ネットワークビジネス会社が福祉事業に参入した実例

就労支援継続A型立ち上げから廃業までのエピソード

・ネットワークビジネス会社が福祉の就労支援事業所に乗り出した経緯
2014年当時、自分が在籍していたネットワークビジネスの業績は年々悪化をしており、コールセンターとして雇っていた社員を20名ほど退職させられる事態となった。会社の縮小という経緯もあり、オフィスとして使用していたスペースが半分空きスペースとなる。ネットワークビジネス会社として、何かしらの事業を考えていたが、顧客である博多の福祉コンサルタントの提案により、福祉事業を知り就労継続支援A型がベストであると会長が判断する。A型定員14名で就労移行定員6名の計20名の多機能型として福祉ビジネスに乗り出すということになった。

ネットワークビジネス会社として福祉事業を都庁に申請すると認可されない可能性が高いため、福祉事業所として都庁から認可が下りるには、別法人として立ち上げる必要性があったため合同会社を設立する。

ネットワークビジネスの会社が当時借りていたテナントの一部を改装し、福祉施設が運営できるだけのスペースを確保していき、職員採用に向けてハローワークに求人票を出していく。つまりコールセンターとして使っていた空間がそのまま就労継続支援A型として使うことになる。

合同会社の代表社員はネットワークビジネスの会社の会長が兼任する形として、法務局へ届け出を出していき合同会社自体は設立される。自分は管理者、サービス管理責任者という役職を任命されて、あとの職員はネットワークビジネスの社員が出向という形として職員体制が整う。外注としてパソコンに詳しい人も加わっていき、都庁へ申請しに出向く。サービス管理責任者という福祉施設の核となる人材がいないと基本的に認可は下りない。なので、プロジェクトチームの社員と一緒に都庁へ出向いて、福祉保健局の職員と面談を行う。福祉施設を立ち上げる会社は増えており、書類だけでなく面談をしないと行政も信用しないという流れであった。

こういう流れでネットワークビジネス会社が主体の就労継続支援A型は都内で誕生する。
世間的に見て賛否両論はあるだろうけど、都庁の担当者から聞いた話によると、まともな会社とか怪しい会社とかは面談により判断できるけど。福祉事業を開設するにあたり必要な書類を一式そろえて不備がなければ認可をせざるを得ない。と話していた。
・都庁から認可が下りるまでの動き
都庁から認可が下りて営業許可証が郵送で届く。中途半端な日にちではなくて3月1日、もしくは4月1日付けで開所という営業許可証です。サービス管理責任者が誰でどの程度の経験があるか証明書を提出する義務があり、審査もあるためです。お役所仕事と言ってしまえば、それまででしょうね。

2014年9月から開所になることが決定して、開所と同時に近隣の福祉事業所やハローワーク、区役所の障害福祉課と挨拶回りをしていくことからオープニングの福祉施設はスタートする。たまに都道府県から認可が下りるであろうと予測していき、行政機関や福祉事業所にフライング営業をかける会社が存在する。これは非常に危険な行為である。
一般的に考えれば、○○飲食店がオープンします。オープンさせていくにあたってお客さんに多く来てもらいたいから、チラシを配布して営業活動をしていく。ごく普通の行為は福祉業界だと通用しない。何故なら福祉施設として認可されるには法律に則った人材確保が必須であるため。採用した人材が辞退したら非常に困ると思うし、認可が下りるのは1か月先になるリスクがある。なので、福祉事業に参入するなら慎重に進めていく必要がある。
ただ、その条件をクリアできてしまうのがネットワークビジネス会社。ネットワークビジネスを展開するくらいなので、悪知恵を最大限に活用することが容易である。親会社として位置付けているネットワークビジネスなので、ネットワークビジネスの社員を福祉施設の職員として名簿に載せて都庁に提出する。そして、監査対策として、福祉施設の職員になる上での雇用契約書、内定通知書、誓約書を書かせて書類保管をしていく。他の福祉事業所でも使う手段でもあります。
先ほども申し上げた通りで、行政としては相手方がまともでも怪しいと思われる業者でも、法律に則った書類を提出して条件をクリアしていれば認可をせざるを得ない。これには裏事情があり、訳の分からない悪知恵が働くコンサルタントがアドバイスする経緯があります。コンサルタントも多額で契約しているので、もし都道府県から認可が下りないという事態になることは絶対に避けたいでしょう。そのため、コンサルも認可が下りるようにアドバイスをするわけです。悪徳でも何でもいいんですが、基本的なビジネスとして考えればお分かりいただけるであろう。
悪徳コンサルタントとして、相手方に営業許可証が出れば大きな難関はクリアしたと思うのです。契約金100万円で、定期的にアドバイスするにあたり毎月20万円報酬を貰うんですから。税金という報奨金をガッツリ貰うネットワークビジネス会社、大したアドバイスをできない悪徳コンサルタントの思惑が一致してしまう。
これが、株式会社等が福祉事業へ参入するにあたって、嫌われてしまう理由になります。

