Lifestyle - Challenges by Ms Thandeka
町の工場を辞めて高級ステーキハウスの研修生になったテンデッカちゃんとの共同生活を通じて、日常生活の中でちょっとした動作や認識の違いに気づくことがあり、毎日新たな発見の連続で、それはとても興味深く良い経験になった。
例えば、共有スペースのキッチンに電気ケトルが備えつけてあって、彼女は毎朝ケトルいっぱいたっぷりのお湯を沸かす。最初、何だろうと思ったら、他にも温かい飲み物を飲む人のために、まとめて沸かしてくれていたのだ。電気ケトルは保温機能がないからお湯が沸くのも早いけど冷めるのも早いよ、みたいな話しをしたりした。
大家さんは自分でデザインした思い入れのある自宅をとても大切にしていて、特にキッチンはとにかくおしゃれで凝っている。なんと、食器も鍋も直火用ケトルも食器洗いスポンジも、全て「ル・クルーゼ」で統一されている。最初引っ越してきたとき、ショールームのような食器棚に感動したものの、同時にこの高級品を日常的に使うことにものすごく緊張した。食器や鍋は細心の注意を払い丁寧に扱うようにして、直火用ケトルはコンロの五徳で傷つけるのが怖くて、電気ケトルしか使わないと決めた。計画停電の多い南アフリカでは、電気が使えない時間帯もあるものの、電気が使えない時間帯は諦めてコーヒーは飲まない。
まさか、世の中に数万円もする直火用ケトルが存在するとは、テンデッカちゃんにとっては想定外だったかもしれない。当然毎日使っていれば傷もつく。仕方ないこととはいえ、ある日、大家さんがややがっかりした表情で傷ついた直火ケトルを眺めていたことがあって、なんだか申し訳ないような気持ちになった。
大家さんは基本的にいいものを大切に長く使う方針で、共有の洗濯機もとても性能のよいものを備えつけていて、パウダー状の洗剤で洗濯機自体を痛めるのを避けるべく、ジェルボール状の洗剤を使用している。このジェルボール状洗剤が、まさかそんなに高いものとはこれまで手洗いで洗濯していたテンデッカちゃんが知る由もない。高級ステーキハウスから帰宅するたびに制服の白シャツを洗濯し、それとは別に私服を洗濯し、毎日2~3回洗濯するテンデッカちゃんがお隣に引っ越してきて、ジェルボールの小箱は、あっという間に空になった。スーパーマーケットにいくたびに、私か大家さんがジェルボール状洗剤を購入して買い置きするようになり、結局大家さんは諦めて、液体洗剤に切り替えることにした。
テンデッカちゃんの挑戦は続く。