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変わらない君だけがいつもそこにいてくれた

佐野元春 & THE HOBO KING BAND 30周年アニバーサリーツアー Prt3
2011年6月19日 “ALL FLOWERS IN TIME”東京ファイナル in 東京国際フォーラムライブレポート

Eストリートバンドのドラマー、マックス.ウェインバーグは「BOSS(ブルース.スプリングスティーン)からバンドの解散を告げられた時、音楽活動自体を辞めようと思った」と言う。

2010年、佐野元春レコードデビュー30周年。
そのキャリアの前半14年を共にしたバンド、ザ.ハートランド。彼らはバンドの解散を告げられた時にどう感じたのだろう。

その後のザ.ホーボー.キング.バンドは今年結成15周年を迎え、今ではザ.ハートランドよりも長く佐野さんの音楽を支えてきた。
早くにホーボー.キング.バンドに合流した元ハートランドメンバー、ドラムス古田マイティーしーたかに続き、2010年3月より元ギター長田進が合流。これにより、ホーボー.キング.バンド ミーツ ハートランドとも呼ばれた。

2010年8月より始まった30周年アニバーサリーツアーは3つに分けられ、それぞれスポークンワーズ、全国クラブサーキットツアー、大都市を廻るホールツアーとして開催され、そして、この日、東京国際フォーラムで前日に続き東京ファイナルとして開催されるライブでグランドフィナーレを迎える。

通常、熊本での佐野さんのライブがない時、僕は福岡へ行く。
が、しかし。“ALL FLOWERS IN TIME”ツアーは当初から初日の福岡かファイナルの東京かで迷っていた。
ツアースケジュールが出た時点では、僕はどちらかを選ばなければならない。仕事柄、日曜日にそう安安と“休みが取れるほど穏やかな世界じゃない”んだ。

結果的には両方行けた。専門家のセンセー以外、まさかあのタイミングで大地震が起きるとは思うまい。いや、センセーでさえ、今後何年以内くらいの認識だったかもしれない。

2010年から2011年へシフトする直前にようやく東京だ、と決意する。
しかし、その時期ではもうすでに福岡はもちろんのこと、東京ライブでさえチケットを取るのは絶望的。仕事中、一般発売開始時刻に電話、あるいはネット予約は不可能に近い。
(だから、いい加減ファンクラブ入れよなぁッ! )

だが、ここで奇跡が起こる。「今の声、今の気持ち、今の解釈で歌った」セルフカバーアルバム『月と専制君主』が発売になり、 購入者先行発売が行なわれることになっていた。

そして当初3月に行われるはずだった東京2Daysは震災により6月に延期になり、再び僕はスケジューリングに苦労する訳だ。まあね、いざとなれば、強行突破だ。(おい、おい)

チケット、スケジュール、すべて問題ない。そうこうしてたら、あっという間に当日だ。

佐野さんに限らず、東京でのライブ参戦。しかも最終日。どちらも初めてのことだ。

天性的な方向感覚を発揮し、全然迷うことなく開場一時間前に国際フォーラムに着くと、ほどなく友の姿を見つけた。そして今度は別の友が僕を見つけてくれた。
挨拶がてら僕らはしばし語らい、開場と共に僕は一足先に入場する。

会場ロビー。巨大なエピックイヤーズのジャケ写の佐野さんが迎えてくれて、「遠くからよく来たね」と言ってくれてるかのようだ。

僕の席は二階。チケット確保できた段階では「二階席?問題ない!」と思っていたが、最近の佐野さんのライブで至近距離で観ることに慣れてしまった身としては遠すぎる。
なんて贅沢なこと言ってるんだ!

