第6話 明るい未来ってなんだっけ?

東京駅から新幹線に乗るはずだった。駅に着く時間が少し遅れて次の便に乗ったが、それがヤツらだけが乗るためのタイムマシーンだと?
こんなことならはじめから飛行機にすればよかった。

あの列車が彼女たちがいうようにタイムマシーンだったとしよう。どうやって駅のホームに現れたんだ?

「テレポーテーション。途中で瞬間移動したの」

「ちゃんと駅のホームに着いたよ?」

「改札に着く前のこと。キミは近道しようとした。その時に瞬間移動してしまった」

「目覚めた時、違う場所に居たでしょ。あれもそう」


もうさっぱりわからない。理解しようとするのが無理なのか?


「到着地が違う場所だと気づき、すぐにやって来た列車に乗った。現在(いま)に戻る便に」

「間違って乗っただけでなぜ追われるんだ?」

「そもそも乗ってはいけない列車に乗ってしまった。おまけに、降り際、ヤツらの荷物の一部を持って行ってしまうの」

「きっと秘密を知られたと思われたのね」

「なにも知らないぞ」

「でも連中はそうは思っていない」

確かに自分の荷物以外の物も手にしていた。だがそれはまた次の列車に乗る前に駅職員に渡している。その時はまだなにかに追われている気配はなかった。


やがて3人はビルが立ち並ぶオフィス街に着いた。まだ追手の姿はない。
無機質な部屋の中にはガラスのような仕切りがあってその奥にはさらにセキュリティロックされたドアがある。

「あのドアからテレポーテーションができる。中に入ると場所の設定ができるようになってるのよ」

ドラえもんかよ。

「アイツらの技術より私たちの技術の方が進んでいて、あそこからタイムトラベルもできる。試してみる?」

「ああ・・・、遠慮しとくよ」

「日常レヴェルで使用できるといっても、誰にでも簡単に使えるわけじゃない」

国の機関への申請が必要で許可が下りるとしても時間がかかるとの話だ。

「私なんて、半年かかった」

「お役所仕事だな」

「審査が相当厳しいの」

「通称タイムトラベル法案。この法案には政府内でも反対の声が多かった。でも現実的にテクノロジーは進歩を続けるし、法整備の必要性も叫ばれてた中、与党内有力者の一声に逆らえず時の内閣総理大臣安元周平が押し切った」

いつの時代でもその構図は同じ、か。

「普通は法案ができて施行されるまでは一定期間空くけど、この法案だけはすぐに施行された」

「影でこの国を動かすフィクサーがいる。おそらく、その人物の意向。法文にも、変えてはならないと明言されているのに自分たちの不都合な過去を変えたがっている」

「このことがきっかけで不信任決議が出されるけど当然否決され、安元総理は次々と強行採決を繰り返す。そして結果暴動騒ぎが頻発し・・・」

「ついには暗殺されてしまう」

近年でも首相経験者が凶弾に倒れた事件があった。背景は違えど歴史は繰り返す、か。


「ヤツらの組織に?」

「暴徒と化した一般市民。少しの間首相不在でそこからはもう、無政府状態に近い」


今から5年後に起こるその異常事態。明るい未来ってなんだっけ?そんな歌もあったな。

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