・福祉施設として認可が下りてから何をするか
都庁から認可が下りて正式に福祉事業として営業していくにあたって何が必要か。それは、利用者を集めること。利用者とは障害者のことであり、行政に申請を出した際に記載した事に則って何の障害を持っている方に認知してもらうか。就労継続支援A型の認可が下りたときは、身体障害、知的障害、精神障害の方を対象とする施設だったので、マーケティング調査を行う。例えば精神障害者が地域で何人いるか。
まずは役所の障害福祉課に挨拶しに行き、近隣の福祉施設や相談支援事業所、ハローワークと徹底的に営業活動をするところからスタートする。認知度がゼロからのスタートなので、当然ながら実績はゼロで信用度もゼロ。つらいけど、これは福祉に限らず、どのビジネスでも言えることだと思う。
実績はなくても印刷した立派なパンフレットを持っていき、これだけのサービスを提供しますよとアピールしていかないことには始まらない。はっきり言って中身はゼロ。でも前に進む以外道はありません。福祉業界のボスのような存在と知り合いなら、情報を拡散してくれるはずですが、ここはネットワークビジネス会社から派生した就労支援施設。話は聞いてくれますけど、中には冷たい視線で見ている福祉施設もあったことは事実です。こんなジレンマを抱えつつも、就労支援A型に興味を持ってくれた人が徐々に集まってくる。ちなみに就労継続支援A型は雇用型福祉施設とも言われており、ハローワークに求人を出すことも可能。ネットワークビジネスということを説明したうえで、当事業所に通うかどうか。実習期間を設けてから来たいかどうかを再度面談して利用者に決めてもらうスタンスをとった。サービス管理責任者としての責務を全うする当然の職務でもある。
慎重に面談をした上で、ここに通いたいですと言ってくれる利用者さんが徐々に増えてくれることに自分は感謝していた。正直言って障害者でも癖のある人は不採用にする権利を持っているが、みんな良い人でステップアップをすることで活躍してほしいと心から思っていた。
ここで問題が発生する。一般企業に就職するにはハードルが高いけど仕事をしたいという障害者(利用者)が徐々に集まりつつある状況で、ネットワークビジネス会社が彼らに肝心な仕事を提供するする準備ができていなかったりするので、何の仕事をさせていけばいいのか困った。サービス管理責任者である自分は、会長に伝えていき雑務でも仕事を提供していった。彼らは、引きこもりから第一歩を踏んだ人材。ここに来てメリットがないと思われたくない。とにかく必死だったことは今でも記憶している。
何だかんだ言って仕事を確立させていき、利用者に仕事を提供することができるようになってきた。利用者にも特徴があって、コミュニケーションが苦手な人もいるため、明るいキャラクターの利用者と引っ込み思案な利用者を組み合わせていき、雰囲気つくりには徹底していった。人見知りな利用者がゲラゲラ笑うようになった姿を見て、この作戦は見事に成功する。
・2014年、何で他業者が就労支援A型の福祉施設に注目したか
ここは、裏話として解説していきたいと思う。

