第9話 過去から未来

最後に坂本に会ったのは彼が入院している病院だった。
いつものカフェで少しの間マスターが店をあけている間に坂本が倒れ、内川によって緊急通報がされた。


「少し休め、ってことですよ」


そうかもしれない、といってその時紹介されたのが奥さんと3歳になったばかりの娘さんだ。


「この子が立派に成長するまでは死ねない、死にませんよ」


坂本夫妻と娘、4人揃って看護師さんに写真を撮ってもらった。自分にも子供がいるのでその気持ちはわかります、内川はそういった。


「内川さんのお子さんは男の子?女の子?」


坂本の妻の問いに男の子だと答えると


「命の恩人の息子さんだ。この子は内川さんの息子さんと結婚させる!」

「あら、今のご時世、そんなこと無理よ。それにこの子が承諾するかしら?」

「そうですよ。それにもし、そうなったら凄い歳の差婚だ」

息子の歳を聞かれ答えると

「でも12歳差なんて、そんなに珍しくもない」

「あら、すっかりその気だわ。パパ、言い出したら聞かないからどうしましょ?ねえ、あーちゃん」


けっこんて、なあに?キョトンとする幼女を見て3人で笑いあった。



「のちに坂本はまた襲撃されるけどその時もまたあなたに助けられる。なんだか不思議な巡り合わせよね」

坂本さん、それほど重要人物なのか。

「内川さんが間違って乗ったヤツらのタイムマシーン。そこで自分達の襲撃計画が漏れたと思われた」

実際にはそんな話は聞いていない。

「事実はどうであれ、ヤツらはそう思い込んだのよ」

「いちばん大きいのは、あなたが坂本を二度も助けたこと。まず、現在(いま)から2年前最初の襲撃があった」

思い出した。環境活動家の坂本恭一氏が襲われたことはニュース番組でも大々的に報じられた。

真自由連合はその後もたびたび警察と衝突し、ついには壊滅に追い込まれた。「一度はね」ケイはそう言った。


「そこからさらに5年後、つまり、あと3年後二回目の襲撃がある。今、私たちを追っているヤツらも未来から来てる」


タイムトラベルにテレポーテーション。内川は現在の自分はどこの時代に居るのか混乱していたが、ようやくまだ、あの日の台風の夜の年に居ることを理解した。

混乱していてもそれを表に出すことはほぼないため、周囲からは常に冷静に見えるがそうじゃない。

これから坂本さんがまた狙われる。なんとか阻止しないと。
過去は変えられないし変えてはならない。だが、未来なら変えられる。


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