思えば、26年前のヴィジターズ。初めて佐野さんのライブを観た時も二階席だったし、城ホールでのカフェ ボヘミア六大都市ミーティング(スタンド席)、20周年ツアーも二階席だったじゃないか。うん。

定刻を少し過ぎて開演を告げるブザー、アナウンス。撮影クルーが入っているので、今日の模様はいづれ何らかの形でシェアされるはず。
そして場内が暗転し、ステージを覆う緞帳が開くとホーボー.キング.バンドのセッションが始まった。この時点でもう半泣き。20周年の時は小林克也氏のオープニングナレーションがあったが、今回は普段どおりスタート。それが定刻から12分押し。

赤いストラトを抱え佐野さん登場! 20周年の時と同じ“君をさがしている”が一曲目。最初のMCが入り“HAPPY MAN”へと続く。
はて、この“HAPPY MAN”、アスピリン片手にジェットマシーンには乗らず、いきなりカシミアのマフラーとイタリアンシャツを身につける。SSBBツアー熊本ライブでもそうだった。歌詞変わった?(性格悪りぃな、オイ。笑)

ほぼ原曲どおりの“TONIGHT”の後、「久しぶりに昔の曲を!」と“COME SHAINIG”。
日曜日は週の初めか?週末か?そんなことはどうだっていいけれど、その時、この街のウィークエンドは確かにタフに揺れていた。

NYでの佐野さんのテーマソングの後に「この国のリーダーはシナリオのチェックに忙しい」と歌った後、重厚な長田くんのギターが鳴り始めた。“欲望”だ。
僕が観たハートランドとのライブはSee Far Miles PrtⅡが最後だから、おそらく初めてライブで聴く。「ドリーム ドリーム〜♫」「レスキュー ミー レスキューミー♫」と僕はコーラス。“ナポレオンフィッシュ”が終わると、佐野さん曰くなかなか良い出来の『月と専制君主』からのナンバーへと続いた。

ワルツの“レインガール”。おそらく、20周年ツアーの時とも、アルバムとも、そしてコヨーテ.バンドとのそれとも違うアレンジ。

「ホーボー.キング.バンドのインストゥルメンタルを聴いてみよう!」

と、ここでホーボー.キング.バンドオリジナルギタリスト、コロちゃん(佐橋佳幸)を呼び込む佐野さん。バンマス登場で役者は揃った!

もう一度僕らが星空を見上げながら眠る世界を越えて進んでゆく時、君を連れてゆきたい。

そして、最大のハイライト、“ROCK’N ROLL NIGHT”。

ライティングの妙もあって、咆哮する佐野さんが神懸かって見える。鳥肌ものだった。“君を連れてゆく”に自分自身の今の現状から号泣し、続く“ROCK’N ROLL NIGHT”。イイね!(笑)

数曲プレイ。ヤバい、“ヤングフォーエバー”、カッコ良すぎる。
変わらない君だけが今日もそこにいてくれる。
長田くんとコロちゃんのツインギターがとてもイカしているぜ!アゥ!

「この曲はぁ〜 80年代の前半に半年掛かって書いたんだ。『ハートビート』に入れようと思っていたんだけど、間に合わなくて次のシングルになった」

と言うMCの後に最近の定番MC。

「いつのまにか、僕の手を離れみんなの曲になった… でも待って。やっぱり僕の曲だ。やっぱり僕の曲だ(笑)」

一緒に歌おう! “SOMEDAY”だ。場内大合唱の中、僕は1番以外はコーラス隊。だって、セクストンシスターズもTTシスターズもいないんだぜ?(笑)

例えば、だ。この曲が予定どおりに出来て、そして、“Sugar Time”が大滝御大にナイアガラ用に取られていたらどうだ?3枚目のアルバムはどうなっていた?逆にそれも楽しみではあるな。

リストウォッチを見る仕草をしながら、

「もう結構時間経つけど… 僕らはまだ大丈夫だよね? みんな、脚は大丈夫?」(場内笑)

続いて会場のどこかにいるであろう、東北のファンからのメールの紹介。

「今夜は思いっきり楽しみたい、って。みんなもそう思うだろう?」

大歓声。

「ROCK’N ROLL! ROCK’N ROLL!! ROCK’N ROLL!!!」

そして、“悲しきレイディオ”メドレー。

「街の評論家は言う。ロックンロールは世代を超えるって。本当かな?皆さんの力を借りてそれを証明してみたいんだ!」

オーディエンスとのお約束の掛け合い。これがまた楽しいんだ。

今まさに、僕らはその瞬間を目撃している。

この日、上京してすぐビッグマンことEストリートバンドサックスプレイヤー、クラレンス.クレモンズの訃報を聞いた。ステージ上、佐野さんとサックスの拓ちゃん(山本拓夫)の掛け合いを観ながら僕はビッグマンとBOSSのそれを想っていた。