まず、大企業が特例子会社を作るのか。そして中小企業が障害者を一定数雇うのか。障害者と雇わないといけない法律があり、法律を守らなかったら罰金を支払う。これは誰しもが知っている話である。障害者を雇うと、特定求職者雇用開発助成金というものが貰える。いわゆる特開金と呼ばれるものだ。障害の区分、雇用形態によって特開金というものは多く貰える。詳しくは厚生労働省のホームページを見ていただきたい。

就労継続支援A型という福祉サービスは、最低賃金を保証する作業所と言っていい。そのため、通う障害者の方は利用者という位置づけであると同時にパート社員という位置づけでもあるのだ。福祉サービスを利用するには役所の障害福祉課へ申請をして受給者証というものを発行する必要がある。福祉施設は受給者証を使って毎月、請求業務として国に利用料を申請していく。これが福祉施設のインカムと言っても過言ではない。

そして、パート社員という位置づけでもあるためハローワークに特開金を申請することで給付金が入る。要するに利用料を国から貰うと同時にハローワークからも給付金が入るため、ダブルでお金が入る仕組みとなる。他業者が就労継続支援A型を立ち上げるにはそれなりの理由があるんです。利用者を集めるだけで、給付金がたくさん入る。例えば物販で100万円を稼ぐのは相当大変である。しかし、上記の施設で利用者を集めて契約してしまえば100万円は余裕で越えてしまう。

ここに目をつけて開業する業者があまりにも多かった。

利用者の幸せはどうでもいい、とにかく給付金がたくさん入ることに魅力を感じる業者が多くて。純粋に福祉を学んだ方が裏事情を知ったらがっかりするだろう。

しかし、美味しいと思われるビジネスにも行政のメスが入っていく。就労継続支援A型事業に参入した業者が多すぎて、給付金を多重に貰うことに対して疑問を持った社会福祉法人などの声や、実際に利用した方が役所にクレームを出した事例が重なっていき、とうとう就労継続支援A型の利用者に対して特開金は停止する流れになる。

ちなみに自分がいた就労継続支援A型の利用者は、管理者の自分が彼らに甘やかした部分もあり皆居心地が良いと思っていたようで、行政に対するクレームはなかった。おかげで利用者を定着させた実績として特開金も順調に貰っていたのが実情である。
・2015年 順調にいってる就労継続支援A型の作業内容について
新規開業した施設で行政に挨拶回りをしたり、外注に依頼してホームページを作成したり、あとはハローワークの障害者パート求人で利用者募集を行った結果として、最初に来た利用者はハローワーク経由で来た。

利用者を集めることが第一優先として掲げてきたが、肝心な作業については準備が間に合っていなかった。これは、新規開業した福祉の就労支援の施設ではありがちな話である。最初に着手した作業は、ネットワークビジネスで使っている商品のチラシ、申込書を封入する作業であった。親会社から貰ったチラシの枚数は限られており、徐々に作業に慣れていく利用者はあっという間に作業を終わらせる。能力の高い人材が集まるのが就労継続支援A型の特徴でもある。空き時間が出てきてしまう事も出てきたため、作業時間に部屋の掃除をお願いして時間稼ぎとして過ごしていたのも事実である。ハローワークでの効果は絶大で、利用者は増えていく。そして、行政関係からも電話がかかってきて、この方を見学させてくれませんかと依頼も徐々に増えていく。利用者が増えていくことは、とても有り難い話で、施設も盛り上がっていく。ただ、問題としてネットワークビジネスからの下請け作業の量が追い付かなくなるという、新たな問題が発生してしまった。

ネットワークビジネス会社は、利用者に勧誘して商品を買わせることは一切なかった。その点、利用者も安心して作業をしていたし、週5日通所してくれる方が多かった。本当に居心地がいいんだなと見ていて思っていた。そんな中、ネットワークビジネス会社から、スリホというカラー印刷がすり放題という独自のプリンターが導入されていき、チラシが大量に生産することができる体制が整った。利用者も得意不得意があるようで、パソコンに詳しい人や手先が器用な人と面白いくらい特徴が見えて来た。そこで、パソコン班、チラシを封入する班、プリンターを管理する班と作業を分担させていきチーム編成を管理者である私が提案し、効率よく作業をさせていける環境を整えた。チーム編成している中でも、見学者は定期的に訪れており施設案内をするため、開設初期に比べると新規利用者も納得して入ってくれる。チラシ封入ならできそうだ、と思ってくれるとの話は自分が面談を通して一番多く聞いた話だ。利用者が20名近くになってきた段階で、チラシ封入作業だけでは限界も近づいてきていたのも事実である。

