見込んでのラインナップとなっている。また、ゲッターポセイドンも劇中のイメージからかけはなれていたことから敬遠されることも多く、80年代になっても店頭で見かけることができたという。結論からいえば、この春に発売した「変身セット」はどれも成功とはいいがたかったが、「サイボーグロボ」の成功は、それを補って有り余る売り上げをたたき出していたのだ。

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 成功していないとはいえ、「変身セット」は平日売りの商品として定着しており、堅調な数であったが、期待値には及んでいなかったというのが真相のようである。この「変身セット」の空振りの背景にはこれまで「安いものがよし」とされていたおもちゃ業界をとりまく意識の変化によるものが大きい。この時期は前年にポピーが発売した「コンバインボックス」が当時としては破格の7900円という金額で大ヒットを飛ばしており、高額玩具へのハードルが大きく下がった時代でもあった。小売店において通常のおもちゃを7個以上売るよりも「コンバインボックス」を一個売った方が効率が良い。小売店としてもこうした高額商品は魅力的だったのだ。そのため高額商品である「サイボーグロボ」は「変身セット」よりも流通に歓迎されやすいという一面もあった。「変身サイボーグ1号」の遺伝子を根絶の危機に追い詰めた高価格帯問題が、今度は逆に生き延びる要因となったのだから皮肉な話といえよう。タカラは「サイボーグロボ」を前面に押し出したプロモーションを展開。「少年サイボーグ」を流用した「サイボーグロボ プライザー」「サイボーグロボ マイティ」の発売、ソフトビニールとプラスチックを上手く使い分けた「サイボーグロボ武器セット1 大車輪アタック&ガ・キーンヌンチャク」「サイボーグロボ武器セット2 ガ・キーン重戦車」「サイボーグロボ武器セット3 マッハウィング」、これすべてをセットにした「バリアントアンカーフルセット」を展開。振り返ってみるならばガ・キーンの武器をすべて商品化した唯一の商品ラインであったことは特筆にあたるだろう。

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 この『マグネロボ ガ・キーン』の展開にあわせて、タカラでは後番組「超人戦隊 バラタック」の開発が進められる。前作同様、メインラインは「マグネモ」が中心となるが、「サイボーグロボ」でも開発が進められ『超人戦隊バラタック』の放映とほぼ同時に「サイボーグロボ バラタック」を発売する。素体にはこれまでのように「変身サイボーグ1号」ではなく「アンドロイドA」が選ばれることになった。これは、コスチュームヒーローキャラクターの素体を無理くりロボットキャラクターに当てはめるのに無理があったこと、ソフビを主体とした構造ではどうしても高級感が出せないことからの苦肉の策であった。「サイボーグロボ バラタック」は、「アンドロイドA」の流用部品は胴体、上腕、太腿のみで後は成型品による新規造形となっている。最大の特徴は「アンドロイドA」の胸部開閉機構とエンジン換装ギミックを流用して、メッキのペンタゴラスを収納できる点にあった。劇中では5つのメカが合体したペンタゴラスからビーム状のテレパシーが照射されバラタックを遠隔操縦する。それがマグネモのギミックとしては活かすことができず、ペンタゴラスとバラタックの「マグネモ」はサイズも大きく異なるために連動して遊ぶことが出来なかった。「サイボーグロボ」ではこの点をペンタゴラスを収納することで解決している。

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 このおもちゃのギミックは番組でも取り入れられ、途中よりペンタゴラスがテレ・インジェクト形態(テレパシー放射するために変形した姿)となった後、照射されたテレパシーがペンタゴラスのような形状となりバラタックに注入(エスパー・ジェクター)され、バラタックが起動するといった具合にバンクシーンが追加・変更された。この変更の効果は絶大で、「サイボーグロボ バラタック」の売り上げはしり上がりに上昇。急遽、「サイボーグロボ ブラックバラタック」「サイボーグロボ ブルーバラタック」「サイボーグロボバラタック用パーツチェンジセット」「サイボーグロボバラタック用ターボパーツセット」を発売している。残念ながら「グリーンバラタック」はカタログ掲載のみで発売はされなかった。

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