地テシ:306 三宅健さんと橋本じゅんさんのオセロ
今回の「ミナト町純情オセロ」は、実はいつもよりちょっと短めの公演期間なんです。だもんで、気がついたら早いもので明けて今日(3/19)で東京公演も中日(なかび)です。ありがたいことに、今のところなんとか無事に進行しております。
少し長めだし、しかも悲劇であるにもかかわらず、おおむね好評を頂いておるようでしてホッとしております。
今作は12年ぶりの再演なのですが、キャラクター設定が大幅に変わっておりまして、それはそれはホントに色々と変更されておりまして、なんだかもう新作のような気分で取り組んで参りました。
まだまだ本番中ではありますが、そういった変化についてちょっとずつ、あまりネタバレしない程度に書いていこうかなとか思っております。
例えば主役であるオセロ。12年前は劇団員の橋本じゅんさんが演じておりまして、まあじゅんさんのことですから、全体的にコテコテなギラギラしたオセロでした。メイクも濃かったし。
あと、じゅんさんがつい笑いを取りに走ってしまい、いやそれは別に良いんですが、ただ、原作のイアゴーにあたる伊東郷を演じて頂いた田中哲司さんがゲラなんです。笑い上戸なんです。だもんで、じゅんさんの面白演技や面白顔につい笑ってしまうんですよね。結果的になんだかオモシロおかしいシーンになっちゃっていたりもしました。
今作でのオセロは三宅健さん。ご存じの通りの二枚目です。そりゃもう超絶な二枚目なんです。
しかも、どこか影というか憂いというか、色気を含んだ陰がある上に笑顔がまたキュートで可愛らしいんです。
要するに橋本じゅんさんとは全く違うタイプというコトなんですよ。じゅんさんが背脂チャッチャこってりスープの豚骨醤油ラーメンだとすると、健さんは丁寧にアクを取って琥珀色に透き通ったスープながらも旨みの濃い鶏そばのようなのです。ええと例えでお腹が空いてしまったらすみません。
ラーメンはいいとして、まあとにかく、演じる俳優がこれだけ違えば、自ずと脚本も演出も変わってきます。そして今のバージョンの純情オセロができたというワケです。
とはいえ、骨格としては同じ話ですので、これまでの三宅健さんではあまり要求されてこなかったような演技や表情、仕草なども演出されるワケでして、結果としてこれまであまり見たことが無いような健さんが見られるってコトですよ。
ええと、橋本じゅん的な、いや、全然違うんですけど、ちょっとコッテリした、というかクセのある場面もありまして、綺麗な鶏そばにあえて鶏油(ちーゆ)を垂らしたような部分もありまして、これがまた上品ながらもパンチのあるコクを生み出していたりもしているのです。ああ、またラーメンで例えてしまいました。
今回、三宅健さんは初めてのカンパニー、慣れない関西弁という難しい条件の中にもかかわらず、素晴らしくも新しいオセロを作り上げて下さいました。シェイクスピアのオセローでも、12年前の藺牟田オセロでもない、新しい亜牟蘭オセロとして、日々新鮮に舞台に取り組んで頂いております。我々劇団員も日々刺激を受けながらステージに立っております。
既に全ステージの1/4が終わってしまいました。ぼやぼやしていると新しいオセロを、新しい三宅健さんを見逃してしまいますよ。是非とも劇場でお確かめ下さいませ。