物書きの音。vol.9「十二支の靴屋」

物書きの音。
2019年の12月に書いたものです。
Googleドキュメントに眠っていたものを、投稿してみます。


「十二支の靴屋」

1年のうち、1週間だけ開く靴屋がある。

それは十二支のための靴をつくる靴屋。

開店するのは、1年の最後の最後の1週間。
その時期にしか開店しないから、名前はない。

十二支はそれぞれ担当する一年を、しっかり歩むために、靴を用意する。
12年に一度の自分の年。
ちょっと待ちくたびれる感じもあるけれど、みんなすごく楽しみにしている。
ここの靴は、自分の年が来たときにしか、はけないのだ。

靴屋の前では、今か今かと、ねずみがうろちょろしていた。

やっとやってきた、ねずみの年。
そう、次はねずみ年なのだ。

ねずみの靴は、とても小さい。
すばしっこいから、よく動けるように、スニーカー。
でもからだも小さいので、どこにいるかわかるように、色は金色。とても目立つ。

金なのは嬉しいけど、本当は、すいすい進めるように、ローラースケートのついた靴がよかった、とねずみは一人ごちる。
だって、からだが小さい分、進めるのも少ないのだ。

あ、すごい勢いで、何かが向かってくる。
いのししだ!!
一年の役目が終わったいのししが帰ってきたのだ。
相変わらず、すごい勢い。
しかも今年は、年号が変わったからと、特別仕様で、ジェットエンジンが搭載されてる。
そりゃ速いや。

いのししの年は、年号が変わった、というおめでたい話だけじゃなく、台風とか自然災害も多かった、と新聞で読んだ。
ジェットエンジンの勢いが、ありあまってしまったのか…。

やっぱり、普通のスニーカーでいいや。
いや、普通のスニーカーがいい。
でも金色なのだ。
一歩一歩が光る年なのだ。
いろんなところを走り回って、たくさんの金色のキラキラを振りまいてこよう。
世界はキラキラで溢れるんだ。

ねずみ年の一年が始まる。

さて、あなたはどんな靴を選びますか?

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