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神田川(南こうせつとかぐや姫)

10代の頃に流行った歌に、「神田川」がある。セピア色のジャケット、哀愁を帯びたバイオリンのイントロ、切ないメロディー、貧しい同棲生活を描いた歌詞。歌詞は、その後の「赤ちょうちん」ともダブって、より哀愁を帯びる。

また、この頃「同棲」という言葉が流行したが、この歌詞にはそんなことは書いてないけど、時代背景から「同棲」する2人であると、どうしても思えてしまう。そして、バックには機動隊と衝突する学生のデモ隊、東大安田講堂に立てこもる学生と放水車、テレビに映し出されたそんな風景が目に浮かぶ。

希望に燃えたティーンエイジャーのはずが、世の中は安田講堂事件、安保闘争、赤軍派、京浜安保共闘、浅間山荘事件、などなど、反体制運動に関する事件が多かった。もちろん、冬季オリンピックなどもあったが。

それらを総括するように、神田川という曲がヒットした、ように思えた。当時、若かった私には、この歌詞は単に同棲する二人の貧しい生活を歌った曲としか理解できなかった。本当の意味を理解した(と思っている)のは、ずっと後になってからである。

その後、若者のエネルギーは反体制運動に向けられることはなく、より享楽的に(ブルジョワ的、と言うのか?)そのエネルギーを消費することになる。無気力、無関心、無責任、さらには無感動という4無主義がはびこる時代となる。やがてオイルショックへと続く。

今の時代よりまだましだった、という年配の方もいるかも知れない。

あの頃の学生と比べて、まあ、違法なデモがよいことだとは言わないけど、今の若者はやる気がないというか退廃的だという話はよく聞く。でも、周りを見渡す限りそんなことはない。要するに、何かのきっかけで、あのときの学生たちのように情熱を持って何かをやることはできるのではないだろうか。

初めて東京に行ったとき、真っ先に神田川沿いに歩いてみた。当時の神田川は綺麗な川ではなかった。

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15年ほど前に、少し昔を回顧して書いた文章です。今の状況はちょっと違うのかも知れませんね。

(初出:2007.3.27 mixi 一部加筆修正)


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