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Dinner - Challenges by Ms Thandeka

共有のキッチンに、丸焼きのチキンとビニール袋いっぱいのじゃがいも。「これ大家さんが買ってくれたの?」とダイニングテーブルで作業中の大家さんに尋ねたら「テンデッカが買ってきた」と・・・。大家さんが困惑の表情なのはわからなくもない。

週一日の休日は1時間半かけて乗合タクシーで自宅へ帰ることが多い彼女だが、その日は珍しく自宅に帰らず、ブラックデニムを買いに近所のショッピングモールに行ってくる、と朝から出掛けて行った。

ブラックデニムは仕事をするのに必要で、それだけでもかなりの出費なのに、ジャガイモと丸焼きチキンとショッピングモールまでの往復交通費を足し上げると相当額になり、生活に余裕がないことを知っているだけに、お金は大丈夫なのだろうか・・・と正直思った。

そういえば、2日前に初めて高級ステーキハウスのサラリーが振り込まれたばかりだった。思うに、うれしくて買い物しちゃったに違いない。もう少し計画的な方がいいのでは、と言えなくもないが、そんなのは先進国で計画とか管理とか気にする金額をもらっている人の理論で、「お金があるときは使う、ないときは使えない、以上」という生活スタイルなのだと察した。

テンデッカちゃんは、ほうれん草のクリーム煮、マッシュポテト、丸焼きチキン、2Lのコーラまで用意してくれて、豪華なディナーを大家さんと私に振る舞ってくれた。ほうれん草のクリーム煮もマッシュポテトもお世辞抜きで最高に美味しかった。上品でとても優雅な優しい味で、彼女はきっとすごく優雅な人なんだと思う。大家さんも大好物のマッシュポテトに大満足で、彼女もとてもうれしそうだった。

こうしてパソコンに向かい記事を書きながら、極めて限られた生活費の中からチキンとジャガイモとクリームとコーラを買ってきて振る舞ってくれた彼女の優雅さを改めて感じる。自分の好きなものも、家族の好きなものもいろいろ買いたいものはあったと思うけど、彼女のおかげで、きょうはとても楽しいディナーだった。

すごく迷ったけど、すばらしくおいしかったことを伝えたくて、少しだけチップを払った。相当な出費が気になったのが本心ながら、彼女は高級ステーキハウスで働く人なのでサービスに対してチップを払うのはそんなに違和感はないはず。彼女は飛び上がって喜んでくれた。お金を取ろうとは思っていなかったんだと思う。そういう非常に清貧な無欲な打算のないところが彼女らしいなと思った。いつも次の目標とか成長とかチャレンジとか、そういう一歩先の世界の中で生きることが当たり前になっていて、自分の足りないところばかりが気になってしまうのだけど、彼女はそういう軸とは異なる価値観の中にいて、彼女から学ぶことがとても多い。

テンデッカちゃんの挑戦は続く。


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