ネットワークビジネス会社の会長は奇想天外な発想を持っており、次の作業に着手し始める。会長は元々クリエーターなのでアイデアは泉のように湧き出る人である。会長がFXに着手している最中で、役員室にはパソコンのモニターが8台置いてあった。パソコンに精通している利用者を集めてFXの解析をしてほしいと話を進める。チラシ作業に飽きていた利用者でもあったので喜んでいた。利用者にFXをやらせるネットワークビジネス会社は、全国の障害者就労支援施設を見ても当事業所だけだろうと推測される。パソコンが苦手な利用者には、せどり(転売)をやってもらうように話を進める。何の商品を購入したかというと、中国のサイトでアリババというものがある。中国からコスプレのグッズを輸入してアマゾンで転売する作業を利用者にやらせる。FXにしてもせどりにしても副業としてやっている方は一般的に存在するが、まさか福祉施設の利用者にやらせるとは管理者の自分にも発想がなかった。さすが、ネットワークビジネスとして会社を運営している会長の独自な発想だと思わざるを得なかった。

FX班はデータを解析してレポートを作成する作業をして会長へ直接メールで報告する。
せどり班に関しては、ラックを組み立てる作業から始めていく。商品が中国から届いたら、白雪姫のコスプレ、アナと雪の女王のコスプレ、ドラえもんのコスプレ、ドラゴンボールのコスプレを整理してラックに置く。力が必要な作業は男性利用者、商品の梱包は女性利用者が担当する。商品はどんどん届いてきて、作業室が商品であふれてしまうこともあり棚卸をする利用者もいた。どうしてもチラシ封入以外の作業以外をすることが難しい利用者だけ、引き続きチラシ封入班に残って作業をしていた。

アマゾンのアカウントは当然偽装工作をしていき、利用者にいいねボタンをひたすら押してもらうという作業なため、せどり班の利用者でもパソコンを使ってアカウントの評価を爆上げしていくことは可能となる。裏工作をする技はネットワークビジネスの十八番となり、それに精通する人材も存在する。自分の場合は福祉としての業務に集中してもらう位置づけだったので、裏工作には参加せずにいられた。そんな知識もないので他の社員に全部依頼をしていた。ヤフオクのアカウントも作っていき同様に裏工作を行い評価アップの作業を利用者にやらせていたが、ヤフオクは規定が厳しいようでアカウント停止を食らっていたことが度々あった。会長はGMAILを何個か作っていき、アカウントが停止されても新しいヤフオクのサイトを作り上げる。ネットワークビジネスの特徴が垣間見れた場面である。

せどり班は思うように売れないようで、会長は次の手に出る。ハンドメイドで有名なミンネというサイトを開設する。ハンドメイドに精通している利用者がいたため、手作りでポーチを作ったり髪の毛を結ぶゴムに可愛い飾りつけをしたりと女性向けの商品をたくさん作っていた。手間がかかるので、それだけ時間もかかる。ハンドメイド商品は地味に売れていったし、買ってくれたお客さんからは暖かいコメントもいただいていた。

せどり班はアカウント停止によって出品もなかなかできない、ハンドメイドは売れるが利益として微々たるもの。FXは解析をするが簡単には儲からない。やはり一番人気の作業は最初からやっていたチラシ封入の作業であった。
・就労継続支援A型が特開金の対象外になってしまう事への弊害
障害者を雇用している会社は助成金を申請することができる。一定期間、障害者を雇用していればハローワークから申請書類が届く。そして審査を経て、ハローワークから障害者を雇っている証として助成金が貰える。一般社会では普通の出来事であり、逆に障害者を雇わなかった場合は罰金が生じてしまう。

