物書きの音。vol.10「何者」

物書きの音。
2020年の4月に書いたものです。
Googleドキュメントに眠っていたものを、投稿してみます。


「何者」

何者にでもなれたあの頃
何者にもなりたくなかった

何者にでもなれない今は
何者かになりたくて仕方がない

手から砂がこぼれ落ちるようにさらさらと
手中におさめられなかったものはたくさんあって

手元を見ればこぼれ落ち
上を見上げれば高さにおののく

では、足元は。

何者にもなりたくなくて
もがくように泳いできたが
足元を見れば
こぼれ落ちた砂が浜になっていた

手からこぼれ落ちたものが道になっていた

泳ぎきるには海は広く
歩ききるには浜は大きい

そうだ、わたしは何者になるかを選べるようになったのかもしれない

わたしは選ぶ、「わたし」という何者を

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