第10話 3年後
坂本が二度目の襲撃を受ける時私は9歳でケイはまだ生まれていない。だから、私たち直接的にはヤツらと対峙できないの、とアサミはいった。
「でもちょっと待って。あの台風の日ケイが僕を助けたことも過去を変えたことにならないか?」
「確かに倒れている内川さんを見て、救急隊を呼ぶようにいったのは私。だけど、実際には他にも人が居て、外の様子を見に出てきた近所の人ね。その人に頼んだの。だから私がその場に居合わせなくても、その人によって救急隊は呼ばれていたわよ」
ケイの説明は理解できたようなできなかったような感じだったが、大前提として、あくまでも過去は変えてはならない。
「じゃあ、どうやってヤツらと・・・」
「いい?今の私たちからすると過去。でもあなたにとっては未来。駅前で爆弾テロが起こる。私たちは爆弾の設置場所も探し出してるから、ヤツらが仕掛けたあと『爆弾のような物がある』と通報して」
「分かった。とにかく行こう」
3人は3年後の世界へタイムトラベルする。
「あーちゃん、お名前なんていうの?おじちゃんに教えてあげて」
坂本の妻に施されて幼女はいった。
「さかもとあさみです」
よくできたね、えらいねと頭を撫でられている姿を思い出した。なんとしても止めないと、あの娘の父親はこの世から消えてしまう。焦燥感と使命感が内川を包み込む。
「爆弾は2ヶ所、気をつけてね。できるだけ離れて」
ありがとう。
改札近くの駅事務所に知らせればいいか。そう思いつつ見渡せば交番があることに気づいた。少し離れてはいるが。
「制限時間は90分。発見して通報するまで5分として、あまり時間はない」
ワイヤレスイヤホンで音楽を聴いている態で座っていた。そういう目で見るとみんな疑わしくも見える。それぞれの用件で駅に居るのだけなのに。
「今よ、内川さん。早く」
内川は小走りで交番を目指す。
「もうすぐ坂本が改札に差し掛かるわ」
はじめはまともに相手にしてもらえなかったが、「そんなに言われるなら一応見てみますかね」
平和ボケしてやがる、内川はそう思ったが仕方がないことかもしれない。そんな、なにか映画やドラマの一場面のようなことに遭遇するとは誰も思わないだろう。
駅ビル近くのコンビニ入口からさほど離れていない場所に無造作に置かれている紙袋、気づかないこともないだろうが誰も気にする様子もない。
「なんか変な、なにかをカウントするような音がしてるんです。まさか爆弾かも?」
きっとその手の通報は無数にあって、若い警官は、またか、とでもいいたげなようだがこれは間違いなく爆弾なんだ。
少し離れた別の場所で規模は大きくないが爆発が起きて、「た、大変だ・・・」途端に若い警官は狼狽えだした。
「今のは囮(おとり)。次のが本番よ、急いで」
ハッキングした監視カメラの映像を見ながら話すケイからも緊張が伝わる。
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