さて、福祉サービスとしての位置づけである就労継続支援A型は利用者が来れば国保連に請求をして給付金を貰うことができる。そして、雇用型の福祉施設という特徴もあるため利用者が一定期間在籍してくれれば特開金も申請できる。要するに、給付金をダブルで貰うという形となる。これは違法ではなく合法なので、目をつけて就労継続支援A型を開業した会社は、儲けがかなり出ただろうと思う。当事業所もダブルで給付金を貰っていたので、給付金が出た際には内心喜んでいた。

ところが就労継続支援A型の開業をする組織が増大して、同じことを考える経営者が増えていったのが問題となる。他の福祉法人からもおかしな話だという情報が徐々に拡散され始めていき、都庁をはじめとした行政は条件を厳しくする流れとなっていく。ダブルの給付金を当てにして開業した会社は、採算が合わなくなり廃業になる。こういう福祉事業所は増えていった。当事業所も給付金を当てにしており、途中から特開金の審査に通らずにいた。純粋な利益として利用者が来た一か月の延べ人数の単価を国保連に請求する。それだけが利益となってしまった。そのため、開設した当時のキャッシュフローは崩れていくことになる。作業内容で利益を出せれば、そんなに問題はないが作業は述べた通りでチラシ封入、ミンネで販売するハンドメイドの商品、中国のサイトから取り寄せたコスプレ商品をせどりで販売するのが当事業所の作業内容となっているため、とても特開金を補填できるような利益を出せない。要するに赤字経営が続いていってしまう事に陥っていく。
例えば、内職作業を外部から受注しても何万という数をこなしていかないと利用者に賃金を支払うことは難しい話になる。実際にガッツリと内職作業をしている就労継続支援A型も存在する。

ネットワークビジネス会社が開設した就労継続支援A型の事業所は、チラシ封入などの雑務を障害者にやらせていき、ネットワークビジネスの再建を図るために作られたようなものである。当然ながら特開金の存在を知った上での開設をしていったので、多少作業内容がしょぼくてもダブルで給付金が出れば黒字になるという計算だった。しかしながら、世の中の流れはどんどん変わっていくため、都合のいい話は永遠に続かず窮地に陥るという状態になってしまう。いよいよ、A型事業所を廃業するかどうか、検討し始める段階に入ろうとしていたのである。
・M&Aの話が来て再起をかける就労継続支援A型事業
上向きな事業だったのが、倒産に向けて下向きになってきた頃の話として他の会社から依頼が来た。相手方も就労継続支援A型の施設を運営しているとの事で、ぜひ買収してほしいと言われた。ネットワークビジネスの会長は、なんと即決で買収に乗り出してしまう。スピーディーなことは悪いと思わないが、相手方の福祉事業所は、利用者が40名抱えており国から貰える給付金が4期に分かれている。1期につき750万円の給付金が振り込まれるという話で即決したのがM&Aの話である。

ということで、A型事業所を2つ持つことになったのだが買収したA型事業所でやっている作業はお菓子の箱折りのみで週5日通所で1日6時間作業をさせているとの事であった。当然、利用者は社会保険に入っているため賃金や社会保険料を見ていくと収益である箱折り作業なんで微々たる収益なので大赤字を抱えている事業所であることが買収後に発覚した。おいしい話に乗っかる会長は、見事に騙されることになる。相手方の話を聞かずに「750万円の助成金」の単語だけで契約を交わす会長にも問題があることは言うまでもない。

2つの就労継続支援A型事業所を運営してくことになった会長は、どのように再起をかけていくのか。とても見物である。買収した事業所にはパソコンを20台投入していき、せどり作業を全員にやらせるという大胆な作戦に出ていった。箱折りしかやったことのない利用者からはブーイングが出ていき、会長に直接文句を言った利用者もいたが会長のほうが上手であり聞く耳を持たずにのスタンスを貫き通してしまう。そのため、利用者は諦めてしまい嫌々ながらパソコンをいじる感じとなってしまった。買収先の管理者は書類関係が苦手で都庁に出す書類も作れず。そのため自分が2つの事業所を行ったり来たりしながら書類を作っていくことになる。とても忙しい生活だったことは、今でも覚えている。

