第11話 駅封鎖

内川に先導され警官が紙袋に近づき中身を見た時、タイマーの時間表示は20分を切っていた。

「近くに爆弾があります!この場から離れて!!」

2人は声の限り叫ぶ。逃げ惑う人々。コンビニをはじめ、近くの商店も店を開けたままで店員も避難する。そんな状況下でも略奪する者もいるが今はかまっている場合じゃない。

別の警官により本部通報されたが爆弾処理班が到着するのを待つ時間はない。

駅が封鎖されたのは坂本が出口を抜けたあとだった。なにが起きているのか理解できないまま坂本は走っていた。

坂本さん、間に合わない・・・。


途端に2度目の爆発が起こり坂本は巻き込まれる。悲鳴の中、坂本を発見した内川は人々とは真逆の方向へと向かう。

爆風に倒れた坂本に襲いかかろうとする男がいた。飛び上がりざま内川は男の右上腕部から背中にかけて、それから右大腿部裏に蹴りを放った。倒れ込んだ男は駆け付けた若い警官に取り押さえられた。


「あなたのその勇気には敬服するけど、ちょっと無謀ですよ」


警官にそういわれるも、「勇気とかそんなんじゃねえんだよ」内川はそう思っていた。


「ええ。でも咄嗟に身体が動いて・・・」


爆風に巻き込まれ、そして一度刃を受けた坂本は救急車へと運ばれる。

「それにしてもフォームが美しかった。ご経験でも?」

「若いころに少しばかり格闘技を」


左脚からの2度の蹴りは的確に的を捉えていた。

「自分にもご教授願いたいなぁ」


いやいや、そんなそんな。またまたご謙遜を。


吹き飛ばされたコンビニの一部。警察車両や救急隊、それ以外にも多くの野次馬が集っている。

ワイドショー的な好奇心。

結局は他人事で自分にそんな大事が振りかかるかもしれない、なんて、自分が当事者になるかもしれない、なんて、今此処に集まった人々は誰も思わないのかもな。
見てる分には数多ある娯楽と同じだ。

これで歴史は変わらずに済んだのだろうか。しかし、この時代の俺は何処でなにをしているんだろう。2人にそれを聞いてみるのはなんだか無意味な気がしていた。

それに、2人がすべてを知っているとはかぎらない。


「爆発から守れなかったよ・・・」


そういう内川を、これでいいのよ、とアサミが励ました。

一先ず安堵はしたが、内川に達成感や充実感はなかった。ただ、疲労感だけがのしかかる。

坂本は大丈夫だろう。とりあえず2人のもとに戻ろう。



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