あっという間だ。20周年の時は途中休憩が入ったのに、今回は一気に、だ。
でも楽しい時はあまりにも早く過ぎてしまう。ここで本編は一旦終了。

アンコール。明るくなった場内にデビュー曲が響く。終了するとメンバーたちはそれぞれ楽器を起き始めた。

えっ?もう終わり?まだ、2時間半くらいだよ、昨日は3時間演ったんでしょ?ああ、これからダブルアンコール、トリプルアンコールなんだよね?

ここでメンバー紹介。そして佐野さんから感謝のメッセージの朗読。

以下、一部掲載。

音楽なんてなくても生きてはゆける。
けれど、音楽があったおかげでこんなにも見える景色が広がりました。
若葉の頃から始まった音楽の旅は、得たり、失くしたりを繰り返しながら、ここまでやってこれました。
これからも、僕の音楽への情熱をみなさんに捧げます。

30年間で素晴らしいミュージシャンたちと出会い、その仲間たちが集まってくれたこと。そしてたくさんのみんなが集まってくれて、その前で演奏出来ることが嬉しい。そんなふうなことを佐野さんは言った。

そして、今ここにいない(歴代)メンバーにも拍手を!と言い、続けてツアー最終日恒例の?ツアークルーの紹介。全員フルネームだ。PAさん、ローディーさん他見覚えのある人ばかりだ。

声援と拍手の鳴り止まない場内。佐野さんもゴキゲン。 

「もう一曲いく?」

と言ってくれることを誰しもが期待している。

すかさず、オーディエンス側にマイクを向けるいつものムーブ。仕方ない。でも、フルーターズもいないのか(笑)

東京に先立って行われた3月の大阪ライブは縁のあるゲストが多数登場しお祭りのような感じだったと聞く。
それは佐野さんもレイディオショーでそう語ってたし、また東京はこれまでの集大成とも。
当初、東京のゲストが全然発表されないのでどうなるかと思っていたが、この佐野さんの発言を聞いて納得。僕が観たいのは佐野元春の現在(LIVE)だ。

オールタイムベストなセットリスト。冒頭は曲数カウントしていたが、いつの間にか忘れていた。まあ、セットリストは後で知る手だてはいくらでもある。

ライブは終了したが、ボーナストラックがあった。後日知ったことだが、僕らが会場地下のカフェダイナーで“この素晴らしい東京の夜”の余韻に浸っている頃、佐野さんの楽屋では感動の再会があったと聞く。

ファイナルと言うことで、何か特別な気持ちだと佐野さんは途中語っていたが、この日のことは僕らファンはもちろん、佐野さん自身にも忘れられない一日となったであろう。

■セットリスト
CHANGES
君をさがしている
ハッピーマン
ガラスのジェネレーション
トゥナイト
カム.シャイニング
コンプリケイション.シェイクダウン
99ブルース
欲望
ナポレオンフィッシュと泳ぐ日
ジュジュ
月と専制君主
レインガール
SPIDER CODE
ヤングブラッズ
観覧車の夜
君を連れてゆく
ロックンロール.ナイト
約束の橋
ヤングフォーエバー
ニュー.エイジ
新しい航海
サムデイ
悲しきレイディオ
アンジェリーナ

■THE HOBO KING BAND are
佐野元春(ヴォーカル、ギター)
古田たかし(ドラムス)
長田進(ギター)
佐橋佳幸(ギター)
Dr.kyOn(キーボード)
山本拓夫(サキソフォーン)
佐々木史郎(トランペット)
土井“スパム”洋輔(パーカッション)

サカグチ マコト(バッキングヴォーカル。6/19のみ。笑)

※2011年 6月執筆

#佐野元春 #ライヴレポート

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