買収したA型事業所は、大赤字を抱えている事業所であった。とても収支のバランスは取れずにいる最中で管理者が利用者に暴言を吐く事件が起きた。利用者は大がつくほどのクレーマーで区役所、都庁、保健所とあらゆる機関へクレームを言ったため、買収した事業所は緊急監査が入ることになった。しかもクレーマーの利用者をはじめネットワークビジネスの会長がやっている事は知っているため不信感を抱いていた。

再起をかけるため買収に乗り出したネットワークビジネス会長の動きは、裏目に出てしまい都庁から緊急監査を受けるという事態に陥ってしまった。管理者と行政のやり取りはけんか腰で事態は悪化を辿る一方となり、立ち上げた事業所で管理者をやっている自分がフォローに入るという、非常に面倒な仕事をネットワークビジネス会長から振られる。
・2016年に就労継続支援A型を閉鎖するまでの流れ
買収した就労継続支援A型の事業所に監査が入って発覚した驚愕の事実が判明した。利用者の個別支援計画書未作成、モニタリング未実施と書類作成で絶対に必要なことを怠っていたことであった。請求業務で国から貰った給付金を一部返金することが条件となった。過去の分を遡ると、数百万円だったと記憶している。金銭的な処理は経営者であるネットワークビジネスの会長がやることになる。さらなる事件が買収先の事業所に降りかかることになるとは、夢にも思っていなかった。テナントの2階が事業所であり1階は歯医者が入っていた。2階の水回りの調子はあまり良くなく、定期的に業者に入ってもらい修理をしていた。水漏れがあって歯医者からクレームがあったためである。ただ、不運は続いていき水漏れは直っていなかったようで1階の歯医者に水が浸透していたと話を聞いていた。しばらく経ってから買収した事業所当てに東京地方裁判所から郵送で書類が届いた。実は歯医者サイドが弁護士に依頼をして裁判を起こす、ネットワークビジネス会長と修理会社の社長宛てに賠償金を請求する、とんでもない行動に出たと聞いた。
都庁から緊急監査を受けるに加えて、歯医者から裁判を起こされる。ネットワークビジネスとしてのスキルを持っている会長は、買収したとは言えども事業所閉鎖を決意したようで文書で利用者に通知する。つまり逃げる作戦に出るためである。
ネットワークビジネスの得意技で利益が出る事業に手を出して儲からなくなった、もしくは行政指導等で窮地に追い込まれると廃業する。そして儲かりそうな事業を探していき新たに事業を立ち上げる。大手企業などと大きく違い、表に出ることはほとんどないのがネットワークビジネス。裏で動いていくのが実情、ゲームセンターにある「もぐら叩き」みたいなものである。都庁から目をつけられて裁判にかけられる福祉施設は、きっと会長が買収した就労継続支援A型だけだろう。
買収先の事業所は、新規で立ち上げた事業所ともリンクしているため、1号店と位置づけていた自分が管理者をやっている事業所もついでに潰そうと会長が即決した。こちらとしては、利用者も20名いて雰囲気は最高だったのにと思える事業所。ネットワークビジネスの会長、なんて身勝手な人なんだろうと改めて感じた瞬間だった。最初は、管理者をしている自分が利用者の前できっちり説明するようにとの話だったが、それは話が違うため会長が1号店の事業所に来ている利用者全員に説明するべきだと言って、会長が利用者に説明してもらう経緯をたどった。
1か月後に施設は閉鎖します、会長が利用者に説明した後は当然大混乱であった。管理者の自分に面談が殺到する。動揺している利用者の気持ちに寄り添うように時間をかけて面談を行った。今後の進路が決まっていない中、不安感を抱いてしまうのは致しかたないのは当然の事だと強く思う。経営者が身勝手な行動を取ることによって、あらゆる人が不幸に陥る事は身をもって痛感した。利用者だけでなく、従業員である我々も解雇の対象となるのだから。
・就労継続支援A型を閉鎖するにあたって行政とのやり取りを公開
買収した就労継続支援A型事業の後始末は知りませんが、ネットワークビジネス会社が立ち上げた福祉事業所の閉鎖の流れについて説明していきたいと思います。
自分は立ち上げた福祉事業所の管理者であることは何度も述べています。利用者が解雇になると告げられてからは、最寄りのハローワークへ駈け込んだり行政機関へ駈け込んだりとして。瞬く間に就労継続支援A型が閉鎖する話は広がってしまいました。
まずはハローワークから電話があり、どういうことですか??と問い詰められたので直接お話しますと言って電話を切りました。実際にハローワークへ行くと障害者雇用担当の部長、特開金を扱っている部長に囲まれて事情徴収を受けるように面談が始まりました。
こちらは誠意を持って福祉事業所を運営していたのに、尻ぬぐいをする形で怒りがこみあげていましたけど、事実を暴露する意味も込めて正直に面談に臨みました。説明した事として、まずはネットワークビジネス会社が立ち上げた事業、そしてネットワークビジネスは利益が出ないと速攻で放棄する特性を説明する。正々堂々と運営していたので自分に責任がある訳ではないとハローワーク機関は理解してくれました。ただ、ハローワーク経由で申請して貰った特開金という助成金の返還は必要ですよと言われました。自分は経営者ではないし管理者という雇われの立場であることを説明した上で、返還金は経営者に求めるようにも説明しました。経営者の携帯電話の番号も伝えて、お金のやり取りは経営者とやるようになった流れになりました。文章を見ていると自分が責任放棄したように見られますけど、最終決定したのは会長であり経営しているのも会長なので自分が金銭的な責任を背負う義務は全くないです。
ハローワーク関係の問題が解決したと思っていたら、今度は都庁の保健福祉局から電話かり呼び出しをされました。何なんだろうと思い、都庁に出向いて面談をしたところ利用者の今後の進路先を記載して報告するように求められました。確かに利用者の次の行き先は決まっている人が少数で決まっていない人が多数なのは事実であった。進路指導の観点を見て、利用者が住んでいる地域の行政機関にアポを取っていき次の進路が決まるまで支援をお願いしますと頼み込んだのは事実である。人任せに見えるが、従業員である我々も解雇されてしまうため支援ができなくなるのも事実であり、どうすることもできないというジレンマを抱えることになった。1か月という期間で、どれだけの進路先を見つけることができるか自分も未知数なため不安要素がいっぱいであったが、逞しさを見せている利用者は次の進路先を見つけていく。都庁に何度も連絡をして状況を報告していき、閉鎖するまでには9割の利用者が進路先を見つけた。残りの1割は進路先を見いだせずにいたことも報告して、都庁に出した書類には進路未定と記入してOKをもらった。もちろん、進路が決まっていない利用者には、地域の行政機関に一旦預ける形にして探してもらうとのことで放置せずに支援を受けられれますと保護者にも説明して了承を得た。従業員ができることは限られており、我々も解雇になることを伝えているため納得してもらうしかない。
・あとがき
福祉施設を設立できるのは社会福祉法人、NPO法人に加えて株式会社や合同会社なども設立できるようになった。法人格があり一定の条件を満たせば都道府県の認可を得て福祉施設を運営することができる。
ただ、利用者を受け入れるにあたっては責任をもって運営してほしいと切実に思う。開設したけど経営難で福祉施設を閉鎖するという事業所は意外と多い。

利用者の幸せを願って支援をしている従業員にも申し訳ないと思わないのかと疑問に思う経営者も多々見ている。

ビジネスとして展開するのは構わないと思うが、他人の人生を背負っている自覚を持って運営していかないと、福祉ビジネスは非常に難しいと思う。

それだけの覚悟がある経営者がいるとするならば、是非とも福祉ビジネスに参入していただきたい。本来の仕事として利用者と接していき成長する姿を見るのは、やりがいがある仕事だと自負しています。

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